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隣の鉄子ちゃん  作者: 広 一
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鉄子と呼ばれる女

 川上はとんでもない女だ。


「き、聞ぃてくれ!!。川上のやつがぁ、西高のやつら、ボコしよったらしいぞ!!」


 朝の教室で噂好き男子、松くんの言ったことに俺はぶったまげた。

 川上は隣の家の女だ。髪を短くきって、肩で揃えている。目が切り目だ。肌が白い。そしてメガネをしている。いつも無表情で、まったく喋らないやつだ。

 真面目で、本当に優等生で、授業中いつも背筋を伸ばしてノートをとっている。


「か、川上が来たぞぉ!!」


 松くんが急いで離れた教室の横スライド式のドアを、川上が静かに入場する。

 クラスのみんなが沈黙する。そして、川上を見る。


 川上は気にもしない。前進する。まるで、その注目にも気づいてないみたいに。

 そして、着席する。ぼくの隣に。


「おい川上、注目されてるぞ」


 ぼくが川上に、周りの状況を分かり易く説明してあげる。


「あら、なんでかしら」


 木の椅子をギギーっと引き、おしりをストンと落とす。

 家も隣。学校のクラスの席も隣。この高校までの経歴も一緒。

 ぼくは、間近で彼女を見てきた。今日までずっと。

 

「お前が西高のやつをぶっ飛ばしたからだろ」


 川上に教えてやる。クラスのみんながびびってる理由を。

 そしてぼくは川上に、西高をぶっ飛ばした経緯の説明を期待する。


 川上は

「あぁ、今朝の。あの子達はね」

と、期待通りに話し出す。


「あの子達は、私に挑戦的だったのよ。私は私の行く道を、私の肩幅で、最低限、ぶつからないように気を付けて歩いていたのよ」

「肩をぶつけられたのか」

「えぇ」


 あぁ西高、哀れな奴等だ。ここら辺で川上のことを知らないとは。


「えぇ、私の肩はよけたわ」

「よけるわな」


 そうですよね。ぼくは思った。じゃあなんで、とぼくは問うと、


「私の後ろを歩いていたおじさんに、ぶつかってあやまらなかったのよ」


 惜しかったな、西高。

 西高はここらで一番不良が多くて、恐い、強い、手強い(日常会話において)で有名だ。


 だが、


 ぼくは知っている。川上ほど『ど』がつく真面目はいないし、川上ほど手強い(日常の行動において)奴はいない。

 高校生として、慎むべき行動、礼儀、あいさつが出来てないやつは、鉄拳制裁。

 彼女の餌食になったものは数知れず。


 ぼくと、みんなは呼ぶ。そんな彼女のことを

『鉄子』←怖くて声がでない。

ってね。


 ぼくは知っている。そんな彼女の実家は、筒島圓明流体術の道場。

 ぼく、普通の男である佐々木彦助の隣の家の女、川上こと川上藤鷹は筒島圓明流体術師範であり、ここら辺を牛耳るジャパニーズギャング、川上組頭取のご令嬢である。

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