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幼女編~第一話

リハビリでちょっとエロいけど勘違いというモノを書きました。


お楽しみいただければ幸いです。


※初めに思い付いたのは「麗人編」なので、そこまでのミッシングリンクを書き続けられればなーとか思っています。

 私が前世の記憶を思い出したのは、三歳の時だった。


 家の庭で乳母と遊んでいたところになぜか魔物が飛び込んできた、そんな瞬間、恐怖で思考が真っ白になり、そして色々と思いだした。



 才谷梅次郎。

 享年は、たぶん、38才。

 日本という国でサラリーマンをしていて、そして、まぁ、オタクだった。

 サラリーマンもまじめにしていたのでオタリーマンというカテゴリーだったかもしれない。

 で、死亡原因は、あれ、電車事故、だと思う。

 通勤中に電車が横転、で、俺、圧死。








 まぁ、事故だし、仕方ないよな、と思いつつ、ゆっくりと目の前の状況を分析し始めた。

 目の前の黒い魔物、というか、乳母は泣き叫んでいるけど「犬」だった。

 よく見れば鎖でつながれてるし、鎖の先は生け垣の向こう。

 目を凝らせば、見知った人間が数人。

 父、母、兄、姉。

 なぜか無茶苦茶うれしそう。


 これはあれか?

 末っ子をいじめようというのか?


 よかろう、ならば戦争だ!


 私は、向こうの人生で長らく培ってきた病を発動させることにした。

 その名は「厨二病」。


 ふははははは! 我が魔眼よ、敵の弱点を教えよ!!


 そんなノリで「犬」を見たところ、なぜか喉元に赤い矢印が見えた。

 え、まじ? マジで魔眼!?

 よーし、よーし、来たぞ、来たぞ来たぞーーー!!

 夢にまで見た、思わず黒歴史ノートに書きためまでしたオリジナル魔眼、発動だぁーーー!!


 見える、見えるぞ、貴様の弱点!

 喰らえ、我が絶掌!!


 ふおりゃーーーー!!!!


「きゃうん☆」


 もう一撃だぁ!


「きゃふん♪」


 お、弱点指定が無茶苦茶増えたな、ならば両手で全力攻撃だぁ!!


「わふぅぅぅぅぅっぅぅぅぅん♪」


 私の全力攻撃を受けて、「犬」がかなりヤバい顔で腹を見せて倒れた。

 ふふふふ、我が絶掌を受けてもまだ息があるとは、なかなかしぶといな。

 さて、そろそろ、息の根を止めるかな?


 思わずワキワキと両手を添えようとしたところ、なぜか「犬」は期待で瞳を潤ませている模様。

 なんと、高密度の殺気を受けると、虎ですら死を覚悟すると言うけど、そういうことなんだろうか?

 とはいえ、貴様の弱点は丸見えだ。


 私の両手が光ってうなる、おまえの弱点を掴めと輝き唸る・・・・!!!!


「くらうのです、いま、ひっさつのぉぉぉぉ・・・・」

「「「「「だ、だめーーーーー! デルフィルナちゃんだめーーーーー!!」」」」」


 生け垣から飛び出してきて私を止める両親。


「アンジーの体力はもう尽きてるからぁ!!」


 兄と姉が「犬」を庇ってる。

 やはり、悪戯でしたか。


「でぃ、デルフィルナ、さま、もっと・・・」

「だ、だめよ、アンジー、帰ってこれなくなるわ!!」

「やめとけ、アンジー! デルフィルナは規格外すぎた!!」

「・・・ディ、デルフィルナさまぁん・・・♪」


 なに、このカオス。







 何でも、我が家、ボーテックス伯爵家に生まれたモノは、色々と異能を発揮するそうだ。

 で、私も生まれた頃から規格外だったので、ちょっと早いが精神的な追いつめ効果を与えて異能を発現させる、という話に成ったそうだ。


 まぁ、異能は発現した。 

 前世の記憶と魔眼。

 とりあえず前世の記憶は置いておいて、弱点看破の魔眼を得たことを話すと、家族全員に感心された。


「じゃ、じゃぁ、デルフィルナ。私の弱点はどこかしら?」


 母上の言葉を聞いて、一応父上をみる。

 無言でうなずいたので、攻撃開始。

 

