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少女編~第七話

スパ○ボ系だった路線が、ちょっと戻ってきました。


ちょっとだけですよ?


 激震災害の影響で、国許よりも安全という話になった学園に私も戻ってくることになりました。

 まぁ、妖精領でやりすぎたのと、ドライ建造で民意が上がり安全になったという話もあったりします。

 加え、寝たきり老人や赤子すら再建の労働力となるという「勇者ボーデスV」はすでに大評判となっており、割と切実に被害各国から販売要求が王宮に来ているそうです。


 ああ、あの逞しき覇気を備えた赤子の人、無理をしていなければいいのですが。


 それはさておき、学園帰参に際して、妖精領からエルフの人やドアーフの人、さらには妖精な人まで加わった大名行列で帰ってきてしまったためいやがおうにも盛り上がる学園なのですが、やはり嬉しいのは出迎えのこの人でした。


「デルフィルナちゃ~~~~ん!」

「姉上~~~~~~」


 学園の校門で抱き合う私たちを見て、そっと涙をぬぐう風を見せる方々は多いのですが、そんな人たちに見せられない攻防あったのです。


「(デルフィルナちゃん、最近私のスタイルがかなり変化してるんだけど?)」

「(体型が煽情的でうらやましいのです、姉上)」

「(髪の毛も異常に長くなって、その上、切っても切ってもすぐその長さになるし)」

「(素晴らしい事だと思います、姉上。髪は女の命と申します、まるで不老の証のようですね)」

「(・・・最近、耳が尖ってきたんだけど)」

「(これはこれは、耳までシェイプアップですか、その努力頭が下がります)」


 ぎりぎりと抱きしめる力が強くなる姉上。

 まぁ、あれですよあれ。

 鋳型効果。


 いわゆる信仰というモノは形状にとらわれないものですが、信仰する者に対する形が確固たるものの場合、その鋳型は逆転写されて信仰されるものに影響します。

 いわゆる主神が姿なく神になったのも、信仰する者たちの求める形が様々だったため、その信仰心を効率的に集めるために姿を薄無い、何物でもないが何物でもあるという形をとったのです。

 では、明確に形が示されている女神ナーナリアはどうなるかというと・・・


「(最近、髪の毛に銀色が混じってるんですけどぉ?)」

「(御苦労なさっているのですねぇ、姉上)」

「(おかげさまで)」


 という風に、信仰される対象の逆影響をその身で受けているわけです。


「(とりあえず、ドライの仕様を教えなさい)」

「(アイアイサーです)」


 感動の姉妹再会は研究室に移り、ほっぺたの引っ張り合いの末、停戦に至りました。


「もう! ガーベラシリーズの新造はしないって言ってたじゃないの!」

「あれは、鋳造ではなく建設なのです。言葉に偽りはないのですよ、姉上」

「・・・どう違うのよ?」

「今までのガーベラシリーズは、神像であることを中心とした目的ですが、ドライは機動兵器としての側面が高いのです」


 んー、と考えた姉上が出した結論。


「つまり、サイサリスやデンドロビウムみたいな?」


 そう、まさに!

