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幼女編~第二話

なんだか、面白いぐらいに好評です。


ありがとうございます



 私の絶掌を発現されてから、二年の時が流れた。



 そう、私は今、五歳。

 貴族としてのお披露目の年だった。



 ふつうならば、誰かの誕生日や記念日のパーティーでのお披露目が基本なんだけど、私の場合は自分の誕生パーティーでお披露目をすると父上が決めたからだ。


 なぜか?


 私もよくわからない。

 ともあれ、五歳の誕生日に合わせたお披露目をする際、本当なら異能をお披露目するのだけれども、弱点看破なんて言う恐ろしい異能を発表するわけにはいかないので、その辺は流すという。


 本来であれば、大々的に発表したいところだろうが、私の呪われた異能のせいで。

 そう思うと、心の底から両親に詫びたい思いだった。


「また、何か考えてるのね、デルフィルナちゃん」


 つんつんと私の頬をつつく母。

 五人の子供を産んだとは思えない、若々しさをたたえる母だ。


 そう、五人。

 あれから毎年兄弟が出来た。

 異能修行し始めで妹が。

 翌年には弟が。


 弟が生まれた瞬間など、父上は狂喜乱舞して見せたのは記憶に新しい。

 で、なぜか、本当に何故か、私には触れさせてもらえない。

 やはり呪われた異能の所為だろう。

 でもそれはいい。

 あの子が、弟ルベールが幸せになれるのなら。


「もう、デルフィルナちゃん。また自分の異能を呪われているとか考えているのね?」

「はい、母上」


 泣きたい思いがこみ上げるけど、我慢。

 せっかくお化粧したのに、流れちゃうから。


「デルフィルナお嬢様、そろそろお時間です」


 そう、今日こそ私のお披露目。

 父上も母上もかなり入れ込んでいるので、私も失敗できない。

 無難に、荒波をたてず、そして優雅に。

 前世の記憶から導き出された淑女の行いを、この貴族社会に見合った形で変更して、私はたたきつけるのだ。


「アンジー、参りますわよ」

「はい、お嬢様」


 父上と母上は並んで先を歩き、その後を私が続く。

 その歩みに淀みはなく、そして極めて優雅だった。

 本当に母上は五人もの子供を産んだからだ名のだろうかと疑問に思わなくもない。


 コルセットなしで括れた腰、ワイヤーなしで型くずれしない胸、そして張りとボリュームを両立させた臀部。

 私が男の感性を持っていたら、何をしても得たいと思うだろうと考えなくもない。

 ともあれ、記憶だけの話なので判断が厳しいけど。


 薄暗い廊下から、光あふれる舞踏会場へ。

 私たちは歩み出た。







「みなさま、初めまして。ボーテックス伯爵家次女、デルフィルナともうします。本日を持ちまして齢5歳と若年ですが、みなさまにお目見えできた喜びで打ち震えております。以後、ボーテックス伯爵家共々、デルフィルナをよろしくお願いいたします」


 スカートの恥を両方で摘み、少女の礼をすると、一瞬の空白の後で盛大な拍手が巻き起こった。

 うんうん、お義理にも拍手をもらえる程度には挨拶できたようだ。

 添削したかいがあったというもの。

 何しろ最初の原稿なんか「妾を見られて光栄であろう、おーっほっほっほっほ」的な内容だったものなー。

 流石にこれは礼儀上よろしくないと言うことで母上と相談して添削したんだけど、父上はどうしても高飛車+無礼キャラで押したかった模様。

 なんで、と聞いてみたら・・・


「・・・デルフィルナが見初められたら、嫁に出さねばならんではないか」


 ・・・だそうで。

 実に親ばか。


 とはいえ私の後には二人もいるのですから、ゆっくり子育てを楽しんでください、というと、マジ泣きで父上が私を抱きしめた。


「デルフィルナを、デルフィルナを嫁になどやるものかーーーー!!!」

「あなた、落ち着いてください!」


 そういいながら、鋭角な回し蹴りでテンプルを蹴り込める母上はすごいと思った。


 閑話休題


 私のお披露目という一行事が済んだ後は、貴族と貴族の夜会になる。

 パーティーというなの情報戦になるんだろうけど、なんか熱い視線が周囲から私に集中してる。

 まるで兄上がアンジーを見ているような・・・


 まさか!?


