散髪にまつわる苦悩
伸び過ぎた髪の重さに耐えかね、お手軽価格の美容室へ行ってきた。
私の髪の特徴は「多い・太い・硬い」の三重苦状態である。他人様と同じ料金で大量の髪を梳き落としてもらうたび、美容師さんに心の中で手を合わせているくらいだ。
なるべく一か月に一度の割でカットするようにしているが、家事や雑事に追いまくられていると後回しにしがちなのだ。
今回は、前回カットしてから一か月半が経過している。髪全体がもっさりと膨張し、前髪なんかはゲゲゲの鬼太郎の一歩手前という有様だ。
これ以上髪を熟成していると、暑さとうっとうしさで精神崩壊してしまうので、カットを決意した。
私はもともと他人と話すのが苦手だ。もちろん、「美容室で初対面の美容師さんと会話しながら髪を切ってもらう」ことも、苦手の範囲内にしっかり含まれている。
鏡の前の椅子に座り、裏返った声で髪型及び長さを話し終えた途端、私は物言わぬ貝と化した。美容師さんの方も私の対人関係恐怖症気味なところを察してくれたようで、淡々とカットを進めてゆく。
開店直後とあって、店内の客は私一人。初対面の美容師さん。人一倍の暑がりである私。白いケープをまとったことで巨大なてるてる坊主となった上、内部の熱が蓄積する。
気がついたら滝汗をかいていた。ただでさえ汗を量産している地肌にドライヤーの温風が当たり、さらに滝汗をかく。このまま永遠に髪が乾かないのではないかと不安になったほどだ。
それでも無事に施術が終わり、ケープを外された瞬間、私は赤ら顔のてるてる坊主から真人間へと戻ることができた。
解放感と安堵のあまり、会計を忘れてお店を出そうになるという失態を演じる。
とりあえず、対人関係恐怖症と暑さに弱い体質、どちらか一方だけでも治したいものだ。