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三章「後悔」
『いっそ軽蔑して突き放してくれれば楽になれたのに』
乾いた笑いが口からこぼれ出た。
「俺はどうしようもなく臆病で馬鹿だ」
爽にこんな言葉まで言わせておいて自分から逃げ出した。
『爽を傷つけているのは俺自身だ』
それなのに、
『何でお前が謝るんだよ』
夏葵は決して涙脆い方ではないが、込み上げてくる嗚咽を止めることができなかった。
夏葵が爽を思って涙を流すのはこれで二度目だ。
爽を想えば想うほど、届くことのない想いが夏葵の心で揺れ動く。
「これ以上あいつを想い続けてもきっと後悔する」
夏葵は何度もそう自分に言い聞かせていたが、自分の気持ちに嘘をつき続けることももう限界だった。
込み上げてくる爽への強い想いが涙と一緒くたになって溢れ出す。
その時、ポツポツと水滴が夏葵の髪や頬を濡らした。
空を見上げると冷たい雨が音も無く降り始めている。
やがて雨は虫の音をかき消すような激しい雨音に変わっていった。
「俺何してんだろ」
夏葵は深い溜息を一つこぼし、雨に打たれながら海岸を後にする。
雨は焦燥感に駆られた夏葵の心までは鎮めてくれなかった。




