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少女編~第六話

お久しぶりの令嬢ですが、前回の引きの後、じつは超絶格闘路線を書いていたんですよ。ただ、読み返してないなって感じになって、こんな感じになりました。


 後に「女神の救済」と呼ばれた現象は、各国を揺るがすほどの広域震源地震による被害から呼ばれるものだった。

 家屋倒壊は二十万におよび、とんでもない数の難民を生み出したが、奇跡的に死者は「ゼロ」。

 そう、二十万にも及ぶ被害家屋が出来ているのに、死者がいないのだ。

 この奇跡には必ず関わっているものがある。


 ナーナリア石膏人形。


 各家に「女神ナーナリア」の現身として飾られ、毎夜毎朝祈られていた存在だった。

 その石膏人形、今回の有史以来最大の地震において、最大の功労者となったのだ。


 ある家庭では、老婆が逃げ出すまで石膏人形からあふれ出た女神ナーナリアの力が倒壊を防いだ、とか。

 ある家では、倒壊に巻き込まれた子供を守るために身を挺にした女神ナーナリア人形とか。

 そう、もう死んだ、と言う状況でナーナリア人形から光あふれる女神ナーナリアが現れて、人々を救ったのだという。

 まさに、女神の奇跡。


 うちでも、ガーベラ・テトラ・ドライから発光する姉上が現れて、地面に「アースクエイク」を叩き込み、地震を対消滅させたのは格好良かった。


 ともあれ、そんな奇跡を起こせば石膏人形など形をとどめることなどできず、砕け散ってしまった。

 この一件で「うちのナーナリア様が守ってくれた」と理解した人々は、家の工房に砕けた石膏人形をお繰り返し、何とか修繕してほしいと、うちのナーナリア様を助けて、と送ってきたわけですが。


 その数、二十五万弱。

 倒壊しなかったが、直接助けられた方々がかなりいるという。


 中にはいくら掛かってもいいという貴族などもいたそうで、工房のメイドたちも困っただろう、と私は思ったのだが、それは逆で、その奇跡に奮起したメイドたちは四交代フル操業で修理を始めたとか。

 正直、うちのメイド、舐めてました。


 んで、私は魔力切れで寝込んでます。


 なにしろあの「アースクエイク」の魔力は、本体の魔動力炉じゃなくて、契約者の私から引っ張り出されたのですから。

 その魔力注入量は、私のMPをほぼゼロにしたもので、正直死ぬかと思いました。

 ですが、その魔力枯渇の影響か、私の総合魔力が増えたのは怪我の功名でしょう。


 三日ほどで起きられるようになったのですが、魔力の上限が上がったことを感じられます。

 加えるに、姉上とのリンクも深くなったようで、魔力による会話ができるようになりました。

 細かな状況を確認したのですが、姉上もガーベラテトラ・ツヴァイによる救難活動のために移動中とか。

 ならば私たちも、その救難活動という名のお披露目に行こうじゃないですか!!


「「「「「おおおおおお!!!」」」」」


 新たにドライの胸にペイントされた「女神建設組合」のマーク。


「一応、モビルトレースには私が入りますので、大将は、作業員と資材を乗せる籠をお願いします」

「よし、じゃぁ、巨人系は徒歩移動だな?」

「はい、視界範囲の村を救難しつつ、学園方面に行ってください。私は、川べりを下りながら、家屋倒壊と街道補修を同時進行です」

「よっしゃ!」


 今の話を聞いていた妖精族の方々が、自分のできること、自分たちに出来ることを確認して散り始めました。


「ドライの力が必要なときには、記念金貨通信でお願いします!」


 私はそう叫んで、ガーベラテトラ・ドライに乗り込んだ。

 この姉上との一体感、最高!ですが、今は救難救助がすべて!


「女神、ナーナリアシリーズ、ガーベラテトラ・ドライ、出るのです!!」










 ガーベラテトラ・ツヴァイによる救難救助活動は、非常に効率的に行われていた。

 いや、効率的に、ではない。

 非常に能率よく、であろう。

 人が起こせぬ廃屋を取り払い、崩れた堤防を盛り直し、城壁を組みなおした。

 それは大きな身体が、家庭仕事をしているかのようにも見え、人々の心を癒していった。

 が、内部のナーナリア本人は、非常に疲れていた。

 一応力を使う作業ではないが、周辺に集う人々をつぶしかねないという強迫観念が彼女を疲弊させていった。

 一通りの瓦礫撤去や道の確保、城壁の修復をしたところで彼女も炊き出しなどに加わろうとしたのだが、まだまだ修復を待つ街があると司教たちに説得され、致し方なく彼女はその街を離れた。

