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少女編~第一話

えー、デルフィルナちゃん、成長しましたw

 大好きな姉上が、姉上が、売られえていってしまったのです。


「人聞きの悪いことを言わないで、デルフィルナ! 売られたのは等身大フィギアでしょ!?」

「でも、渾身の作なのです」


 ボールジョイントや間接部分を竜皮でカバーし、ほくろの位置から胸の歪みまでそっくりに作った、最高傑作が・・・


「しかしだな、デルフィルナ。売らざるえん相手でなぁ・・・」


 魔人的外交官の父上でも断れなかった相手が誰かというと、某火の精霊を怒らせた末裔の王族様。

 もう二度と「精霊を返せとは言いません」「戦争もこちらから絶対に仕掛けません」という神聖誓約書まで持参しての土下座に、うちの王族も頷くほかなかったみたいです。

 姉上の学園入学という寂しさから作り上げた「私だけの」姉上が、国の外交という無慈悲な力で、無慈悲な力でぇ・・・。


「デルフィルナちゃん、試作一号以外は売らないから、安心なさい」

「・・・わかったのです、母上」


 試作一号「ゼフィランサス」は、無常にもお隣の砂漠の国へ旅立って行ったのです。

 しかし試作二号機「サイサリス」試作三号機「デンドロヴィウム」を狙う国も多いので、絶対に父上にはカードにさせないのです。


「・・・・・」


 視線をそらさない、父上!!


