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2話目 イケメン、汗まみれ

麗香と良一はアゼリアに住むことに。

良一は、毎日超大忙し。

中華料理店でバイトも始める。

麗香「良一、また今日もアルバイト」

良一「はい、頑張りまーす」


良一はいまや、麗香の代わりにアゼリアの管理人に就任している。断わればこの木造アパートさえ、あの権太郎に追い出されかねないのが今の現状。


麗香「これはぜーんぶ、あの権くそったれ爺の謀略。だから今度こそは絶対勝って見せる。私からイケメンを取ったら、それで世界は終わり」


それにしてもここは部屋代無料、そして電気、

ガス、水道も使い放題。だから出ていけない。

当然、その絶対条件である管理人の仕事は続

けるしかないに決まってる。でも給料十万円

ぽっちじゃ、生活費はもちろん足りるわけも

ない。開業した探偵事務所はまたしても、閑

古鳥が鳴いていた。そう、誰も生きていくの

は簡単じゃないのだ。


麗香「ラブラブの二人の時間が、どんどーんと減っちゃう」

良一「しばしの我慢です。行ってきまーす」

麗香「またそれー。我慢大会かって」


良一のアルバイト先は近所の中華料理店「飛鳥」。高卒で上京以来、中華料理店でバイトをしているこの男の料理の腕は最高級。もちろん麗香の三度の食事も、このイケメンがせっせと作っている。けれど土日のバイト中は麗香が中華料理店へ出向くのだ。麗香と出会ってからは、とにかく忙しい良一だ。管理人、探偵事務所の経営者、アルバイト、そしてなんと言っても、お嬢様、麗香の世話係。でもなんだか楽しい気分になるのが不思議だ。麗香に貯金はどっさりある。ダイヤやルビーの宝石、時計、純金さえ持っている。はっきり言って良一が働かなくても全く問題はない。ただあえて麗香はそれを言い出さない。良一の麗香への愛がお金のためだと思いたくもないから。


麗香「あら、今日も繁盛してる。良一の料理はおいしいもの。客も分かってるのね」

店主「はいー麗香さん、いらっしゃい。今日はなにします」

麗香「うーん、餃子に酢豚、天津飯も」

良一「たくさん食べてください」

店主「食欲もりもり、いいーね。はい、特製餃子」

麗香「良一、あーんして」

良一「ちょっと待ってください。天津飯味付けしてますから」

良一「あーん」

麗香「おいしい」

客 「見て見て、なんなのあの二人、いちゃついちゃって」

客 「しかもこんな場所で。きっと頭おかし

いのよ」

客 「もー、見てるこっちが恥ずかしいわ」

麗香「ちょっとそこの高校生。言葉がすぎるんじゃないの」

良一「まあまあ、麗香さん。気にしない、気にしない」

麗香「でも良一、あんな事言われて」

良一「明るくて素直な、そんな麗香さんが、僕は大好きなんです」

麗香「そう、そうだわよね。ふふ」


どこへ行っても二人は仲良し。気が合うのだ。

以前、玉三郎が麗香に尋ねたことがあった。


玉 「お嬢様はいったいどこで、あの良一様を見つけられたのですか」

麗香「ふふ、玉三郎知りたい、知りたいでしょ。あれはね、たった半年前の十二月の出来事。街はクリスマスのデコレーションで華やかさを増して煌めいていた・・・。今思えば運命だったのね。銀座でお買い物をしてコーヒーショップで少し休んだの。そうしたら良一も私の後にそのお店に入ってきて、しかも私の隣の席に座った。ね、ね、まさに運命でしょ。私、良一の瞳を見てそう思った」


