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少女編~第五話

おひさしぶりのデルフィルナちゃんです。


お楽しみいただければ幸いです。


 先の大会の影響は恐ろしく、縋りつく勢いで「勇者ボーデス」を求める外交官で王宮が溢れました。

 嵐のような土下座外交合戦の末、周辺諸国の王族プラスアルファ分の「勇者ボーデス」が振る舞われたのです。

 これは何も土下座に負けたわけではなく、試供品の意味があるのですが、この効果に目を付けた各国貴族が、父上の勧誘とか私の誘拐をもくろみ始めたそうです。

 実に安易な話ですが、そういう暗部の炙り出し効果も狙ってのことだったみたいで、予測の範囲だと宰相は笑っていました。


 もちろん、弱点をヒールBB弾で集中攻撃してやりましたが。


 ともあれ、父上や母上、というか集中警護されている実家と姉上はまだしも、天使たちにとって天敵とも言われている私の警護の問題が発生している関係で、ちょっとの間研修にでることになったのです。


 エルフの隠れ里に。

 もちろんテレニーさんと一緒に。


 前評判では「寄生木」の矢の発案者ということで大歓待してくれるという話だったので期待していたのですが・・・


「テレニーさん、なんで里の若い衆が集団で矢を向けてるんです、こっちに」

「さー?」


 脂汗のテレニーさんも不明のよう。

 単純に、敖欽ちゃんで乗り付けただけなのに。


「赤竜殿に申し上げる! 里の女にはもう手を出さない約定はどうなってかぁ!?」


 ・・・あー、これはこっちのミスですね。


「敖欽ちゃん、ミニマム」

「ぎゃお」


 ひょいっと飛び降りた私とテレニーさん似合わせて、敖欽ちゃんが私の方に乗るサイズになりました。

 それを見て、とっさに矢を緩めたエルフの若い衆って優秀ですね。

 個々の判断基準レベルが高いのでしょう。

 人間の兵ではこうはいきません。

 弓を構えたままで、相手が武装解除したのを良いことに力で押すことになるでしょうから。

 まぁ、それも一長一短。

 専守防衛か、戦時体制かの差があるわけで。

 どちらがいいとは言いませんが、個人的にはエルフの方が好みです。


「・・・赤竜を使役し人族の少女、もしや知らせにあったデルフィルナ嬢か!?」

「はいなのです」


 貴族子女としての礼で頭を下げると、エルフの若者全員が片膝をついて礼をしてくれたのです。


「知らぬこととは言え、エルフの里の恩人に対して大変失礼なまねをした。心からの謝罪を」

「「「「「謝罪を!!」」」」」


 いえいえ、赤竜の雄と因縁があったと知っていれば、敖欽ちゃんで乗り付けたりしなかったのです。

 というか、テレニーさん教えてくださいよ。


「いやー、最近、赤竜って敖欽ちゃんしか見てなかったんで、すっかり忘れていました、あははははー」


 学園に染まってたんですねぇ、エルフ文化局さん。

 そういえば、文化局にいっても敖欽ちゃん、可愛がられてますものねぇ。


 とか何とか言いつつも、天使たち並に美形というかイケメン男子の整列で受け入れられた訳で。

 形の上では学園女子がうらやむ光景でしょう。


 ただ気になることが一つ。


 なぜ皆さんが教国発行の女神記念金貨を首から下げているのでしょうか?

 たしかドルロイ、というかシャマーマニズムというか自然崇拝系じゃなかったでしたっけ、みなさん。


「人族ならばご存じでしょう? あの麗しき女神ナーナリア像」


 あー、人並み以上に細かいところまで知ってますけど・・・


「あの麗しさに加え、堕天使を天使に昇天する現世に轟く神力! 圧倒的力を持ちながらも不殺の行使はエルフにとっても崇拝するべき女神ですから!」


 あー、ああああ、そういう観点ですか。

 納得は出来ました、出来ましたけど、もしかして皆さん、教国まで行って洗礼を受けて女神記念金貨を手に入れてきたのですか?

 宗教的教義を越えて、というか宗教的には敵ですよね?


「お恥ずかしいはなしながら、我らも我らの教えを捨てることは出来ません。そこで、『勇者ボーデス』基金から文化局経由の三角貿易で手に入れています」


 ・・・そこまでして欲しいなら、相談してくださいよ、テレニーさん。


「デルフィルナちゃん、だまされちゃだめよ。男衆は単純にナーナリアさんのファンなだけだから」


 え、まじ?