「・・・あー、しかしだなぁ、嫁に出さずに各王家と神聖誓約書なんかを交わせる秘密兵器をだなぁ」

「もしカードにしたら、父上と一年間口をきかないのです」

「!!!!!!!!!!!!!」


 仕事と私情の板ばさみ。

 苦しむがいいのです。

 これが私から姉上試作一号機を奪った苦しみなのですから。


「まぁ、まぁ、デルフィルナ。これから暫く一緒なんだから、ね?」

「うー、姉上ぇ・・・」


 そう、二年ほど前に学園に入学した姉上を追うように、私も学園に入学することになったのです。

 王立魔法学園。

 そこで私は、正しい魔法を学ばなければならないそうです。










 私の魔法のいびつさに気づいたのは、やはりアンジー。

 普通の練習中に威力が高すぎるということになったのです。


 少なくとも、私はアンジーが示すように、水を集め、そしてアンジーと同じ大きさにぎゅっと・・・


「そこです、そこです!!」


 どうも私の普段から行っている土魔法による魔法制御の影響で、各魔法の威力が恐ろしいほど上がっていたことが発覚したので。

 個人的には基本と思っていた「ぎゅっ」は、魔法学校の最終年度で教わるはずのものなんだそうで、ふつうじゃやらないそうです。

 でも、「ぎゅっ」がないと、フィギアの精度が落ちるんですよ、ええ。

 というわけで、普通の魔法を使う子供の常識的な威力を学ぶべきだというアンジーの説得で、姉上から遅れて二年ほどで魔法学校に入学したのです。

 というか、普通の貴族はある程度の魔法を学んでから入る学校なのだそうで、いわゆる高校のようなものらしいです。


 つまり、あれですね、貴族同士のお見合い期間。


 うわー、面倒ですねぇ。

 と、思っていた私なのですが、実は姉上のほうが面倒だったら敷く、割と本気で私を恨んでいたそうです。

 なんでですか? と気軽に聞くと、鬼の瞳で言うのです。


「あの石膏人形の所為で、体型維持が地獄のようなのよ!!」


 ・・・あー、素直に謝ります。

 ごめんなさい。


 とはいえ、あの石膏人形の所為か、姉上は入学してからこっち、無茶モテだそうで。

 あらゆる方面の男女からアプローチが物凄いそうです。


「・・・え、男女、ですか?」

「ええ、男女、よ」


 男性は勿論、もろもろの貴族。

 伯爵家のうちとは釣り合いが取れるはずもない大貴族からもラブコールがあるとか。

 で、逆に女はというと、ソサエティーでリリアンでスールなあれらしい。

 いや、表面上はそれなのだが、もっとやばい根の深い組織多いらしく、一様に交流を絶っているそうな。


「でも、今年からは変わるわ!」


 にこやかで輝く笑みの姉上。


「なんでですか?」

「だって、我が妹にして魔術師、デルフィルナの入学ですもの!!」

「・・・えー」


 そうなのです、それなのです。

 姉上の話では、学園で虎視眈々と変態どもが待っているそうなのです。

 たとえば、フィギアマニア。

 たとえば、駆動関節人形マニア。

 たとえば、たとえば、たとえば・・・。


 唯一寄ってこないのは、高額契約で珍しい魔獣を使役している貴族ぐらいだろうとのこと。

 有名ですからねぇ、おじ様から使役獣を「なで」取ったのは。


「これで、あの鬱陶しい人形フェチとも神官協会からの勧誘も姉妹同盟の勧誘もなくなるのね!! ほーっほっほっほっほ!!」


 学園行きの馬車の中で、高らかに笑う姉上なのですが、こう、いろいろとお気の毒なことがあるのですよ、ええ。

 とはいえ、どうせ学園に着けば判るので、今は幸せに浸ってもらいましょう。

 ナムナムー。










 入学式は学園に併設された大聖堂で行われています。

 クラス別とかそういうのではなく、貴族の派閥とか平民の派閥とか完了の派閥別に分かれているのですが、隣にいる姉上が真っ白に燃え尽きているのです。

 まぁ、しかたありませんよね、ええ。

 なにしろ、大聖堂の正面のステンドグラスの前に、全高4mほど。白き翼を広げて尺上を掲げる試作四号機「ガーベラ・テトラ」が微笑んでいるのですから。


 いやいや、これは一応正式な依頼だったのです。

 入学準備中のある日、姉上をモデルにした女神像を発注したいと言うお話をもらったのです。

 何かと姉上がお世話になっている学園ですし、私も次年度からお世話になるのだからと引き受けたのですが、思いのほか力が入ってしまい、高さ2mほどの予定が4mほどになってしまったのです。

 加えて、バランスも下から見上げると微笑んで見えるように調整してしまい、いろいろと、まぁ、姉上、ごめんなさい。


 後日、学園を守護する絶対天使として崇められる事になるそうですが、私は知りません。


「・・・デルフィルナちゃん、ちょっと姉妹のOHANASHIしましょうか?」


 とりあえず、懐に入れていた正式な発注書と神前契約書と利用目的の悪用禁止を神聖契約している書類まで見せたところで、姉上の殺意の波動がおさまりました。




 とまぁ、そんな騒ぎがあったものだから、一応、姉上への強引な勧誘はなくなり、一応は収まったらしいのですが、今度は私のほうに人の流れが出来たのです。

 いわゆる邪神像破壊の伝説は響き渡っているらしく、自作のフィギアを見せに来て指導を求める方々が多くいらっしゃるのです。

 いや、もう、自己努力のレベルに達してる方ばかりなので、何も言うことは無いと突っぱねているんですが、まだだ、もっと上を目指して見せる! とか毎回の騒ぎに頭がいたい話なのです。


 逆にちょっと楽しいのはエンチャント、魔法効果を物にこめるという新しい研究分野に触れられたこと。


 つまりあれです、魔力を電池に、魔法をモーターに。


 がっつりミニ四駆が作れるのではないかと思ったわけですよ!!

 まぁ、始まったばかりの分野ですので、私が卒業するまでに形になれば良いなーと思っていたのですが、ひとつだけ思いついたことがあるのです。

 そう、私の土魔法、クリエイトゴーレム。

 あれを無限に回転するように命令して、その回転力をエネルギーとして取り出せないか、と。

 というわけで、ネズミの運動器っぽいものとベルトを繋いで、風車を回る仕掛けという簡単な模型を作って姉上のところに持っていったところ、模型と私ごとエンチャント研究室に連れ込まれてしまいました。


「教授!! ブレイクスルーとブレイクスルーの元を持ってきました!!」

「でかした!!」


 なんでも、エンチャント研究室は、いまのところ貴族連中からすごく下に見られていて猛烈に扱いが悪いそうなのです。

 基本、魔法の使えない人達用の発火器具や暖房器具を作っているので、王国の財務省などからは受けがいいそうなんだけど、研究一筋の方々には全く見向きもされていないそうで、そろそろ新機軸を打ち出さないと潰されそうなのだそうだ。


「というわけで、デルフィルナ。自重なしで助けて頂戴」


 え?


