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幼女編~第三話

ちょっと短めですが、お楽しみ頂ければ幸いです。





 当然のごとく、姉上は折檻されました。

 あと、父上も折檻されました。


 母は強しなのですね。





 ともあれ、今回の事で不穏分子のあぶり出しになったし、私にはやばい護衛がつかず離れずついていることが分かったため、逆に警戒されてしまいました。

 たとえば、私がお供も連れずに歩いていると、それは「領主の罠」ということで、悪党善人合わせての認識になったそうです。


 実に、こう、背中がかゆくなる話です。


 でも、これで私の城下町探検にお墨付きが出来たと大喜びしていたんですが、母上が猛反対。

 物凄く反対しすぎて屋敷を半壊させました。

 母上、あなたは物凄い。物凄すぎる。

 父上からの取り成しもあり、仕方なく、月一で母上とお出かけするという事で譲歩案が可決され、父上に認可されたのでした。


 では、それ以外の日は何をしているかというと、実はお勉強なのです。

 それも、魔法、魔法!!


 誘拐された後、個人的な自衛手段もあった方が好いという事で、魔法を習えることになったのですが、この魔法、習える内容に個人差があるそうです。

 で、私の適正は、水と土、あとは無属性、なのだそうです。

 無属性っていうのは、実は解析不能分野ってことで、大きくなって魔法学校で細かく調べたいと判らない、という意味だとか。

 で、水と土。

 これはもう、イメージ通り。

 水を思うままに操ったり、土を思うが儘に操ったり。


 思うが儘に、ですよ、思うが儘に!!


 これを聞いた瞬間、キターーーー!って思いましたよ、ええ!!


 記憶のかなたにある向こうの人生で、研鑽に研鑽を重ねた技術が現実のものになるのです!!


 そのためには、勉強を、勉強を、勉強を!!


「あ、あ、あのぉ、デルフィルナ様。そろそろお休みになってみては?」

「アンジー! まだなのです!まだまだなのです!!」


 そんな血を吐くような努力の結果、私はついに到達したのです。



~無着色1/8 母上フィギア~



 それを見た父上は、感動で泣き、母上は真っ赤になりつつ細部まで再現されたその形に驚いていたのです。

 同じく、姉上フィギアを見せたところ、逆に父上に聞かれました。


「一体の製作時間がどのぐらいだ? デルフィルナ」

「おおよそ、三日ほどなのです」

「うーむ」


 腕組みの父上は、国王陛下と皇后様の立像を作ってみないか、と提案。

 瞬間、燃え上がったのはフィギア魂。

 あの複雑な装飾を再現せよと、父上は言うのですね?


「あ、いやいや、平素の格好でいいのだがな?」

「父上、もし献上なさるのでしたら、平素の格好では格好がつきませぬ!」


 振り上げた私のこぶしは、何故か輝いて見えたと家族の話。









 全力で制作して、三種十二体ほどを二週間で作り上げたところ、父上と一緒に謁見の間に行くことになってしまった。

 私の製作した母上フィギアを見て、王がまだかまだかの矢の催促だったそうです。

 ともあれ、本来はありえない話ですが、うちの馬車がそのまま王宮正門を突っ切って、内門まで走り抜けると、私とフィギア入れを抱えた父上が、王宮最深部まで到達。

 汗だくのままひれ伏すのです。


 一応私も同じ格好で待っていると、今度は物凄い音で正面の扉が開きました。


「ボーテックス、待ちかねたぞ!!」


 どどどっっとものすごい勢いで現れた壮年の男性は、父上の隣の箱を開けて声をあげました。


「おお、おお、おおおおおおおおお!! 素晴らしい造形にして至高の形状!! 緩やかな嫋やかな柔らかさも、重厚な強固な硬さも、すべて同じ石で作られている!! 素晴らしい、素晴らしい、素晴らしいぞぉぉぉぉぉ!!」


 とりあえず、ひれ伏したままだった私ですが、なぜか目の前に真っ白な毛の塊。

 なにかなーと視線をあげてみると、それは優しい目をした真っ白な虎。

 ふわふわでもこもこで、それでいて、こう、重厚感があって。


 みてみれば、アンジーと同じような処に弱点がいっぱいある。

 触りたいなー、触りたいなー。


「ボーテックスよ、見事なものを献上してくれた!! 望みを言うがいい、可能な限りかなえよう!!」


 それに合わせて父上は顔をあげ、男性を見つめました。


「それを製作したのは、わが娘デルフィルナでございます。その恩賞は娘に」


 すっと息を吸った男性は、瞳を輝かせて私を見ました。


「・・・そなたが、神か」

「え?」


 思わず聞き返すと、顔をぶんぶん横振りにして私を見つめなおした。

 何があったのやら。


「ボーテックスの娘よ、そなたの望みはなんだ?」


 あ、ここで金塊とか答えたら空気が読めてませんよね?

