少女編 第十一話
おひさしぶりです。
このままエタかと思われがちですが、そんなことはありませんw
まぁ、ネタに詰まったという話もありますが、この神代をフリーダムにおいておいてくだされば、いつか書きますw
ある貴族がいた。
美しき妻といとおしき子供達。
仕事も順風満帆、家族関係も問題なし。
貴族としても男としても、誰もが羨む立場にいると断言できた。
そう、断言はできるのだ。
ただし、付帯する様々を考えると、本当に「羨む」立場にいるのかについて疑問が無いわけではない。
まず、長女。
様々な野望陰謀防諜結果、周辺諸国も含めて「女神」扱いになっている。
加えて言うのならば、それを教国も認めており、主神に次ぐ現人神として公認していた。
なぜ、こんな事になった言う気持ちがないわけではない。
普通ならば異端として一族郎党刈り取られてもおかしくないはずである。
しかし、しかしだ。
なぜか保護されている。
天使に。
本当に、なんでこうなったのだろう?
続いて長男。
あるある一時期までは、文武両道の時期当主として大いに期待のできる素材であった。
が、ある事件の後は、言わずもがな。
せめて留学先から連れ帰った少女と添い遂げてくれれば、なにも言うことはない。
そう、それ以上は期待しない。
一応、最大限の期待ではあるが。
で、次女。
破天荒にして天災。
どこをどうひっくり返せば「あの」ように育つのかすら不明な、まさに天変地異がごとくの存在になってしまっている。
少なくとも、あのアンジーと相対するまでは、ふつうの子供だたっと信じたい。
しかしあのあと、赤龍と契約するわ、王から契約獣は奪うわ、危険なモンスターだろうがなんだろうが全て手なずけるという乱行ばかりか、学園での行動も規格外のもので。
全てを列記すれば、それだけの事になるのやらと頭痛がひどくなる。
が、それを超えて、全てを超えて、次女の行いは周辺諸国を変えてしまった。
そう、本当に変えてしまったのだ。
ふつうなら隣国の貴族を死なない程度に粛清しまくった、なんて状況になれば即時戦争となるはずだ。
だが、次女の場合は違う。
大変失礼なことを本国の貴族がしたことを心の底から礼を尽くしてお詫びした上で、国王からも謝罪の書状を引き出したのだ。
貴族の子女とはいえ、一介の少女が。
加えて言うならば、この謝罪がなかった場合、教国および妖精陣営が隣国に宣戦布告をしていた。
それも次女の影響で。
ある貴族は思った。
もう波乱はお腹いっぱいだ、と。
あと、自宅の稼働フィギアを売ろうとしてごめんなさい、と。
とりあえず、父上とは一年間口をききません。
「あー、一応、お父様も色々と考えての事よ?」
「でも、あれは私の、私だけのものです!」
そう、建造にかかる費用の100%を自費で賄ったのだ。
加えて言えば、今でも維持費という形で母上にショバ代を払っているのだ。
確かに生活費はかかっている私だけど、その娘のモノを売り払おうというのは絶対に許しません。
「んー、正直に言うと、私もあれを売るのは反対」
「ですよねぇ!!」
「あんな危険なものを他国に渡すなんて無理」
「・・・あれぇ?」
どうも私と姉上で「あのこ」達の認識がずれている気がしますが。
基本、私だけの姉上シリーズである三体のうち一体は売り払われてしまった。
その後の予防と交渉により安心していた私が悪かったのかもしれない。
あの超人外交官が、自分の手を汚さずに切れる手札を使わないわけがないのだ。
正直、私自身の研究室を開いてしまい、そこで管理することも視野に入れるべきではないかとも考えているが、半ば公の場である学園においておく危険性もある。
どこかの貴族の横やりで無理矢理一時的にも接収されてしまう危険性があるのだ。
だからこその自宅管理だというのに。
「父上めぇ、息の根を止める寸前まで追いつめるのです」
「あー、デルフィルナちゃん。すでにお父様は虫の息よ?」
姉上曰く、私の絶縁状(期限付き)を見た父上は真っ白になって倒れたそうで。
三日ほど体を起こせないほど憔悴したそうです。
「三日ですか、半年ほど動けなくしてやってもよかったのです」
半ば本気で言う私に、姉上は苦笑い。
「まぁ、半死半生でも仕事はしているんだから、すこしは許してあげなさい、デルフィルナちゃん」
「だめなのですよ? 許すのは母上と姉上の仕事です。私は絶対に許さないのです」
私が許せば絶対に「私だけの姉上」シリーズを売り払い、国の外交得点に変えてしまうのです。
それだけは絶対に許さないのです。
何のために私が様々な活動をしているのか理解して欲しいものです。
「・・・えーっと、何の為って、欲望の為じゃないのかしら?」
「失礼な、姉上でも怒りますよ?」
「・・・えー?」
どうやら誤解があるようなので様々と説明いたしますが、姉上は少しも理解してくださらない様子。
悔しいですが実績をもっと進めるべきでしょう。
そんなわけで、
「周辺各国の貴婦人を、総魔法少女にっ!」
「や、やめて、やめてあげてデルフィルナちゃん!!」