 思わず周辺エルフを見ると、視線を一斉に逸らしました。

 なんだろう、今まで平和主義者宗教同盟かに見えていた男衆が、単なるアイドルファンクラブに見えてきた。

 格式がダウン、ダウンダウンなのです。


「さすがに内情が内情だけに相談できなかったのよ、もう、本当に恥ずかしい」


 そんなテレニーさんの言葉に、さらに視線を逸らす男衆。

 ・・・顔の出来はさておいて、学園の男衆とさして内面は変わらないことが確認できたのが良いことなのか悪いことなのか。


「出来れば、エルフ文化の恥部なんで、広めないで欲しいかなーなんて思うんだけど、どう? デルフィルナちゃん」

「要相談なのです」

「渋い、しぶいなぁ、デルフィルナちゃん」


 取れるところからはガッツリとる、それが私です。










 いくつかの結界を抜けてたどり着いたそこは、森の中の町、エルフの隠れ里でした。

 清浄な空気と涼やかな風は、先ほどのやりとりがなければ絶対に感動できたのに、実に残念です。


「では、デルフィルナ嬢。まずは里長とお会いいただきたい」

「あい解りましたのです」


 テレニー嬢はそのまま自分の所属役所に直行。

 私はイケメン集団とともに里長の家まできました。


 そう、城、とか居城、ではなく家。

 この辺のアットホームさもいいですねぇ。


「長、デルフィルナ嬢をお連れいたしました。入室の許可を願います」


 しばらく、ほんのしばらく待ったところで「~せよ」と小さく聞こえた。

 それが許可だったらしく、しずしずと家の中におじゃますると、大広間で一段高い場所があり、そこに一人の老人が座っていました。


 いや、ほとんど、老人に見える物体と言った感じ。

 きわめて人間に近い、いやミイラに近い状態に見える。

 それでも燃え上がるような生命力を感じるのがスゴい。

 これが、エルフの里長。

 御年1200歳。

 エルフの平均寿命は800歳と言われていることから見れば、どれだけの長寿か。

 もう、人というよりも、植物ですな。


「まずは、こちらからご挨拶させていただきます。人族デルフィルナと申します。ご多忙の中、謁見のお時間をいただいた上、里での研修をさせていただくことを深く感謝いたします」


 と、あいさつすると、ふるふると手が動いた。


「デルフィルナ嬢、里長は、約束のモノはあるか、とお聞きです」


 簡易手話ですか、もの凄いことです。


「もちろんのことでございます。開発に関しましてはエルフの里も大いに貢献していただいた、これが『勇者ボーデス』でございます」


 高級木箱に入れた数本の勇者ボーデス。

 これがエルフの里からの要求でもあった。

 まぁ、材料の一部を担ってもらっているのでいくらでもアゲていいのだけれども、もったい付けた方がいいという意見を取り込んで、数本。


「・・・は、では失礼します」


 一人のイケメンが、一本を取り出して、ゆっくりと里長に飲ませます。

 ゆっくり、ゆっくりと嚥下され、最後の一滴が吸い込まれたかと思われた瞬間、里長の体が金色のオーラに包まれました。


 でましたね、完成品の特徴スーパー@@@人状態!!


 黄金のオーラに包まれた状態の里長は、誰の助けもなく立ち上がり、片腕を天に突き上げました。

 その腕は見る見る逞しくなり、肉は盛り上がり、肌は艶やかになり、髪の毛が、歯が、きれいにそろいました。

 もうそこにはミイラは居ません。

 イケメン軍団を束にしても勝てないような覇気を備えた、エルフの好青年が立っていました。


「ふーーーーわっはっはっはっは!! これならば、これならば、あと千年は里長が出来るぞぉ!!」


 その叫びを聞いて、イケメン軍団は感動の涙を流したのでした。









 里長大復活の祝いと私の歓迎の宴はもの凄い盛り上がりとなり、里を上げての大騒ぎになりました。

 で、私自身が「女神ナーナリア」の妹とバレてからは、男性エルフに下にも置かれぬ扱いになってしまい、女性エルフにパルパルされるかと思いきや・・・


「普段の女神様、どんな感じなのかしら?」

「好きな色ってご存じ?」

「あーーん、うらやましいわぁ、女神様といつも一緒だなんてぇ・・・」


 なんと里のエルフ女性にも大人気。

 みんなペンダントにした記念金貨を下げてました。

 エルフの里じゃなくて、姉上のファンクラブ会場やん、と内心思ってしまいました。


 それはさておき、あのクソエルフ、テレニーめ、「私だけの姉上」シリーズの建造責任者が私であることをバラしたものだから大騒ぎ。

 是非とも、里にも建造して欲しい、素材やら人では自分たちで出すから、と泣いてすがるは暴れるわ。

 酒の勢いも借りて、大人げないことおびただしいのです。


「ちほほとまちなぁ、その話、一枚かませてもらえねーか?」


 ふらりと闇から現れたのは、私より少し身長の低い髭の小父様。


「おお、ドアーフの・・・」


 たしか妖精人種連合と言うことで、近い地域に住んでいるんでしたっけ?