 それに、土の魔法属性のおかげで金なんかザクザク集められるし。

 となると、いま目の前にいる欲望を果たすだけ。


「おじさま、できますれば、この白い虎さんをモフモフさせてくださいませ」


 私のオジサマ呼ばわりが良かったのか、それとも、白い虎さんの許可があったのかわからないけど、鷹揚に許可を下さったので・・・・・



 ふははははは! この巨体を、このモフモフを! 思うが儘に攻撃してくれるわぁ!!

 母上やアンジーで鍛えたこの両腕で、その巨体を沈めてくれるわー!


 どりゃ!


「がうん!」


 うりゃ!!


「がうぅぅん!」


 うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!


「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ♪」


 私の両手が光って唸って轟叫ぶのですぅ!


「が・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぅん」


 白い虎さんは、いろんなところから色々と出しまくって、瀕死の状態になりました。


「フ、フローズマスターーーーーー!」


 壮年の男性が虎さんを抱き起しますが虫の息の虎さんは答えません。

 いい仕事をしました。











 一応、神獣だったらしい虎さんの息の根を止めることはできませんでしたが、何故か仲良しになりました。

 うむ、私の絶技も、まだまだです。

 少なくとも、もう少し成長する前に、魔物だろうと獣だろうと息絶えさせることが出来るようにならなければ、ひ弱なこの身で生き抜くことは出来ないでしょう。

 修練あるのみです。


 それまでひと騒動あったのですが、それはさて置き。


「で、では、退出を許す」

「「ははー」」


 というわけで、謁見の間を出ようとしたんですが…


「ま、まて、フローズンマスター。なぜボーテックスと共に退出する。そなたは我の契約獣であろう!?」

「がう?」


 なぜか虎さんは、私の横で小首をかしげています。


「ま、待ってくれ、待て。契約更新の時期だ、言い値で答えよう、だから!!」

「がうがう」


 ふたたび首を横に振った虎さんは、私にすり寄るのです。

 ああ、あれですね? 死闘を超えた友情、そういう事ですね?

 夕日を背にした決闘の後の友情、なんだか憧れる関係です。


「ボーテックス! そなたからも、何か言ってはくれぬか!?」

「陛下、娘はご存じのとおり、魔物使い。お諦め下さい」

「ふ、ふ、ふろーずんますたーーーーーーーーーーーー!!」



 泣き崩れる壮年の男性を背に、私たちは謁見の間を後にしたのでした。







「父上、もしや、あの男性は・・・」

「気にするな、デルフィルナ。そなたはそなたのままでいてくれればよい」


 そういう事らしいです。










 フローズンマスター改め、氷虎。

 新しい家族が出来たのです。

 ですが、なぜかアンジーと仲が悪いのです。


「お嬢様の第一家令はわたくしです!!」

「がうがうがうーーーーー!!!」


 ふー、と牽制し合う姿もかわいいんだけど、あんまりオイタが過ぎると、攻撃ですよ?


「「え?(がう?)」」


 思わず一人と一体が腹向けで横たわり、降伏の姿勢になりました。

 うんうん、私の攻撃をおそれるばかりに、降伏姿勢になる早さが電光ですね。

 ですが、過ちは購わなければなりません。

 とうわけで、二人とも、全力攻撃なのです!!!


「ふあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ♪」

「がうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん♪」


 色々とぐっちゃぐちゃになった両手をタオルで拭きつつ、ノックダウンまでの時間が短くなったことに満足する私でした。










 王宮に献上したフィギア。

 これが思わぬ波紋を呼んでいるという父上の話。

 なんというか、お見合い写真代わりに、ということらしい。

 今までは絵に頼っていたのですが、修正が色々とはいるため信用できないそうな。

 で、私のフィギアの場合、すでに完成品がうり二つという事で、なんとか作ってもらえないものだろうか、という申し込みが幾つかはいってきているらしい。

 父上は断っているらしいのだけれども、私は魔法の訓練になるしやってもいいかなーと思ってる。

 リアルスケール(?)姉上を作って見たところ、父上も色々とあきらめた模様で、逆に歴代党首の胸像を作ることで許可をもらえた。

 しゃれでサリ◎ちゃんのパパを混ぜたところ、どうやら父上のお爺さまにそっくりだったらしく、泣いてすがってらしたのが印象的でした。


 うちの遺伝子には「あれ」が入っている模様。

 要注意ね、うん。


 ともあれ、週間生産三体なのに、三ヶ月先まで予約って、どれだけよ、と思わなくもないけれど、これも実践、レベルを上げるためには仕方ないと割り切ることにしたのでした。




 で、半年ほどして、なぜか弟子入り志願者が結構来るようになったのです。

 曰く、神の造詣、とか、神話の形骸とか、まぁいろいろ。

 勿論速攻で門前払いなのです。

 中には高位の貴族の子弟も痛そうですが、絶対受け入れません。

 そこまでかたくなな姿勢に疑問を持った母上が聞いてきたので、一応宣言なのです。


「これを素晴らしいと思うのならば、なぜその高みに自らで辿らないのですか!? 教えを請う? 導いてもらう? そんな近道で至った場所など偽者なのです!!」


 ずばーん、と前の記憶で叫んでしまいましたが、後々聞いてみると、母上と話していた部屋の隣で弟子入り希望者が結構いて、感動していたそうなのです。

 ちょっと恥ずかしい話なのですが、以降、弟子入り希望者がいなくなったのでよしとしようと思うのです。


 ただし、フィギア製作依頼は減らないのです。


 屋号は海洋◎とでも名乗りましょうか?