思い込みの激しい女には、この世の何もかも

が運命に見えてしまう。運命・・・、情熱的

だがあまりに単純。このお嬢様を見れば、な

るほど合点。


麗香「ところで、ねえー玉三郎、あなたこの世界にいったいどのくらいの男がいると思って」

玉 「私を含めて、この地球にはざっと三十五億人でございます」

麗香「あら、そう」

玉 「そのうち都会に住む若い日本人男性はは約一千万人」

麗香「うむうむ、ぐーっと減るわね」

玉 「人口減少で適齢期の若者も減る一方」

麗香「そ、それは大問題だわ」

玉 「飛行機嫌いで外国に行けないお嬢様が出会える男性は、その中約三千人あまり」

麗香「さん、三千人。さらに減るわけね。ねえ玉三郎、少なすぎない」

玉 「はい、確かに。でも、しかーし、その中でイケメンはたったの五人」

麗香「ご、五人。たったの五人しかいないわけ」

玉 「はい。お嬢様のイケメン基準が、とってもとっても厳しいからでございます。従ってただ数だけで運命と申されても、無理があるかと」

麗香「おだまんなさい、玉三郎。それ以上は断じて言わせない。それが今のあんたのう・ん・め・い」

玉 「・・・」

麗香「誰が何と言おうが、良一と私の出会いは運命なの。奇跡なんだから、キセキ。イケメンがいなきゃ、私いつまで経っても結婚できない。しわしわ婆さんになっちゃうの」


そんなある日この中華屋の店主から、かわいい一人娘の調査依頼が良一に舞い込んだ。久々の探偵のお仕事。いいね、商売繁盛。


麗香「名前は、紀子ちゃん。確か短大生」

良一「最近の娘さんの様子が変だと。化粧が濃くなり、服装もどんどん派手になっていくとか」

麗香「ね、これ私が調査、手伝ってもいいか

   しら」

良一「少しだけですよ」

良一「ま、待ってください。その恰好は・・・

   帽子にサングラス、水玉のワンピース。

   目立ちすぎです。みんな麗香さんだけ

  見ちゃいます」

麗香「かわいいって罪ね」

良一「あの、問題はそこじゃなくて・・・」


かわいい顔してるのに純情とは大違い。しかも最近の若い子は大胆だ。恋愛も欲望へと大変貌。この世にロミオとジュリエットはもういない。


麗香「これ飛鳥のおじさんが知ったら倒れち

   ゃうんじゃない」

良一「現実とはいつも厳しいものです」

麗香「どう報告するの。母親が早く亡くなっ

て父子家庭なんでしょ」

良一「ありのままを報告するしかないです」

麗香「ありのまま・・・どっかで聞いたことが。ねえ、それにしても、あの子どうしてあんな男と付き合っているの。十五歳も年が違うって・・・しかも妻子持ち。10歳の双子の父親でしょ。これって立派な不倫だわ」


2日あと。紀子を見かけて麗香は思わず説教することに。


紀子「お姉さんだって、イケメンと同棲じゃ

   ないの。人の事には干渉しないでよ。 私とはなんの関係もないんだから」

麗香「あのね、私たちはまだたった三か月の同棲。それにお互い独身同志、何の問題もない。でもあなたの場合は違うでしょ。それに大将、あなたのお父さんからあなたについての探偵依頼がわが社に来てるの。高―い相談料をもらうからには・・・」

紀子「じゃ、調べはとっくについてるのね」

麗香「あなた、この関係をいったいどうする

気なの」

紀子「そうね。そろそろ終わりにしようとは思っているわ」

麗香「ほんとに」

紀子「ええ、愛なんてもんじゃないし・・・」

麗香「あの男を愛してるんじゃないの」

紀子「相手だってただの浮気でしょ」


ところがただの浮気じゃ収まらなかった。激怒した妻が紀子に多額の慰謝料を請求してきたのだ。金額を見てぶっ飛んだ紀子が「冴内探偵事務所」に相談に来た。


紀子「こんなお金、とても払えない。私にどんな罪があるのかしら。ねー、私どうしたらいいですか。教えて下さい」

麗香「そうね。とりあえず、あなたはうちの探偵事務所にすべてを任せることね。有能で相談料がお高―い弁護士も、後ろにずらーりと揃ってる」


良一の調査の結果、相手は浮気癖のあるとんでもない中年男だと判明。過去に何度も女性問題を引き起こされて、ついに頭にきた妻が紀子に慰謝料を請求してきたのだった。


麗香「あの男は親が金持ちらしいけど、妻か       

   ら離婚届と高額の慰謝料を請求されたわ。罰が当たったのよ。今回はうちの顧問弁護士が力を貸して、紀子ちゃんへの慰謝料は却下。たまには彼らも働かなきゃ。顧問料、だてに払ってない」

良一「お金でみだらに愛を買うものではありません」

麗香「ほんと、ほんとよね。それ聞くと、良一をますます好きになっちゃう。でもこれでまた、良一、儲かっちゃったわね、うふ」

良一「あのー、お願いがあります。麗香さん、しばらくは贅沢禁止。我慢、我慢です」

麗香「ガ・マ・ン・・・」


麗香の辞書には当然「がまん」の字などない、ない。この女は我慢がなにかも知りえてはいないのだ。それから三日後・・・。


紀子「麗香さん、この間は生意気言ってごめんなさい」

麗香「今日は神妙なのね」

紀子「ありがとうございました。今回はとても助かりました。心から感謝します。・・・ほんとは私、大好きな彼氏がいたんです。でも、なかなか素直になれなくて喧嘩ばかり。彼、昨年、他の人と結婚しちゃった。私、心から愛してたのに・・・。それでやけになって、あんな男と・・・」

麗香「そうなの」

紀子「でも、麗香さんのおかげで私、目が覚めました。私も麗香さんみたいに大好きな、大好きな人を何度でも何度でも探しまーす」

麗香「そうよ。愛は美しいものなんだから、愛する人をとことん探さなきゃ」

玉 「ほー、お嬢様もたまには良い事を言われるのですね。感心、感心」

麗香「びっくりしたー。玉三郎、あなたいつ来てたの。それにたまにはってどういう意味」

玉 「まあまあ、そんな細かいことを気にされてはいけません。お嬢様はもっとおおらかな人でいらっしゃいますから」

麗香「玉三郎、私の心は十分に狭いの。知ってるでしょ」

玉 「お嬢様、玉三郎もそこは承知しております。なにせお嬢様が赤子の時から、存じ上げておりますから。でも良一様には特別な広い心をお持ちです。その心意気いつまでも忘れないでください」


心の中でそう思う玉三郎でした。そして知

らず知らずに二人を応援していたことに、

この時初めて気づいたのでした。

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