太陽+車=火傷
昨日、私は危うく右手の人差指と親指を火傷するところだった。
凶器(というか原因)は、我が家の愛車だ。
私は基本的に太陽が好きだ。春はのどか、秋は爽やかだし、冬に至っては神と崇めたてまつることさえある。凍った道路をじわじわと溶かしてくれる時の明るさと温もりといったら、とてつもなく頼もしいのだ。
ただ、夏になると太陽はがらりと人柄(星柄)を変貌させ、あたりかまわず熱と光をまき散らすモンスターと化す。
我が家の愛車もモンスターの攻撃を受け、推進装置付き自走式サウナとなっていた。
私はスーパーへ行くため、愛車のドアを開けて運転席に乗り込んだ。その瞬間に滝汗がどっと流れる。
あわててシートベルトを装着しようとしたら、うっかり灼熱の金具をつかんでしまった。
「!」
己の学習能力のなさを呪いながら、必死に金具をはめる。エンジンをかけてからつかんだのが、炎熱のハンドルであった。
「!!」
これが冗談&誇張なしに60度以上はありそうな熱さなのである。おまけにギアの頭部分も高熱にあぶられ、私のやわな掌の皮膚を激しく攻撃する。
とりあえずギアを『D』に入れ、今後について考えをめぐらせる。スーパーへ行くためには、方向を操作するハンドルを何としても使わなければならない。
運転したい。でも熱くてさわれない。
心の中で矛と盾が火花を放ってぶつかり合う。その結果、一つの結論が出た。
必要最低限の力でハンドルを支えればいいのだ。
私は両手の人差指と親指でハンドルをつまんだ。もちろん、「あぢっ!」という叫びがBGMとして延々とちりばめられたのは言うまでもない。
車内で真っ赤な顔をし、汗をだらだらと流し、両手の小指を立てたままハンドルをつまみ、等間隔で何やら叫んでいる中年女。
自分をどこか遠い惑星へ葬ってやりたくなった。
スーパーまでの短いドライブ(というか拷問)が終わった後、右手の人差指と親指がじんじんと痛んだ。
だから夏は苦手なんだ。