 月一の城下町見物。

 母上と一緒で楽しい時間なのですが、周囲の視線がいたいのです。

 やはり貴族の立場で町民の世界を汚すのは駄目なのでしょうか?


「デルフィルナちゃん」

「何ですか、母上」

「たぶん、氷虎ちゃんに乗って練り歩いてる所為だと思うわよ?」


 え? なんででしょう?

 この猫っぽい可愛い顔に優しい空気。

 さらには神獣という立場もあるのですから安全極まりないのです。


「あー、デルフィルナちゃん」

「なんですか、母上」

「あなたはそのままでいて頂戴」

「なんだか判りませんが、判ったのです」


 優しい母上の微笑みに、私も嬉しくなるのです。


 あ、そうだ。


「母上、寄って行きたいところがあるのです」

「あら、何処かしら?」


 ほいほいと一緒に行ったのは、うちの屋敷に出入りしている雑貨屋さん。


「おじさま~、売れ行きはどうですのー?」

「おお、これはデルフィルナお嬢様!! 完売でございます!!」

「まぁ、物の価値がわかる人が多いみたいですね」

「まったくですな!」


 目が点の母上に、一応報告。


 先日、気まぐれで作った球体間接型フル稼働曾お爺様を雑貨屋さんに見せたところ、一体金五枚で売れると言ってくれたので、50体ほど卸したのですが、なんと完売だそうです。

 ふふふ、あの格好よさが判るとは、さすが我が領民たちなのです。


「で、で、デルフィルナちゃん。このことは・・・」

「父上にも一体献上したら、喜んで許可をくれたのです」


 父上は、何気に曾お爺様大すきっこなのですね。

 そんな報告をした後、なぜか母上から猛烈な瘴気。


「デルフィルナちゃん、これからちょっとお父様のところに行きますよ?」


 有無も言わさぬ勢いですが、ちゃんと売り上げはゲットしたのです。

 ふっふっふ、この自由資金を膨らませるのですすよ!!










 フル稼働曾お爺様の噂を聞いてか、王宮からまた発注があったのです。

 今度は物だけ納品してくれということなのですので、王様と王妃様だけのフル稼働球体モデルを作ったところ、かなりの好評で、再び大量受注になってしまったのです。

 とはいえ、デフォルメした感じで作ったほうが評判がいいので、そういう製作形態で出荷していたのですが、いつの間にか類似品が出回り始めました。


 これはとてもいい傾向なのです。


 同じ土俵で切磋琢磨、これこそ望む形なのですが、類似品の水準がむちゃくちゃ低すぎるのです。

 もう少し何とかならないでしょうか、とは思いますが、情熱や熱意が乗り越えるべき壁なので取り合えず見逃していたのですが、どうも調子に乗ったのでしょう、私の名前を騙って打っているバカが出始めたのです。


 犯人は私に弟子入りを始めに断られた子爵の次男。


 似ても似つかない姉上フィギアに、さすがの私も鶏冠に来たのです。

 というわけで、偽者を見つけ次第、弱点を指先ひとつで粉砕し続けたところ、うちの町に出入りする業者さんたちは、絶対に偽者は仕入れなくなったのですが、ほかの町では溢れているそうなのです。


 この世界に著作権なんてありはしないんですが、それでもあんな邪神像を売られてはかなわないので、フルキャストではなく複製物を低価格販売することにしたのです。


 精度を高く作ったフルキャストを原型に、金属型を精製して、さらに石膏で複製して仕上げる。

 これなら金一枚程度でOK、ということなんですが・・・


 爆発的に売れました。


 うちのメイド総出で複製しても間に合わないほどで、複製工場を作って人まで雇ってしまいました。

 で、元もとモデルになった姉上には、津波の如くに無数のお見合い申し込みがあり、この効果の程が知れたのです。

 勿論、如何に安くとも邪神像は駆逐されたのでした。

 悪貨は良貨を駆逐する、とは言いますが、趣味の良い悪いはその限りではないという良い例でしょう。


 この量産販売、思わぬところに火が付いたのです。

 そう、貴族の美少女シリーズというフィギアを作りましょう、という親ばか連合。

 自分の娘こそ一番可愛いと妄信している貴族男性が、うちの姉上ばかりじゃなくて、自分の娘も量産しろといい始めたのです。

 その勢いに父上もたじたじで、三カ年計画で国もバックアップして準備が進められることになったのでした。


「まずは、コンテストしてからだな」

「「「「「如何にも、如何にも」」」」」


 親ばか、ここにきわまれりなのです。


 というわけで、我が領地は人形制作者の天地として栄えることになりそうな勢いなのでした。


一応、美少女のはずのデルフィルナは、自分の容姿が高性能なことを意識していません。


そこも勘違い要素ですねw


20130501 家名を間違えていました、てへw

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