 次なる町でも精神的な緊張を極限にませ高まらせて。


『・・・デルフィルナちゃーん、眠くて死にそうなんですけど~』


『姉上、町から町の移動程度でしたら、自動操縦になさればよろしいかと』


『あるんだ、そういう機能…』


 というわけで、ツヴァイのなかで爆睡しつつ、疲労回復に努める女神ナーナリアであった。







 ドライの特徴である理力機関によって、道路整備と残骸撤去を同時に進めている。

 ドアーフの親方も同行してくれているので、再建に向けた撤去が進むのなんのって。

 一日目撤去、二日目防御拠点修復、そんな勢いで進んでいると、居眠り運転のツヴァイを発見した。

 向こうの災害救助も順調で、王都周辺は済んだので、現在辺境周りをしているそうだ。


『では姉上、そのまま海方面をお願いします』

『すぴ~』


 了解、とツヴァイは答えているが、姉上は爆睡中。

 随分とお疲れ中の様子。


『みなさん、姉上をこき使わないで下さいませね?』


 私の言葉に、激しく頷く司教たち。

 結構滝汗な様子で、いろいろと思い当るところがあるのだろう。


「あ、あの、その白銀の女神像は・・・?」

『先日完成した精霊領女神ナーナリア、ガーベラテトラ・ドライです』





 瞬間、周囲の職人妖精たちが大いに沸く。

 ドアーフが、巨人族がその姿を誇る。

 多分史上初、「建造」された女神がほほ笑む。

 彼女の歩む道は白く輝き、後の世に「白道」として語り継がれる。

 その現場に立ち会った司教たちは額を地につけてその列を見送ったのだった。

 妖精王国から海へと続くその道は、激震災害と呼ばれた大地震を経て生まれた奇跡の道として刻み始め、そして続いていたのだった。




 奇跡的に死者無、という大災害の後は復旧工事になるだろうという事で、猛烈な勢いで世界中に関係者が走った。

 人間の研究者や建築関係者、ドアーフなどの妖精族など様々だが、災害地に急行できたのは、いち早く二体の女神、ガーベラテトラ・ツヴァイ、およびドライが街道復旧と災害地への道を切り開いたからに相違ない。

 瓦礫を払い、城壁を修復し、人々へ希望を燈した姿は真白とも白銀とも語られていたが、そのどちらも最前線にいたことを知っているのは各国の王や政府関係者だけだろう。

 広域で起きた地震に対して、災害地全体に慈愛を注ぐ女神ナーナリアへの信仰は鰻登り、赤丸急上昇で、新規の石膏人形の売上以上に「うちのナーナリア様を治してください」という依頼も急上昇らしい。

 使い捨てのアミュレットと考えていた人々も、自らの命を繋いでくれた女神そのものでもある石膏人形は格別らしく、本当に全国から修理依頼が集まり、専用工場まで出来たというのだから、その量が知れる。


「修繕は無料、輸送費だけは王宮に請求せよ!」


 ボーテックス卿の指示は奇怪なものであったが、王宮はそれに応じた。

 さらに言えば、聖堂教会からも寄付があり、赤字ぎりぎりとなるはずだった石膏人形修復は、些細な額ながら黒字になったという。

 勿論、それで良しとしたわけではないが、これも災害復旧や災害難民救援の事業の一環と見れば間違いのない手腕であり、これに加えるにボーテックス夫人による炊き出しは、女神ナーナリアシリーズ「サイサリス」による移動で行われたためか、女神ナーナリアの行いとして印象付けられたらしい。

 彼女につき従う従者たちはそれを訂正しようとしたが、ボーッテクス夫人はそれを止める。


「なぜで御座いますか、奥様」

「ナーナリアはボーッテクスの娘、何も間違っておりません」

「・・・ああ」


 ボーテックスから生まれた女神、ナーナリア。

 これを否定しても、何も生まない。

 肯定してこそ生まれるものがあるとほほ笑みと共に語る夫人を見て、従者たちの心に忠誠心がさらに生まれ、不動のものとなってゆくのであった。









 仮設ラックにドライの体を預けて、私は久しぶりに外に出た。


 国境付近の復旧後、海沿いの街道を隣国の街まで整備し、やっと帰ってこれたのだ。

 うちの国からの援助資材もあってか非常に歓迎され、思いっきり滞在を慰留されたが、現在は災害による国境越えを無許可で行っている状況だ。

 あまり残っていると国同士で問題が大きくなると思われる。

 ということで、姉上石膏人形を大量に散布、ではなく布教して、国内に戻ってきた。

 