 くそー、貴族共め。

 わたしのアンジーをゲットスルーするつもりか!?

 くぅ、ゆるせん、ゆるせんぞぉ!

 このモフモフはわたしのものだぁ。


 ということで、ぎゅっと隣にいたアンジーを抱きしめたところ、なぜか視線の桃色レベルがあがった気がする。

 なぜだ?

 ということで姉上が居るであろう方向をみたんだけど、貴族男性に囲まれて視認できなかった。

 父上も母上もそれぞれ囲まれており、なんだかよくわからない状態だが、孤立している気がする。


「アンジー、どうしよう?」

「・・・は、はふぅぅぅぅ。お嬢様、こんなところではげしいぃ・・・」

「あんじー?」

「・・・はっ、申し訳有りませんお嬢様」


 少し上気した頬でわたしをみたアンジー。

 周囲をみた後で、父上の方にちょっと移動すると、豪華絢爛な服を着たおっさんが割ってきた。


「ほぉ、これはこれは美しいですなぁ、デルフィルナ嬢」

「ありがとうございます、おじさま」


 瞬間、何かを耐えるかのように震えたおっさんだったけど、小脇に抱えた箱をわたしに差し出した。


「・・・こ、これは、君への誕生日記念の贈り物だ。箱を開けてみないか?」


 にっこりと微笑む顔。

 だけど、何ら安心が出来る顔ではない。

 こう、なんというか、黒い、ねちっこい、それでいて、悪意にまみれた笑顔。

 わたしは知っている。

 この手の顔に何人も会っている記憶があるから。



 キャッチセールスで絵画を売りつけるお姉さん。

 ナンパに成功したかと思いきや高い宝石を売りつけるお姉さん。

 キャバクラでアフターの誘いを何度も何度もじらして延長させるお姉さん。



 ・・・やめよう、なんだか心が真っ黒になってしまう恋がするから。



 とはいえ、この手の笑顔は要注意。

 だって、箱の中身から弱点の矢印が延びてるし。


「ありがとうございます、おじさま」


 そういって、わたしはささっと右手でふたを跳ね上げて、おっさんの視界を奪いつつ、中身の弱点を強襲した。


「・・・うぉ!?」


 まるでウニのような針の玉。

 でも、ニホンだけ弱点がある。

 わたしの手は、その部分を正確につかみ、引っ張る。


「きゅいぃぃぃぃぃぃぃ♪」


 ふふふ、わたしの弱点看破は、相手を奇襲できる限り無敵。

 わたしの絶掌に合わせるように、針の玉は微ローンと広がった、そう、ハリネズミっぽい感じになった。


 針とは反対の、腹の方に弱点が集中していたので、わたしは抱き上げて集中的に攻撃した。


 おら、おら、おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらーーーー!!!