姉上全力の制止に、どうにも納得のいかない私なのでした。
勇者ボーデスによる各国行脚は私たちの魔法少女合宿とは違って進行しています。
何しろ男女関わりなく影響がある特級外交券ともいえる存在だけに、実にブリリアントな大歓迎で。
国内工場でも大増産。
そして関係各員が接待攻勢にあっていたりします。
もちろん、私や姉上にも「ボーデス」を求める声がないわけではありませんが・・・
「・・・デルフィルナちゃん。ボーデス薬だと偽って新薬を試すのはやめなさい。いみじくもあいては貴族なのよ?」
「ですが、治験にはデ○が必須なのですよ?」
「○ク呼ばわりはやめなさい」
いえいえ、なにしろもっと効果があるとか新しい効果がある新薬っていうだけで、ごろごろと治験希望者が集まってくるのが我が国の貴族の内情。
いろいろと試したくなるではないですか。
「・・・やっぱり欲望のままに行動してるわ、デルフィルナちゃん」
「みんなの幸せのためですよ?」
私は新しい薬効が試せてうれしい、治験者は新薬の一番乗りでうれしい、まさにWin-Winの関係です。
「さすがです、デルフィルナ様。大義名分を納得させた上で不良貴族を薬害するとは・・・、そこに痺れて憧れます!!」
「待ってください、沙也加様。聞き捨てならない表現なのです。薬害って、殺してないのですよ?」
「ですが、1人は性格が激変し今までの行いを省みて自殺未遂。1人は趣向が激変して幼女趣味から老女趣味へ。1人は・・・」
「誰も死んで無いのです」
「一方的な自己のは異変は個性の死に相違ないかと?」
「・・・デルフィルナちゃん、私もそう思うわ」
「生きて道を違えても誠実に生きている、それだけで王国にはプラスです。この事実の前には人格など些細な問題なのです!」
「ええ、ええ、ですから私も心から尊敬させていただいておりますわ、デルフィルナ様」
きらきらした目で私を見る沙也加様の目の奥は、「その新薬を分けていただきたいです」という言葉がチラチラみえる。
どうやらお国でもご苦労がある様子。
「よりあえず、兄上に向いた何かを開発と言うことで?」
「はい、是非とも♪」
がんばれ、兄上。超頑張れ!
そんな会話のあるエンチャント研究室。
実は今度開催される学会用の資料を作っていた私と姉上のところに、沙也加様が遊びに来たという状況。
様々なエンチャントを続ける我らが研究室は、周辺各国も注目する魔境になっていたりする。
各デンドロビウム、祝福弾頭、エンチャント矢、ヒールBB弾等々様々なトンデモ開発をしている訳ですが、実は一番人気は太陽光温熱樽だったりします。
ふつうに太陽光を受けて熱を保存しつつ、魔力はほとんど使わない、そして熱湯同然のお湯を火を使わず手に入れられるというアイテムに各国は熱狂し、大騒ぎになったのです。
タンジャッテのような熱風吹き荒む国以外は、お湯の循環による暖房という手段もあり、その熱源を太陽光温熱樽に頼ることで大きくエコできると各国で大注目。
ただ、樽以外の部分で巧く行っていなくて技術的な質問がたまり込んでいたため、今回の学会で説明会を開設することになっているのです。
一番再現できていないのは汲み上げモーター。
どうやら小型ゴーレムを永遠と回転させるとかいう発想ができていない模様。
まぁ私も最初はゴーレムで発電して電動モーターを回そうと考えていたわけで、五十歩百歩ですが。
それはさておき、ゴーレムユニットを回転だけに絞たっところ、電気もなにも使わないので水中の水車と動力部を一体化できたのが一番のブレイクスルーとなり、効果を大きく示すことになったのであった。
さすがに形成されたゴーレムなので、半年に一回は入れ替えないといけませんが、それだって技術的話をすれば中級魔法の範囲。
再現できないはずがないことを考えれば、構造などへの理解が少ないだけだと思います。
ちゃんと三面図とかにも起こしているというのに。
「デルフィルナちゃん、この三面図の読み方って難しいわよ?」
「・・・えーーー」
「デルフィルナ様、私も最初は解りませんでした」
「・・・えぇぇぇ」
これほどわかりやすいものはないと思うのですが。
これは悔しいのでトレッシングペーパーでも作ってしまおうかしら?
部品ごとに重ねて構造として理解できるみたいな「科学と学習」の付録みたいに。
というか、動かないけど構造的にはこんな感じって模型でも作りますか。
「科学と学習は解らないけど、模型は良いかもしれないわね」
「・・・あの、私にもいただけますか?」
なるほど。
お国に送るわけですね?
「ええ、この国のお風呂事情は我が国を越えています。姉上たちからも技術提携をと急かされておりまして・・・」
思わず姉上と視線を交わしました。
そしてそのまま教授に視線を向けると、グットサイン。
「でしたら、学会の講習時に席を用意いたしますので、ご参加ください。そのときにお預けします」
「ありがとうございます!!」
大喜びの沙也加様。
どうやらかなりの圧力を親族から受けていたようです。
というわけでしたw