「まず」


 両手でスイカップを鷲掴み。


「はうぅ♪」


 思わず崩れ落ちたところで背中をつつつつつ・・・


「ひゃ、ひゃうぅぅぅぅぅぅ♪」


 さらには・・・


「や、やめよデルフィルナ!」

「はい」


 なぜか先ほどの喋る「犬」と同じ感じの顔になった母上。


「・・・あ、あなた・・・」

「ミレイナ、ミレイナ!」

「・・・寝室まで運んでくださいませ」

「ふおぉぉぉぉっ!」


 鼻息も荒く母上を運ぶ父上。

 なぜか茫然自失な兄上と姉上。


「・・・母上、ごめんなさい」


 私の暗黒の力が母上を苦しめてしまったのですね。

 私の異能は、封印されるべき、そんな風に思いました。


「・・・姉貴、デルフィルナの異能、やべーぞ」

「・・・ルッケルス。一応弱点看破に間違いないみたいよ?」


 ところで、兄上。


「な、なんだい、デルフィルナ」


 先ほどまで無かった兄上の弱点が、股間にイッパイ集まっているのですが、なにが起きているのですか?


「ルッケルス、あんた、まさか・・・」

「し、しかたないだろ、姉貴!! あんな色っぽい姿見せられたら・・・」

「この、変態、変態、変態!!」


 なぜか姉上にも弱点が見えて居るみたいで、集中的に股間をストンピングしたのであった。

 とりあえず私も両手で攻撃したら、股間を押さえて痙攣し始めたので、有効打撃に違いない。


「デルフィルナ! 貴方は攻撃しちゃだめだから、ルッケルスが堕ちちゃうから!!」


 姉上の言うことは少し難しい。

 もしかして、どこかの精神世界にいってしまうという事かな?

 うむ、流石に我が家の跡取りがアブノーマルでは良くないな。


「解りました、姉上。この弱点は攻撃しません」


 というわけで、兄上のもう一つの弱点は、ここ!


「ぎゃぴーーーーーーーーーーー!!!」

「デルフィルナ、そこもだめーーーーー!!!」


 ふふふ、兄上。

 幼児に対して無配慮に尻をさらしているのが悪いのですよ?


「・・・あ、あ、あ、ああああああ」

「ルッケルス、もどってきてーーーーー!!」


 はて、兄上はここにいるのに、どこに行くというのだろう?










 翌日から、犬耳のメイドさんが私の専属になった。

 先日の犬、実は彼女だったとか。

 獣人種で犬に変身できるという。

 つまり、あの我が儘ボディーを攻撃しまくったらしい。

 そのことを詫びると、もの凄く潤んだ瞳で今度はもっとしてほしい旨のお願いをされた。

 どうやらアンジー、ものすごくMみたいだ。

 必殺の絶掌を一晩中でも浴び続けたいとは、まさにM格好いい。

 Mの中のMかもしれない。

 となると、専属のメイドを満足させるのが私の役目だろう。

 もっともっと絶掌を極めて、一撃でシトメなくちゃ。


「これからもよろしくね、アンジー」

「はい、デルフィルナお嬢様」


 よきかなよきかな。


 とまぁ、前世おっさん、今生幼女のデルフィルナ生活が始まったのだった。






絶掌令嬢物語 ~幼女編






 朝食の席でのこと。

 ほぼミイラ状態の父上の膝の上で、10は若返ったかのような艶やかに輝く母上が「あーん」をしてる。

 それをみて姉上は真っ赤になっていて、兄上はなぜか艶やかな視線でこっちをみてる。


 なにが起きた、我が家。


 昨日までの記憶では、整然と冷然と、私語もなにもなしに背筋を伸ばして食事してたじゃないか。


 なのに、


 両親>超新婚状態。

 姉 > 口から砂が出てます状態。

 兄 > 何気に桃色空間発生中。


 両親はいい。

 あれは結婚して子供を私を含めて三人も作ってるほどなのだから。

 で、姉は、十分にお年頃。両親のそんな姿を見て不快に感じないわけがない。

 しかし兄。あなたは何を発情してるんだ?


 ・・・まさか、私の後ろに控えるアンジーをねらっていてか?

 くそぉ、流石貴族男子だ。

 メイドはスタッフで美味しくいただきましたってか!?

 くそぉ、アンジーはわたさん!