「きゅい、きゅいきゅいぃぃぃぃぃぃぃぃぃん!!!!!!!」


 存分に「おらおら」したところ、完全に絶息状態のハリネズミっぽいなにか。

 一応呼吸をしてるけど、すでに戦闘不能だろう。


 そうなって初めて、周囲の貴族がわたしを見て、そして悲鳴が上がった。


「きゃーーーー!!! デルフィルナ様、その魔物をはなしてぇ!!!」

「お話ください、デルフィルナ様!! それには毒針が!!!」

「だれか、だれか、デルフィルナ様をお助けしろぉ!!」


 と、もの凄い大騒ぎ。

 で、


「おじさま、何処においでになろうというのですか?」


 そろりそろりとその場から去ろうとしたおっさん。

 ものすごっく動揺してるんだけど、じりじりと後ずさろうとしてる。

 その姿に何かを感じた貴族たちが、わたし達を中心に人の輪を作る。


「おじさま、この子、おじさまからのプレゼントなんですが・・・」

「な、何をいってるのかな? デルフィルナ様。わたしは一刻に記憶にないが?」

「いえいえ、おじさまの持っている箱、そこからとし出したこの子・・・」

「失敬な!! そんな魔物をわたしがプレゼントしただと!? 伯爵家はどんな教育をしているのかぁ!!」

「いえいえ、では、この子はおじさまは知らない、ということでよろしいですね」

「当たり前だ!!」


 ならば、とわたしはハリネズミっぽい子を正面に据える。


「我が名はデルフィルナ。そを我がともとして向かえん。その名は『ソニック』」

『我が名をソニックと向かえん。我が主の名はデルフィルナ。幾久しく』


 ずびっと片手をあげたハリネズミっぽい魔物、ソニックにわたしは視線を向ける。

 すると、心得た、ともう片方の手を挙げる。


「おじさま」

「・・・な、なんだ、無礼な小娘」

「この魔物、今からわたしのものになりましたの」

「・・・そ、そうか、そんな下品な魔物などわしはしらん!」

「そうですか」


 もう一度、ソニックを見ると、両手を抱え込むようにしていた。


「ならば、この、魔物が何の目的でこのパーティーに着たかも知らない、ということでよろしいですね?」

「あたりまえ・・・・ぐふっ」


 わたしが投擲した瞬間、ソニックは丸まり、おっさんの弱点、股間に集中したそれに突き刺さった。

 何処に毒があるかは知らないけど、じわじわと顔が赤らみ、そして大量の汗をかいて倒れたのだった。


「流石に致死性の毒ではなかったようですね」

「きゅい!」


 と、まぁ、そんなわけで、わたしの異能は「魔獣使い」という感じで伝わったのだった。










 魔物を売り買いする商人から、おっさん、ビサンジカール伯爵家が、あのハリネズミもどき、ソニックを購入していることが解った。

 さらに言えば、恐ろしいレベルの媚薬も買っており、ソニックの針についていたのは「それ」なのだとか。

 つまり、わたしを媚薬でメロメロにして、そのまま美味しくいただく予定だったという事が明るみになった。

 加えるに、ビサンジカール伯爵家には、国で禁止されている少女性奴隷が十人ほどおり、即時に保護されたそうな。


 Yes 幼女好きロリータ、No タッチだろうが、おっさん。


 それはさておき、現実的な話、わたしの異能が「魔物使い」である形で知れ渡ったので、逆に敖欽ちゃんやソニックをつれていても問題が無くなった。

 これは非常にうれしい話で、密かに遊んでいた敖欽ちゃんなど喜び勇んで頭の上に乗ったり肩に捕まったりしている。

 で、ソニックは奥ゆかしい感じで、足下をごそごそすり寄りたいけど針があるし、と遠慮している感じ。

 その辺もかわいいんだけど。


 ビサンジカール伯爵家は、様々な悪徳の嫌疑が掛かっているため、現在保護観察中という感じだそうだ。

 おっさんも、あの凶悪な媚薬を食らったあげくに、両手両足を繋がれて何も出来ないため、いささか常軌を逸した精神状態になってしまい、事情聴取もできないとお城の兵隊さんも困っていた。

 このままでは嫌疑が確証に代わり、そして一族郎党打ち首、なんてお白州が開かれる騒ぎになってしまう。

 流石に使用人や出入り商人まで打ち首は・・・


「あー、デルフィルナ、そこまで苛烈ではないぞ?」

「そうなのですか、父上?」

「うむ、一応、このまま全面的に悪いという判定になっても、爵位を男爵まで落としたうえで息子へ相続させ、さらに国への租税を重度に増すという形には成ると思うがな」

「伯爵から男爵ですか。となると、所領はほとんど・・・」

「国庫で没収だな」

「はぁ、没収されなかった領民の方々の無事を祈りたい気持ちです」


 何しろ、爵位の下落と税収削減、さらには増税。

 こうなると、領民への租税徴収が苛烈になるのは間違いなし。


「・・・デルフィルナよ、おまえは賢いなぁ」

「アンジーの教育のおかげでございます。父上」


 というか、何処までだったら発言して怪しくないかをアンジーの授業で計っている段階なんですがね、ええ。

 実際、没収された領地の一部を、我が家に賠償として下賜する話もあったのですが、父上が断りました。

 この手の話が前例で通用すると、この手法で土地をあいてから奪うという事がまかり通る可能性が高いから、という理由で。


 流石父上。

 そこに痺れて憧れる!