 思わず私は姉上を見てしまいました。

 いつも私に常識を説く姉上が、自重なし、と?


「ええ、学園の根底をひっくり返しちゃって頂戴!!」


 言いましたね、姉上。

 行っちゃいましたね、姉上!?


「で、でるふぃるな、ちゃん?」


 いいでしょういいでしょう!

 魔法といいつつ工学に倒れつつ、それでいて勘だよりな世界に楔を打ち込んでやりましょう!!


 というわけで、初等学級を飛び級して、わたしはエンチャント研究室に身をおくことになった。

 後日、父上と母上から、姉上は猛烈な叱責を受けたらしいのですが、私は知りません。









 前世の知識で、手巻きコイルモーターなんてものを作っていた影響で、取り合えず、既存の魔法理論を組み合わせて作ってみました。

 魔石に対して合い互いする二極性魔力の反発を利用した魔力動力源「モーター」の発表をエンチャント研究室室長メトロン教授は一躍脚光を浴びたのでした。




 製作時に消費される魔力も極小ならば、運用時の魔力も微小、そして得られる結果は極大と、魔法科学の一大革命とすら賞賛を浴びたのだが、元もとのアイデアは自分のものではないと発表した。

 取り出したのは、丸い籠と、それをまわす丸い何か、そしてそれを動力に回る風車。

 丸い何かがなければ子供の工作だが、丸い何かが回っているので、それはいわゆる永久機関に近い何かだった。


「・・・それは、誰が作ったのかね?」


 恐る恐る、至高の玉座に座る王が問う。

 何か悪い予感を感じてのことだろう。


 もちろん、答えにくそうに「メトロン教授」は答えた。


「今期入学した、デルフィルナ嬢です」

「・・・・!!」


 まるで感情が爆発したかのように涙を流す王、は別にして。

 どこの氏族かなどと問う者はいない。

 王が涙を流す相手でデルフィルナといえば「魔物使い」しかありえない。


 王家のコネで神官を頼り、何とかかんとか勧請して使役してもらった神獣を、撫で回すだけで契約してしまった少女の名は、同じような形で契約しているものたちにとっての恐怖であった。

 そのデルフィルナが再びやらかした、と王都の貴族は背筋を寒くしたのだった。







 そんな騒ぎになっているとは考えず、私は井戸水の吸い上げと女子寮屋上への吸光設備の設置、そしてその先に女子寮大浴場を設置を敢行した。


 常春の国とはいえ毎日お風呂に入りたい意識のある私でしたが、薪代がバカにならないという寮監さんの話を聞いて、正直諦めかけたんですけど、薪割をしていた職員さんの顔を見て思い出したのです。


『アサヒ◎ーラーじゃけん』


 そうだ、そうです、そうなんです!!

 水はモーターでくみ上げて。屋根の上で真っ黒なタンクで太陽光を受けて暖かくすれば、薪代節約で万々歳、お風呂も入れて万々歳なのです!!


 え、男子寮? 自分でやるのですね、ええ。


 始めは勝手にやって、と怒っていた寮監さんも、その薪代節約量を見て大慌てで計算し始めて、これなら毎日は無理でも三日に一度お風呂のない日があるという頻度で大浴場が使えるというところまで持ってきました。

 天気の悪い日なんかも薪代との相談になりますが、逆に雨の日なんかは1から沸かしたほうがいいし、適材適所なのです。

 という話を姉上にしたところ、あなたは私の誇りです、と抱きしめてくれたのが嬉しかったのです。

 そうですよねぇ、ええ。

 我が家は母上のお風呂好きもあって、結構な頻度でお風呂に入ってますものねぇ。


 この黒色貯水槽、これもエンチャント研究室の一品だったんですが、色が付いているだけで意味がないとか言われていたものなのです。

 で、この使い道を示したところ、商人組合だの大商会がぜひとも契約をと大騒ぎできたのですが、勿論のこと全ての研究は王国のためなのです。

 ということで、研究成果を献上して、こっちはおしまい。

 勿体無いと各学部の方々は言いますが、商売でこんなことをしているわけではないのです。


 では何のため?