 そんな思いで背後に立つアンジーを振り向きざまに抱きしめると、「あん♪」とか官能的な声を出す。

 うむ、ふかふかじゃぁ。

 今度また犬になってもらって、モフモフしたいな。

 そのときは攻撃じゃなくて、もふもふだ。


「・・・デルフィルナ、どうした・・・ルッケルスぅ?」

「は、いやいやいや、何でもございません、姉上!!」

「じゃ、いま、何処を見ていたかを答えなさい」

「はい、姉上。もちろんの事、我らが愛しき妹、デルフィルナを見ておりました」

「そう、で、何を考えていたのかしら?」

「はい、姉上。このかわいい妹を万難から守るためには、せめて塔の一つでも建てねば守れぬと・・・」


 なんか、桃色空気が消えた。

 そんなわけで、アンジー浴を中断して朝食開始。


「デルフィルナ」

「はい、母上」

「今晩も寝る前に『攻撃』してもらえるかしら?」

「で、ですが、母上。私の呪われた異能で、母上が崩れ落ちて・・・」

「デルフィルナ、貴女の異能は、様々な方を救うことが出来るすばらしい異能です。それを磨くために、母は、母は、この身を捧げましょう」


 ぶわっ、と涙があふれた。

 何という献身、何という母の愛。

 貴族って、貴い存在だって話だけで、基本権力者が調子に乗ってるだけだと思っていた前世の自分を殴りたかった。

 人々を救うために、領民を救うために、その身を捧げる母の愛。

 その無償の、無垢の愛に私は猛烈に感動していた。


「あー、ミレイナ。三日に一度ぐらいにせぬか?」

「何を仰います、あなた!デルフィルナの異能を磨く必要がある、そうご判断なさったのではないのですか!?」

「あ、ああああ、確かにそうなのだがなぁ」

「では、毎日に異存有りませんね!?」

「・・・解った」


 どうやら父上が消耗しているのは一晩中看病したかららしい。

 政務もあるだろう、それなのに献身してくれる両親に、私の胸は猛烈な熱を持っていた。


「あー、デルフィルナ」

「はい、兄上」

「私も、その、協力しても・・・」

「ルッケルス、それ以上言ったら、殺すわ」

「・・・何でもありませぬ、姉上」


 なんと、次期党首の兄上まで協力をかって出てくれるとは。

 しかし、流石姉上。

 次期党首を私の絶掌に晒して生死をさまよわせるなんて出来るはずもない。

 その貴族としての判断と家族愛。

 心の底から、心の底から尊敬いたします。










 実はアンジー、私の家庭教師も兼ねているそうだ。

 美人犬耳教師。

 前世だったら本気で襲いかかるレベルの話。

 今生は未だ幼女なので関係ないけど。


 まず行われる礼儀作法は十分に及第点をいただいたという事で、地理、というかボーッテクス伯爵家の歴史を中心とした国の成り立ちとか周辺政治状況とか宗教の話に移った。


 サマワリー王国、というのがこの国の名前。

 なんとなく、戦争の中心っぽい名前だなーと思っていたら、実際に各国からのちょっかいが多いそうだ。


 理由としては、まず、サマワリー王国が精霊の加護による常春であること。

 四季がなくて農作物は育つのかいな、とおもっていたら、その辺も加護だそうだ。

 加護が無くなったら、うちの国、どうなるのさ、と思ったけど、割と強固な契約を結んでいるそうで、その辺の心配がないとか。

 犯罪者や盗賊、山賊も少なく、かなり暮らしやすい国として周辺国から移民が多い。

 となると、貴重な労働力である国民を盗んだ何だと言って言いがかりも少なくなく、賠償しろとか何か寄越せとか精霊を「返せ」とか言ってきてるそうだ。


「アンジー、なんで返せっていわれるの?」

「それはですねお嬢様・・・」


 元々王国には水の精霊との契約しかなかったそうだ。

 それだけでも恐ろしいほどに強力なもので、治水・農政・生活用水とか様々な恩恵を受けていて、大きく栄えていたのだという。

 が、それをおもしろく思っていなかった火の精霊と契約を結んでいたタンジャッテ神聖国が何の宣戦布告もなしに戦争を仕掛けてきたのだという。

 火は戦争における火力として珍重され、多くの兵器に転用され、サマワリー王国を攻め込んだ。

 