「ちなみに、ほかの貴族の方々が送ってくださった贈り物は無事ですか?」

「ああ、全部開封の上確認したが、怪しいものはなかった」


 一応、安心。

 もしこれが、暗殺をするための前振りだったら、何段の罠が残っているやら、と思ってしまったのは秘密だ。

 それにしても、幼女趣味とはとんでも無い。

 いや、幼女を好むのはいいだろう。

 しかし、タッチはいかん、いかんいかん。

 幼女は愛でるものであって、悪戯するものではないのだから。


「・・・デルフィルナ、その知識は何処で覚えた?」

「はい、父上。兄上の手紙でございます」


「ルッケルスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」


 前世知識を、遠いお空の下の兄上に押しつけちゃった、てへ♪


「これからルッケルスからの手紙は、わたしかミレイユが検閲する、よいな!?」

「はい、父上♪」


 うんうん、兄上。

 若い頃の苦労は買ってでもしろというから、苦労してくださいね?







 ソニック、本当にハリネズミモドキって魔物の名前でした。

 で、調べてみると、ハリネズミモドキ事態には毒はなく、ただ、針の一部に毒をためられる針があるので、それを利用した暗殺とかがあるそうだ。

 どこー、ってソニックに聞くと、全体的にまんべんなく結構あった。


「・・・はぁ、お嬢様は本当に規格外でございますね」

「そう? でも、かわいいからいいわよね?」

「一応納得しておきます」


 生物の授業で急遽魔物についての授業を行った際、いろいろと魔物とそうじゃない動物との差とか、幻獣とかいろいろと習った。


 一様に、人間に害有る生物は魔物。

 共生もしくは生活をともにしているのは動物。

 そして、常識の外にいるのが幻獣。


 常識の外、という点では、翼のある虎とか翼のある蛇とか、いろいろと居るけど、進化の法則上ねーだろ、ってのが幻獣の区画にいる模様。

 もちろん、その根拠は無い。

 でも、分類に法則があるので、なにか有るだろう。 そんな風に思っていたら、逆だった。


 分類した宗教書があって、それを教えているだけ。

 つまり、はじめに宗教書があり、宗教における教義の分類がありました、ということでした。 


 ちょっと不満は大きいけど、そういうものだと理解することにした。

 学習というものは二種類有ると思う。

 そのまま納得すること、そして、それを究明するもの。

 今の学習は、現在の状況をそのまま知識として焼き付けて、判断の基礎とする段階だ。

 それが終わってから初めて究明という方向がとれるのだから、今はつっこみの時ではない。

 だから、スライムが分類上「動物」になってることをつっこまないぞ、つっこまないからな。



「お、お嬢様、えーっと、質問はございませんか?」

「ないわよ、アンジー」


 にっこり微笑む私に向かい、だらだら汗をかいた後、べったりへ威服するアンジー。


「まことに申し訳有りませんでした、お嬢様!!! この分類の『スライム』は引っかけ問題でございまして、ここで指摘していただけると思っておりましたぁぁぁ!!」


 あらあら、つっこみ待ちだったみたい。

 どうやら私は空気を読む能力が落ちている模様。

 んー、気をつけないといけない。


 とりあえず・・・。


「じゃ、間違った知識を教えたアンジーには、ものすっごい攻撃ね♪」

「・・・は、はいぃぃぃぃ♪」


 全力で弱点攻撃したら、アンジーったらお漏らししちゃった。

 流石に昼間からでは耐えられなかったのかな?

 でもこのおしっこ、へんなんの。

 なんかすぐ乾いちゃったし、おしっこのにおいしないし。

 何だったのかな?

 獣人特有の何かかな?