 港町でもあるここには、津波の影響もなかったようで、非常に安心したのだが、建物の倒壊被害は大きく、更地にせざる得なかった。

 というわけで、色々と分類しつつ瓦礫を集めるという作業をしていたんだけど、なんだか街の清掃おばさんという感覚に陥ってしまった。


 各地共にそうなんだけど、倒壊した家屋や建物は、綺麗に分類してやれば再建資材に代わるので、ここに至るまでかなり頑張って分類することにしていたら、ドライの学習記憶層に分類用のルーチンが出来たみたいで、ちょっと意識するだけでドライが頑張ってくれるようになってからは、かなり楽になった。


 さすが妖精族技術の結晶!

 そこにしびれて憧れる!!


 これは、他のガーベラシリーズにもフィードバックが必要ですね。

 というか、これを乗せられるのはツヴァイだけなんですが。


「よー、お嬢。ご苦労」

「おやじ、そろそろ港湾区の修繕もできたですか?」


 お互いに手持ちの情報を交換して、じっくり検討。


「お嬢、これすげーな、学習記憶層ってのは」

「今のところ一品モノなので意味はないですが、いずれガーベラシリーズが量産されたあかつきには、ものすごいことになるのです」


 まぁ、学習データの転送で、新品がツワモノにってかんじです。

 それよりも・・・


「この断層データは間違いないですか?」

「間違いねーな。この広域震源地震の原因は、間違いなく『空間断層崩落』が原因だ」


 私たちの災害救助の旅は何も無目的にやっていたものではありません。

 今回の広域震源地震における原因の調査と再発の可能性の調査が大目的にあったのです。

 で、大陸を分断するかのような移動と調査によって、幾つかの山脈と渓谷が大きく陥没していることが分かったのです。

 陥没の範囲は国二つ分。

 最大標高差は、およそ30m。

 それだけの崩落が起きながらも、この程度の被害で済んでいるのは、やはりドライから出てきた女神ナーナリアによる「アースクエイク」による振動の対消滅による対処が効いたからだろうと、ドアーフの大将おやじと見解がそろいました。

 逆に、対消滅範囲になかった隣国など恐ろしい被害になっていて、死者はいないけれどけが人があまりに多かったのです。

 そこでヒール弾乱射、ではなく、二十倍希釈した「勇者ボーデスV」を散布して治療したところ、老人から赤子に至るまで回復し、背筋を伸ばして町の修復をし始めたのだから、誰もが驚いた。


「・・・赤子の人、あなたは寝るのが仕事ですよ?」

「ばーぶぅーーーー!!」


 私の差し出した手を振り切って、がれきの撤去に赴く赤子の人の姿は、それはもう、猛々しいもので。


「薬って怖いですね」「お嬢の所為だろ?」


 こんな会話があったとかなかったとか、黒歴史です。




 さて、どのような手段でこれだけの地震を起こしたか?

 どのような手法が出来るのか?

 検討はしましたが、私たちには解明できませんでした。

 逆に言えば、再発を防ぐ事が出来ないという事になります。


「おやじ、この断層、直接調べられませんか?」

「ドアーフでも10年、いや20年がかりだぜ?」


 穴掘り妖精がここまで言うのだから、よほどのことだ。

 ともなると、直接空間断層に干渉したという線はない、とみていいでしょう。

 ドアーフが20年かかるような穴掘り工事が、長期間表ざたにならないなんて、人の行いではありませんから。

 それならまだ、ロックワームの大好物がそこにあって、一族総出で食べつくした、という方が信じられます。


「あー、その御ファンタジアな見解、あながちはずれじゃないって話にならないことを祈るぜ」

「全くなのです」


 ・・・なんだろう、この嫌な感覚は。


 ・・・あ、あるじゃないですか、御ファンタジアでありつつ、大崩落が起きる要素!


「まさか、どこかの国でダンジョンコアを壊しましたなんて話はないですよね?」

「…まさか、なぁ?」


 これは緊急に父上に調べて貰わねばなりません。

 ああ、予想が外れてくれることを祈るのです。




お楽しみいただけましたでしょうか?


引き続き神代節ながらお楽しみいただければ幸いです。

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