 が、水の守りは協力で強大。


 契約精霊である火の精霊が多く散らされていったとか。

 この状態を良く思わなかった火の精霊は、この戦争の正当性について王に問いかけたそうだが、王はこう答えたそうだ。


「きさまら、精霊は、黙って敵を攻め滅ぼせばよいのだ!!」


 これを聞いた火の精霊は、タンジャッテ神聖国との契約が終了したことを理解した。

 精霊契約における特筆事項、契約の終了が発令されたからだ。

 詳しい内容はすでに失われているから解らないけど、タンジャッテ神聖国と火の精霊は、お互いを尊重し、そして互いに助け合う形で契約していたはずだとアンジーは言う。

 そして、それが契約代表者である王によって破棄された。

 以降、タンジャッテ神聖国から火の精霊は去り、北方の氷の大陸の寒風を受けて、一気に雪と氷の国へと変わってしまった。

 芳醇な畑も、恵みの山も、すべてが凍り付いたタンジャッテ神聖国から、毎年すごい人数の移民が流れ込んでくるそうだ。


 で、その後の火の精霊。

 なぜか、サマワリー王家が気に入ったらしく、水の精霊と同等の契約をした。

 それを指してタンジャッテ神聖国は精霊を盗んだと大騒ぎしているという。


 なんともお粗末な話だ。


 精霊消失は100年も前のことらしいけど、タンジャッテ神聖国では真相が教育されておらず、何代にもわたって「サマワリーは精霊泥棒」と教育しており、それは向こうの常識になっているとか。