 あとで母上に聞いてみよ。










 父上の領地視察へ、姉上とともに同行させていただいた。

 この年になるまで、うちの屋敷周辺しか出入りしたことがなかったので、すでにアゲアゲ。

 敖欽ちゃんもソニックも、今回は同行しており、その姿を見て領民方々が「魔物使いの姫様」とかなんとか呼んでる。

 基本、ドラゴンとハリネズミもどき。

 魔物ですものねー。


 意外に姉上は敖欽ちゃんよりもソニックがお気に入り。

 どうやらハリネズミモドキ自身には毒がないことを知らなかっただけで、毒がなくて見た目がかわいいソニックなら、と抱いたり撫でたりしている。

 敖欽ちゃんは通受けキャラなので、仕方ないけど。


「ほら、娘たちよ。そろそろ町に着くぞ」

「「はーい」」


 目の前に広がる町の名は、イルイラーリラ。

 交易の商都。

 というか、黙っていても税金を落としてくれる我が家のお財布。

 で、いろいろと税制優遇しているので、汚職役人と腐れ商人が、切っても切っても生えてくる没収資金源でもある。

 わざと悪いことをさせて、悪質な人間を殺すためのわなにしているのではないだろうかと、最近疑っている。

 そういうのが得意だから、父上。







 で、領主館でまったりとお茶してたら、いつの間にか寝ていて誘拐されたでござる。


 いやいや、何を行っているか解らないだろうけど、こっちも解らない。

 基本、父上と姉上と一緒にいたのに、なぜかいつの間にか一人にされていて、そして誘拐。

 どう考えても身内の犯行です、お疲れさん。


「くーっくっくっく、あのクソ貴族! ちょっと納品を誤魔化しただけで資材没収だとよぉ・・・」

「つうわけで、おれらは愛しい娘さんを没収ってわけよぉ・・・」

「おい、手をつけんなよ。これだけの上物なら、このままで無茶苦茶高く売れるんだからな」

「いいじゃねーか、ちょっとぐらい値が下がっても」

「そうだぜぇ、紺だけの上玉、一生拝めねーぜ」


 さて、目の前の三人組。

 仮に、トンズラ○、ボヤッキ○・・・セコビッ○、としよう。

 小原乃理子がいないのは残念だけど、それはさておき、トンズラ○とボヤッキ○がエッチ推進派で、セコビッ○が金銭推奨といえる。

 とはいえ、幼女相手に欲情するとは、実にゆがんだ趣味の人なのだろう。

 ここで泣き叫べば、必ず燃え上がるのだろうから、絶対に泣かない。

 ではどうするか、というと・・・


「ふふ、おじさまたち、何を争っているのかしら?」


「「「・・・」」」


 起きたのか、という視線。


 縛られてもいない両手を伸ばし、起きあがりながら伸びをする。


「ふわぁ・・・、とてもよく眠れましたわ」


 にっこり微笑んで、その笑顔が浸透したのを確認してから、私は笑顔の方向性を変えます。


「で、ここは何処なの? 答えなさい」


 そう、最強Mのアンジーと訓練するようになって、この威圧スキルが使えるようになったのです。

 はっはっは、これは威圧であって、女王様スキルではないのですよ!?


 私のその言葉に何かを感じてか、ぶるりと三人の男が身を震わせる。

 流石にアンジーみたいに嬉しさのあまりの失禁、というわけではないみたいだけど、精神に干渉しうる力を持っていることを理解してしまった。

 これは「S」への道なのだろうか?


「どこなのか、おこたえなさい・・・!」


 真っ赤な顔をした三人が、部屋から飛び出た。

 そして部屋の外から鍵がかかる。

 ごそごそと何か会話を始め、部屋の近くからいなくなってしまった。

 うむ、監視すらいないとは、もしかして人手不足かしら?