「あの女神ガーベラ・テトラ・アインはしかたねぇ、しかしツヴァイの建造に関われなかったと内心忸怩たる思いだったんでぇ。この一件かませてもらうぜ」


 ニヒルに笑う小父様。

 でも、胸元には記念金貨がはめ込まれていました。


 ・・・ドアーフよ、貴様らもか。










 建造は、妖精族連合の中心に置かれることになったんですが、割とデザインが割れました。

 耳の形は「長耳系」に決定したんですが、羽の形状とか服の形状とか。

 まぁ、自分たちの文化を取り入れさせたいのが見え見えなんですが。

 いつまで経っても終わらないので、私即決。

 羽は三対六枚、服は羽衣の上からビキニアーマー、決定稿です!


 瞬間、各種族から感嘆の声があがりました。


「解ってるじゃねーか、お嬢。ドアーフ心を直撃だぜ」

「さすがデルフィルナ嬢、各種族の琴線をまとめて直撃だ」


 という評判の上で、あとはドアーフと私の武装計画に移り、機能面や機工面での細かい詰めに移ったのでした。

 そんな中でも、ピクシーさんやらニンフさんやらが「エロ格好いい、さすが!」と頭の上を飛んでいるのでした。

 飛翔系妖精ではビキニアーマーはかっこいい鎧の最先端だそうで、それが女神もしてくれるというので張り切りすぎて鼻血を出してる人も多いとか。

 巨人族の方々も、自分たちよりも大きな女神像が、自分たちに向けてほほえんでくれると想像しただけで興奮しているらしく、早く建造を始めろと大騒ぎ。

 各種族に合わせた安全ヘルメットと女神建設組合と書かれたプリント、そして姉上をイメージしてプリントした組合マークも評判みたいで、工事開始前から恐ろしい熱気に溢れていました。


「こりゃぁ、下手なもん作れねーな」

「今までのガーベラテトラを遙かに越えさせる、それが目的なのです」

「いいねーその意気。全力を出すぜ」


 私とドアーフの親方は、がっちり腕を組んだのでした。










 今までのガーベラ・テトラは「鋳造」でした。

 これは顕在の問題と魔法の効果の問題なのですが。

 しかし今回は「建造」。

 そう、言わば神像ではなく、神機を作り上げようというのだ。

 妖精のテリトリーで。

 正直、燃えてます。


 やっぱりメインは魔法だけど、基本精霊魔法なのでやる気の問題。

 つまり「熱血システム」を導入可能なのです。

 その導入に関してドアーフ親方に相談したら、面白いものを見せてもらいました。

 古代の神力を使った動力炉で、二対一組の反響方というイケテル内容なのです。

 ただし、何処に据え置くかで問題があり、結局豊満な胸に格納することになりました。

 補助神力発生装置も各茶クラブ分に据え置くことで線を引き直したら、全高30m以上になってしまいましたが、みんなノリノリです。

 各妖精族が秘蔵の材料だの建材だの古代遺跡の喪失魔法なんかを集めるものだから、もう建造現場が恐ろしいことになっていたりするのです。


「フカーーーーー! ミスリルの配合が多すぎなのです!! 剛性が保てないのですよ!!」

「いや、いける!! 常に神力エンジンを稼動させているんだ! いけねぇはずがねぇ!!」

「メンテ中の剛性が無視できないのです!!内骨格の配合は7:3は譲れないのです!!」

「いいや!6:4だ!! そうじゃねぇと、精霊魔法との親和性が取れねぇ!!」

「骨は硬くていいじゃないですか! 神経や血管にミスリル率を上げるデス!!」

「それは十二分に上げてるじゃねーか!!」

「常にアイドリング状態には出来ないのです!」

「かーーー!! どうにかできねーか!!」


 とまぁ、こんな会話が毎日続く中、とうとう出来てしまった3対の羽を持つ機械女神。

 少量の信仰心とそれを主軸にした神力反響型エンジンを動力にしたドライは、今までの神像タイプとは大きく違う威圧感があります。

 これ、どこかで見たことあるなーと思っているところで思い出しました。


「(エリ◎ルだわ、これ)」


 というわけで、裏コードネームは決定。

 ともあれ、今は姉上が搭乗できないので、遠隔操作システムも作ったのですが、さすがに乗るところが無く、しかたなく正太郎席にコネクタを作ったのです。

 いけ、姉上! というわけですね。

 加えて、私も姉上もいない場合のサブ防衛システムとして、モビルトレ◎スシステムを搭載。

 体格的に子供のエルフかドアーフ用です。


 完成式典は盛大に行われ、ドアーフですら泥酔する騒ぎの中、それが起きたのです。



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