 それって、あれだよね、NTR。

 うちのお母さんは、寝取られたんだよー悔しいよねー、って教育してるんだよな。

 まぁ、国同士の話なんて、その程度の話なんだろうけど。


 で、水の精霊火の精霊の契約に興味を持った木の精霊や大地の精霊、そして様々な精霊がこの地に集い、常春の国ができあがったという。


「はぁ、もしかして、周辺国って敵ばかりかしら?」

「お嬢様。敵の敵は味方、という話もございます」


 つまりあれだ。

 周辺国もうちと敵対しているばかりではなく、他の隣国とトラブルを抱えていたりする。

 だからその関係を押したり引いたりして緊張関係に引っ張り込んで、仮初めながら孤立しない方向で平和を引っ張り出しているそうだ。

 すげー、うちの外交担当すげー。


「もの凄く優秀ですのね、うちの国の外交は」

「はい、お嬢様。そのような言葉は直接ご本人に仰ってみてはどうでしょうか?」

「へ?」

「お嬢様のお父様が、その優秀な外交担当ですよ?」


 驚きました、本当に驚きました。

 お爺さまの代までの我が家は、どちらかというと城詰めの官僚貴族だったらしいんだけど、父上が急遽ピンチヒッターで外交に乗り出したあたりで周辺国との関係は激変。

 先ほどの授業で説明されたような状況に引っ張り込んだそうだ。


 まじ、父上、リスペクト。


 献身の母上と有能な父上。

 なんかもう、この家に生まれて、これ以上誇らしいことはないと感動してしまった。

 非才のこの身だけど、両親家族に迷惑をかけないように、がんばろう、そう思った私だった。











 毎日の訓練の影響か、いろいろな人の弱点がすぐに分かるようになった。

 とはいえ、両親と姉上との約束で、不用意に攻撃しないことを使っているので、許された場所でしか実践していない。


 最近、母上への攻撃を行うと、いろいろな体液が噴出するようになった。

 前世の記憶で、有名な拳法家の一撃で五穴憤死なんていう一撃があったというので、私の場合は「下半身の穴+口+鼻+涙」噴出だろう。

 とりあえず、一度大きい方を粗相してからは、母上も午後から絶食して訓練に臨んでくれるのがありがたい。

 逆にアンジーは一撃、では済まない。

 本当に一晩中でも耐えきる。

 そういう意味では、アンジー相手の方が訓練になるのだけれども、無償の愛を献身してくれる母上に遠慮など出来ず、毎晩攻撃をさせてもらっている。

 最初は恐ろしいほど窶れていた父上も、看病になれたのか、最近では私の攻撃の後で意識を失った母上を、宝物のように抱き上げて寝室に「にこやかに」去るようになった。


「デルフィルナ、おまえの異能はすばらしいものだ。日々磨きなさい」


 最強外交官の父上に誉められて、私はだらしなく微笑んでしまった。

 それをみた父上も、にっこり微笑んだ後、寝室に母上とともに休みに行ったのだった。

 ああ、父上と母上は仲がいいなぁ。

 すばらしいことだ。










 姉上の強い勧めで、兄上が留学することになった。

 海の向こうの海洋国家「エンジュマリカ皇国」というところで、サマワリー王国とは結構仲がいいそうだ。

 で、王族がこのほど留学するので、その際のご友人として一緒に留学せよ、ということらしい。

 実に、我が家らしいお仕事だと思う。

 が、なぜか兄上は難色を示す。

 なぜか?


「デルフィルナをほおってゆけるものか!!」


 なんと私が心配だから、だそうだ。

 ともあれ、非才の我が身が心配なのは解るけど、兄上の行動で父上の仕事もすばらしい影響があるわけで。

 そう考えれば、次期党首として進んで留学すべきではないか、という話を、子供口調ながら力説すると、本泣きで泣き崩れ、一晩考えさせてほしいと部屋に引きこもった。

 あれだ、あれ。家族が心配なんじゃなくて、手を出したメイドと離れたくないだけだろ、兄上。


「・・・えーっと、デルフィルナ、それ、どういうこと?」


 姉上の言葉に、私は普段感じているアンジーへの兄上の桃色視線の話をすると、深く、ふかーく、ため息をおつきになった。


「まぁ、デルフィルナがいくら大人びてても、幼児なのは理解してたけど、ここまでとは」


 なんですか、姉上。私はちゃんと空気が読める子ですよ?


「うむ、ルッケルスが一層哀れに思えるな」


 父上、貴方までなんですか。


「あなた、でも、これで症状が改善されませんと、さすがに・・・」

「まぁ、次男を作る余裕が無いわけではない」

「まぁ、あなたったら・・・」


 ぼそぼそと両親姉上が秘密会議中。

 とはいえ、私も空気が読める幼児。

 秘密会議の秘密は秘密で、漏らした人間は秘密裏に秘密なことをされることぐらい理解している。

 そんなわけで、聞かないふりをしていたわけだ。


 そんなこんな、翌朝。

 目を真っ赤にして泣きはらした兄上だったものの、家のためには留学が有利なことぐらい解っていたらしく、なぜか痛々しい笑顔で留学を了解していたのだった。

 家族愛にあふれる兄上のために、両親と姉上、そして私の想像画を餞別で渡したところ、再び号泣で喜んでくれたのは思い出深い。


 そんな兄上の留学期間は5年。


 私も幼女を卒業して少女となるぐらいには帰ってきてくれるものと信じる。










 弱点看破の修行は、何も人間ばかりではない。

 近所から忍び込んでくる「猫」や「鳥」も相手しており、日々の修行相手には事欠かない。

 ただ困りものなのは、時々喋る奴が混ざっていることで、アンジーに聞くと、アンジーと同じ系統の獣人や幻獣だそうだ。


 獣人は解るけど、幻獣って?


「はい、お嬢様。幻獣とは、明らかに飛行できない質量の生物で飛んでいるとか、海性生物にあり得ない形状の生物とか、こいつ呪われてるんじゃね?という感じのおどろおどろしい生物などの総称でございます」


 ずいぶんとぶっちゃけた話だった。

 ともあれ、そんな生物にも弱点がある。

 それが解っただけでもプラスだろう。


 この伯爵家は兄上が継ぐし、姉上もいいところに嫁にでるだろう。

 私は、次女だし、いろいろとやらせてくれるみたいなので、人々を救う仕事なんかもしたい。

 国中を旅して人々を救う、ああ、父上や母上のように慈愛と献身の人でありたい。

 もちろん、家の金があるから言ってられる寝言だとぐらいは理解している。

 でも、そんなことに献身できる立場なのだから、それを生かすべきだろう。


 ・・・あれ、この翼のあるトカゲさん。


「お・・・おじょうさま」


 妙になついてきてるねぇ、うん、かわいいかも。

 