 ならば、こう言うときに便利な存在を呼びましょう。


 というか、ずっと胸元でゴソゴソしている「それ」に声をかける。


「敖欽ちゃん、でておいで」

「きゅあっ」


 小指サイズの敖欽ちゃんが、私の目の前に現れる。

 過去の添い寝禁止令の影響で、臥薪嘗胆の敖欽ちゃんは自らの技量を上げて、身体調整レベルが天元突破したりして、何処でも一緒が現実化してる。

 とはいえ、私の異能が「魔物使い」だって認識されたので、隠れてついてくる必要がなくなったんだけど。

 が、こう言うときに役立つとは思わなかった。

 というか、正しい使いどころだろう。

 まさか、何処でも一緒が目的とか、無いに違いない。

 ま、それはそれとして・・・。


「じゃ、敖欽ちゃん。どっかーんといってください」

「きゅあーーーー!」


 見る見る大きくなった敖欽ちゃんは、私を庇いつつ、大きくなったその腕で部屋の壁を外に向かってぶち抜いた。

 まさに、どっかーーーーん、ともの凄い音を立てて。

 私乗せて宙を舞った敖欽ちゃん。

 その上から見ると、がらがらと音を立てて崩壊する屋敷が目に入った。

 どうやら中規模の貴族屋敷、だった模様。

 まぁ、一室が使われていた時点で、破落戸だろうと元貴族だろうと、全員極刑ですが。


「いまから、私の龍による報復のドラゴンブレスがいきまーーーす。逃げられるものなら逃げてみやがれなのでーーーーす」


 私のその言葉にあわせて、敖欽ちゃんがチャージ開始。

 ぱっくり開けられた口の周囲には、精密な魔法陣がいくつも浮かび上がる。

 まるで太陽の光が集まったかのような雰囲気で、周囲の日の光が暗く感じる。

 併せて敖欽ちゃんの口元が光り輝く。

 いや、まるで闇夜に輝く桜色の太陽のような、そんなイメージを覚える。


「敖欽ちゃん、なぎ払うのです!!」

「きゅああああああああああああああああ!!!」


 ゴンブトの桜色のドラゴンブレスが、その元貴族屋敷跡地を更地へと変えた。










 誘拐犯は元貴族と元大商人。

 父上の政策に引っかかり、その逆恨みと復讐のための誘拐だったそうだ。

 「地上に再現された薄紅色の煉獄」とまで言われた騒ぎだったけど、結果的には死者なし。

 全員生きていたわけだけど、全員、心が半分ぐらい壊れているそうだ。

 真っ暗な中じゃなくちゃ精神を保てなかったり、薄紅色の光を見ると半狂乱になったり、私ぐらいの年齢の女の子を見ると気絶したり。


 完璧にPTSDですね。


 心が折れてしまったのでしょう、仕方ありません。

 一罰百戒、心得てほしいものです。

 まぁ、父上からも「我が娘を誘拐するなど死をもってしても生ぬるい」とまで言われていますので、今回の報復も奨励されたほどでした。

 一瞬にして屋敷を消し去るほどのドラゴン、龍ということで、領民から怖がられるかと思いきや、なんだか歓迎されていた。


 元貴族と元大商人は大層嫌われていて、爵位没収やら資格停止された後も隠していた金にあかせて領民に迷惑をかけていたそうだ。

 が、今回の見た目きれいな魔法(という風に理解されている)によって、残党も含めた捕縛がされたと大いに歓迎されているらしい。

 もちろん、悪さをしていたのは彼らだけではないのだろうけど、悪いものの象徴として彼らがいるだけに、捕縛の報は良い話として伝わる。

 そしてそれを行ったのが私と言うことで、かなり歓迎されている、らしい。


 誘拐犯の共謀者も見つかった。

 父上の領主館のメイドが犯人。

 子供をさらわれて脅迫されていたそうだ。

 流石に無罪とは出来ないので、一時金を与えて母子ともに追放、という処分になった。

 内々では処刑の話もあったけど、父上に私が説得した。


「父上は、私が人質になっても、何もしないのですか?」


 この一言で押し黙った。

 何しろこの人、私の誘拐に対する脅迫状で、本格的に私財を手放そうとしたのだから。


「・・・一度は見逃そう。しかし、二度目はない」

「そうですね、父上」


 こんなことをしなくても、ちゃんと勤め上げれば、もの凄い退職金がもらえるのが「うち」なのです。

 あと、子供の病気とか本人の病気に対する医療補助も出ますし。

 わざわざうちを辞めることをすること事態、せっぱ詰まったことだと理解できます。

 だからといって、甘い訳じゃないのです。

 その辺は締めないとだめですね。


「・・・デルフィルナ、何で貴女はそこまで気丈なの! 誘拐されたのよ、誘拐!!」

「でも、姉上。私には敖欽ちゃんという最強護衛がいますので」

「結果はいいの!! 怖くないの? イヤじゃなかったの!?」

「一応、貴族の屋敷だったらしくて、ベットはきれいでしたよ。姉上」

「そーじゃないでしょ!!!」


 まぁ姉上は私が心配だった、心がつぶれるほどだった、自分が離れたせいだって自責していたのに、本人がぽよよーんとしているのが納得行かない様子。


「姉上、私はここにいます」


 きゅっと抱きしめると、姉上は私をぎゅぎゅーっと抱きしめて泣き出した。


「でるふぃるなぁ~~~~~~~~~~~」


 うんうん、かわいい姉上です。


「母様に折檻されないように弁護してぇーーーーー!」


 ああ、そっちですか。

というわけで、第二話です。


お楽しみいただけたでしょうか?


私はちょっと服薬生活に入ったもので、ちょっとだめですw

長ーい目でお付き合いください

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