数学の文章問題
最近、子供の数学の問題集を見る機会があった。
私は自他ともに認める(というか判定を覆す余地がないほどの)文系人間だ。数学についてはアレルギー反応と激しいコンプレックスがあり、できれば限りなく遠ざかっていたい分野である。
それでも、はるか昔に勉強した(けど今や記憶喪失状態の)事柄を見るのは懐かしい。問題集をめくっていて、ふと目に留まったのが、連立方程式の文章問題だ。
当然、連立方程式を作って問題を解く気力・知力・体力はないわけだが、文学的見地からツッコミを入れることにした。
「A町から××キロ離れたB町へ行く時、自転車で毎時○○キロの速さで行ったら、途中で自転車が壊れた。その地点からは毎時△△キロの速さで歩いたところ、全体で■時間かかった。A町からB町への道のりは?」
……A町からB町へ遠征しようとするなら、事前に自転車を整備しておくべきだ! タイヤがパンクしたのか? 転倒してフレームが歪んだのか? チェーンが切れたのか? 途中で自転車を放棄してB町へ向かう主人公の姿と心情を思うと、哀しさを禁じ得ない。
「一個■■円のシュークリームと、△△円のクッキーを買った。初めの予定では購入代金が××円の予定だったが、それぞれの個数を取り違えたので○○円余った。 初めに買おうとしていた個数はそれぞれ何個か?
……これは「はじめてのおつかい」でミスったかのような悲劇だ! あらかじめ手の甲かメモに個数を書いていったものの、パティスリーのショーケースの前に行ったらシュークリームまたはクッキーに幻惑されちゃったんだろうなあ。
私は断然シュークリーム派なので、シュークリームを多く買い過ぎた場合には何ら異議を唱えない。しかしこの主人公、自宅に帰ってから、クッキーを食べたかった家族(またはシュークリームを望んでいた家族)に分ける個数が足りず、内戦勃発の危機を招いたのではなかろうか。
「周囲が○キロの池がある。太郎さんと花子さんは一定の速さで池の周りを歩く。二人が同時に出発して反対方向に回ると、△分後にはじめてて追いつく。二人が同じ方向に回ると、花子さんは太郎さんに△△分後にはじめて追いつく それぞれの速度は毎分何メートルか?」
「日本さんと世界さんは、二人の自宅の間の某所にある図書館で勉強する。日本さんが午前△時に自宅を出て時速○○キロで走り、世界さんが午前△時◆分に家を出て時速○キロで歩くと、同時に図書館へ着く。双方の自宅から図書館までの距離は?」
……太郎さんと花子さんは手をつなぎ、同じ速さで同じ方向に回るべし。日本さんと世界さんの場合は、図書館に着く時間が多少前後しても問題ないであろう。とにかく図書館で落ち合って楽しく勉強すべし。
こうしてツッコミを入れることに喜びを見出しているあたり、自分がいかにひねくれているかを思い知らされる。
まあ、「Free!」の七瀬遥くんがシュークリームとクッキーの個数を間違って購入したら満面の笑みで許し、どちらもおいしくいただくし、余ったおつりはお小遣いとして進呈するだろう。
「テニスの王子様」の海堂薫くんと「黒子のバスケ」の黒子テツヤくんが二人で池の周りをジョギングしていたら、どちらかが相方に追いつくまで温かい声援を送るだろう。
数学の文章問題を作成する方は、是非ともこうしたファンタジー要素を取り入れ、数学アレルギー患者の症状緩和を目指していただきたい。