 つまり、ドライは、巨大高機動兵器なのだ。

 言い換えよう、巨大ロボット、なのだ。

 あ、教授もわかったらしい。


「・・・なるほど、つまり、今までのは神官で、ドライは騎士、ということかな?」

「はいなのです。もちろん、コンセプトはみんなで考えましたが、研究室の研究内容も一部使っているので、申し訳ないのです」


 何気にこの研究室の内容って、無茶苦茶な状況にこそ生きるものが多い。

 何をどのようにして応用活用したかを教授に見せると、実に興味深げであった。


「・・・これはぜひとも実物が見たいねぇ」

「教授、もちろんそれは可能ですが、いつになさいます?」

「今度の新年休暇まで時機を見るとしよう」


 まぁ、現在各国共に復興中。

 遊んでいると怒られるのです。

 とはいえ、うちの研究室の研究結果の一端である勇者ボーデスや支援魔法陣などはフル稼働で生産出荷されているので何とも言えない話ですが。


 ああ、あと、実家から物凄い入金がありました。

 何でも、ナーナリア石膏人形の追加受注割り当てなのだそうです。

 勿論、無駄金を使うつもりはありませんが、勇者ボーデスの生産ラインと魔法陣の生産ラインに大半を投資しておきました。

 儲かることがわかっていて手を出さない商人はいないのです。


「デルフィルナちゃん、一応、あなたは貴族の身内なのよ?」

「爵位を継げるわけではないので、気にしないのですよ、姉上」

「いえいえ、あなたや私の場合、有力貴族からの婚姻が・・・」

「勇者ボーデスの製作や女神ナーナリア関係者ってだけで、国策によって貴族間の婚姻は認められるはずがないのですよ? 行遅れが決定的なのです、姉上と私」


 がーん、という顔で固まる姉上ですが、国内貴族や国外貴族に嫁ぐなんて問題外なのです。

 ありうる未来としては、遠国の王族、それも継承順位の高い王族への輿入れか、国内で女主人であることを認める貴族位、男爵夫人とか侯爵夫人とかの爵位をつけて独立させるとか、そんな方向で動くかの性が高いと思うのですよ、姉上。


「も、もしかして、飼い殺し?」

「非常事態戦力確保のためのものでしょう」


 そう、ツヴァイは姉上しか乗れないし、ドライは妖精領の鎮守。

 再建設なんて不可能に近いから、バージョンダウン版を量産するほかない。

 そんな生産力のある国なんか今はないけど、それが出来るだけの知識は今、この国にしかないのだ。

 それをよそに流出させるなどありえない話で。


「ずーっと、姉上は私だけのモノなのです」

「がーーーん」


 ふっふっふ、世界全てを巻き込んだ、私だけの姉上計画は大きく実を結んだのです。


「がーーーん」






 エンジュマリカ皇国からの留学生が学園に来ることになったそうです。

 それに合わせて、エンジュマリカ皇国に留学していた兄上が帰ってきました。


「兄上~」

「デルフィルナ~~~~!」


 砂塵を上げて走ってきた兄上に足払い。


「・・・な!」


 宙を舞ったところで、下方から全面に集中する弱点を一斉攻撃。


「あたたたたたたたたたたたたたた!!」

「あ、あふふふふふふふふふふふふふぅぅぅぅぅ♪」


 瞬間的に弛緩した顔になった兄上の下方から抜けると、背後で「どくしゃわ」と、微妙な音で落ちた兄上。


 向こうでは最強の武術者とかいわれて天狗になっていたそうですが、日々、絶掌を磨き続けた私に叶うわけがないのです。


「・・・そ、そんな、我が国の最強ともいわれる将軍とも打ち合ったルッケルス様が、瞬殺だなんて・・・」


 どうやらこの方が交換留学生みたいなのです。


「ルッケルスお兄さまの妹の一人、デルフィルナでございます」


 にっこりほほえんで貴族の礼をすると、彼女もあわてて名乗ってくれた。


「エンジュマリカ皇国第三王女、沙也加ともうします。ルッケルス様には色々とお世話になっていて・・・」


 ほほぉ、兄上、やりましたな?

 ロリ彼女を紹介とは、感心しました。


「・・・はぁっ!? ち、ちがうちがう! 彼女は第三王女だが、ちゃんとした婚約者がいるんだ! 僕は違うぞ!!」


 え、そうなの? と視線を向けると、ちょっと不機嫌そう。

 あー、乙女の機微ですな?


「何なら相談に乗るのですよ、沙也加様」

「・・・お願いできまして? デルフィルナ様」


 いろいろと漏れ出てすごい状態になっている兄上ですが、よろしいので?