 趣味のためですよね、メトロン教授?


「当たり前ではないか、デルフィルナ君!!」


 というわけで、趣味の研究をここ数年続けることが出来ることになったエンチャント研究室なのでした。










 手加減を習いに来たはずだったと姉上が気づいたのは、私が入学して半年ほど経ってからの事でした。

 とりあえず、自重抜きで前の知識にあったものを色々と作っていたら、エンチャント災凶研究室とか呼ばれるようになっていたあたりで我に返ったようです。

 姉上自身は宝石や魔石に魔法をエンチャントして、民のための生活魔具を作る予定だったのですが、私がそれを弾丸に見立てて、リボルバー式魔法銃を作ったのを目の当たりにして初心に帰ったようなのです。


「デルフィルナちゃん、これ、不味いわ!」

「え、でも、これなら離れたところにいる方にもヒールやキュアが出来ますよ?」

「え?」


 どうやら姉上は、攻撃魔法をこめていると思ったようですが、私はそんな酷い事はしません。

 というわけで、剣術課でズタボロになっている生徒に向けて乱射。


「ひゃっはー! 汚物は消毒なのですーーー!」

「「「「「ぎゃーーーーー!」」」」」


 見た目、銃乱射少女による凶行。

 現実、無料ヒールの奉仕。


 羽交い絞めにする姉を振り切って、魔法防御をする教師をすり抜けて、弾丸がなくなるまでヒールしまくった私は、非常に満足したのですが、あとで学園長に怒られました。


「無許可の実験はやめなさい」

「善処します」


 とはいえ、このあと、スナイパーライフルタイプのヒール銃が開発され、戦場でも何処から(ヒールで)狙われているか解らないという緊張感が広がったそうなのです。


「やっぱりデルフィルナちゃんには、手加減を覚えてもらわないと・・・」

「自重はしていませんが手加減はしていますよ、姉上」

「え? なにそれ、怖い」










 入学時納入した「ガーベラ・テトラ」が一大観光地になっていて、神殿の本殿やら大司教やら物凄い地位の高い人が見学に来て、さらには祈りを捧げて行くそうです。

 一般の方々にも開放されていて、姉上饅頭やら姉上焼きやらが屋台でえらい売り上げということだったので、思わず買ってきて教授とお茶をしていたところ、姉上登場。


「・・・デルフィルナちゃん、助けて」


 物凄くやつれた顔で現れた姉上なのですが、一応は笑顔が張り付いているのでした。

 これはガーベラ・テトラ開帳以降の癖みたいなもので、笑顔以外だと体調不良なのではないかと心配されまくるので、自己防御で身につけた仮面なのです。


「姉上が美しいのが罪なのです。美しさの罪ということで受けるべき負荷なのです」

「・・・このままだと、教会から邪教扱いされちゃうわ」


 実際、新宗教とも言える信仰心が集まっていて、姉上のファンクラブも、どちらかと言うと新興宗教の趣があるのです。


 が、


「それはないのですよ、姉上」

「なんで?」


 さすがに自分の状況を正確に把握している姉上でも、世界を相手にするとなると手管が不足しているのですね。


「先日教国の最高司教様から『ガーベラ・テトラ・ツヴァイ』の発注を受けたと父上から手紙が来たのです。教国でも渡来神として迎える準備があるって話なのです」


 これだけ人気があって目麗しくて、本人の出自もしっかりしていて外交上も問題ないとなれば、身内に取り込んだほうが良い、とまぁ、至極物理的な理由なのですが、向こうの首脳陣も姉上のファンで、砂漠の国の王様が土下座で試作一号機を買っていったことを知って、誰が土下座をしに行くか議会で紛糾しているそうですよ、姉上。


「イーーーーーやーーーーーーーーー!!」


 この叫び声に反応した姉上のファンクラブでしたが、ガーベラ・テトラ・ツヴァイ建造と姉上の渡来神化の話を聞いて盛大な拍手となり、更なる絶望へ姉上を追い込むのでした。

 ナムナム~。


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