「色々勉強になりますわ」


 結構手強い模様。

 多分あれですね、どこかで見た最高の兄上が心の中にあるから、多少とっ散らかっても気にしないという事でしょう。

 なんというか、残念な兄上にはもったいない方です。





 とりあえず、汚物は男子寮監さんに任せて、私は沙也加様を学園案内に導きました。

 一般設備や寮設備、で、最近は毎日は入れることになったお風呂とか。


「まぁ、ルッケルス様からは、三日に一度程度は入れればいいと聞いておりましたのに」

「技術革新ですよ、沙也加様」


 そう、技術革新。

 ただの黒塗りに魔法刻印を刻み込むことで熱効率をよくして、太陽熱給湯というよりも太陽エネルギー変換にしてしまったわけで。

 このおかげで、完全に雨とかじゃなければ、かなりの温度まで加熱できるようになった。

 現実は太陽光、ではなく放射線量熱変換なんですが。

 ともあれ、女子としては原理よりも現実という事で、大いに喜んでいただけている模様です。


「ああ、そういえばデルフィルナ様は、どの学年ですの?」

「メトロン教授のエンチャント研究室勤務です」

「え?」


 あれ、っと一度小首を傾げた後同じ質問だったので。


「入学してすぐにスカウトされて、それ以来お世話になってるんです」


 居心地いいんですよー、と説明したんですが、どうにも理解できていないようす。

 まぁ、ソレは後追いでもいいという事で、学園最大人気の聖地に導いてみました。



「・・・・なんて、何て美しい・・・」



 学園聖堂の中心像を見上げ、涙を流す沙也加様。

 さすが、心清き方には直撃ですね。

 学園の守護女神像、女神ナーナリア ガーベラテトラ・アインス。

 対外向け大型「私だけの姉上」シリーズの一番作。

 少なくとも、この聖堂で祈りが欠かされたことはないのです。


「・・・素晴らしい女神像ですね、デルフィルナ様」

「ありがとうございます。製作者としても鼻が高いのです」


「・・・え?」


 おもわず、何言ってるのあんた、という表情の沙也加様。

 ああ、そっちが地なんですね、とうれしく思う。


「女神ナーナリアシリーズの設計及び鋳造建設は、私の仕事なのです」


「・・・・」


 呆然とした沙也加様でしたが、色々と説明と聞くうちに理解をしてもらえたようだ。

 そう、理解しちゃだめだ、感じるんだ、そういう方向だという事に。


 このあと、騎士部門に殴り込みをかけて、無手対剣士という対決で胴元を沸かせたり、半壊させた騎士部門を善意のヒールを施したところ、全員尻尾を巻いて逃げ出したり、面白がって其れを追い回していたら姉上に見つかって怒られたりと、実に平常運転のつもりだったのですが、沙也加様には随分と刺激が強かったようで、途中で倒れてしまいました。


「ごめんなさいね、うちのデルフィルナちゃん、いろいろと一般常識が突き抜けてるから、ご迷惑をおかけしなかったかしら?」


 取り合えず私との抗争を終えた姉上が、にっこり微笑んで沙也加様に挨拶したんですが、もう、目がウルウルしてます。

 声が震え、視線が定まらず、そのまま昇天状態で失神。

 実に素晴らしいのです。

 姉上は既に女神の資質を発揮しているのですね。


「で、で、で、でるふぃるなちゃん、どうしよう?」

「姉上、ご安心ください。ヒールからキュア・気付に至るまで各種揃えております」


 アイテムボックスから出したエアソフトガン風のヒール弾発射装置を見て姉上は「ダメダメダメ」と機械的にアイテムボックスに戻してゆきます。


「デルフィルナちゃん、力押しは駄目よ?」

「・・・では、私に何をしろと?」

「ああ、私のせいなのね、多分。デルフィルナちゃんの才能を生かせると思って自由にさせすぎたに違いないわ。ああ、神様・・・」


 はっははー、姉上は楽しいですねぇ。

 今、神界に流入する祈祷のエネルギーの大半は姉上に向けたものなのに。

 その姉上が神様に祈る?

 どんな循環ですか。


「・・・ねぇ、デルフィルナちゃん。妙に神界に詳しい件について・・・」

「還俗した天使たちから事情聴取したんですよ? そんなに難しくありませんでした」


 絶掌十分間でダウンって、もう少し頑張ってもらえないと面白くないのです。

 いえ、私の必殺の技に十分間耐えるということ自体が凄いことなのかもしれませんが。

 神のアガペイに染まった天使たちには、私の必殺拳は堪えるのでしょう。


「・・・あああああああ、お父様やお母様になんと説明したらいいのかしら。妹は妹は、神の使徒をも拷問する非情な女になりましたなんて説明できないぃぃぃぃぃ!」

「姉上。あれは使徒でもなんでもない、デクなのですよ?」


 我が研究の礎になるのだ、不死の身を誇るがいい。

 ふぁーっはっはっはっは。


「いやーーーーー! 私の愛らしいデルフィルナちゃんを返してぇーーーー!」

「いつでも何処までも一緒にいるデルフィルナが本物なのですよ?」

「いやーーーーー!」


 錯乱状態の姉上をどうにか落ち着かせて、先ほどの悪乗りを謝りました。






いろいろと精神的に追い詰められていて、ちょっと錯乱気味でしたが、其れが良かったのか悪かったのか、書けました、令嬢。

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