 そう思って、私が頭の上に載せると、うれしそうに「キュアー」とかないている。


「・・・おじょうさま。その、翼のあるトカゲですが・・・」

「かわいいよねぇ、家で飼いたいかも」

「・・・本気でございますか?」

「うん!」


 じたばた踊っているトカゲさんを正面に持ってきて見つめた。


「私の名前はデルフィルナ。あなたの名前は?」

「きゅあー?」


 こくりと首を傾げたトカゲさん。

 私はにっこり微笑む。


「じゃ、家にいるときの名前をあげる。あなたのなまえは、南方赤龍王なんぽうせきりゅうおう敖欽ごうきんと名付けましょう♪」

「お、お嬢様!! なんか、もの凄く重々しい名前すぎませんか!?」


 いやー、なまえをつけるってかんがえたら、厨二魂が大騒ぎしちゃって、えへ。

 とはいえ、トカゲちゃんは、きょうからうちの敖欽ちゃんなのです。


「ね?」

『われ、赤龍は、ソナタとの契約を了解する。ソナタ、デルフィルナを主として、我はソナタの守護を誓う。我が名は敖欽、その名の下に』


 ・・・あれ?


「えーっと、敖欽ちゃんって、赤龍なの?」

「きゅあーーーー!」


 うれしそうに鳴く敖欽ちゃん。

 あれー、これってまずいかしら?

 思わずアンジーを見ると、白目をむいて泡吹いて気絶してました。

 やば、結構まずいレベルなのかしら?



 ち、ちちうえーーー、ははうえーーーーーー!!











「・・・はぁ、デルフィルナ、そなたはこう、いろいろと規格外だな」


 非常に疲れた表情の父上は、私の頭の上に乗った敖欽ちゃんを見つめながらため息をついた。


「デルフィルナ、名前、つけちゃったんだ」


 真っ白な顔色の姉上は、頭痛を耐えるかのようなポーズ。


「デルフィルナちゃん、かわいい子を使い魔にしたのね」

「使い魔?」

「ええそうよ」


 曰く、精霊や幻獣を、自分のパートナーとして契約する行為を使い魔契約と言うそうだ。

 で、私の場合、赤龍の敖欽が私を気に入って、契約にやってきた、らしい。


「そうなの、敖欽ちゃん?」

「きゅあー!」


 こくこくうなずいた敖欽ちゃん。

 やっぱりかわいい。

 こんな小さいからだで私を守ってくれるだなんて健気。


「デルフィルナ。幻獣に体の大きさは関係ないぞ」

「え? どう言うことですか、父上」

「うむ」


 幻獣、っていってもいろいろあるけど、龍となると、体の大きさは自由自在なのだそうだ。

 年齢を重ねた龍ならば、山より大きくなることも、敖欽ちゃんみたいに小さくなることも可能だという。


「じゃ、敖欽ちゃんって、大きいの?」

「きゅあぁ!」


 ひゃうっと両手を広げる敖欽ちゃん。

 やっぱりかわいい。なでなでしちゃろう。


「うわぁ、完全に支配下にありますね、父上」

「ああ、本気で完全支配してるな」

「流石我が娘。誇らしいですよ、デルフィルナ」

「ありがとうございます」「きゅあ!」


 私の礼と同期して頭を下げる敖欽ちゃん。

 うん、かわいいなぁ、うん。

 は虫類系がこんなにかわいいとは思わなかった。

 これなら一緒に寝てもいいかも。




 しかし、一緒に寝て後悔した。




 翌朝、私の体の三倍ほどになってぐでーっと寝てる敖欽ちゃんに抱きしめられているところで寝覚め、体の調整が出来ない限り一緒に寝ないことを宣言。

 泣きに泣いた敖欽ちゃんだけど、私も意見は曲げない。


「がんばって体を大きくしないで寝られるようになってください」

「きゅあぁぁぁぁ」










 アンジー教室で、ふつうの使い魔は鳥や猫なのだと教わった。

 で、じつはアンジーも使い魔契約候補だったそうで、いろいろと問題のある使い魔と出会った場合はアンジーが引き継ぐ予定だったという。


 我が家は何かとアンジー頼りかもしれない。


 姉上や兄上も一時期家庭教師で世話になっていたそうで、兄姉妹共々お世話になりました、ということらしい。

 ともあれ兄上、女家庭教師ねらいだったわけか。

 マニアックな。


「じゃぁ、アンジー。幻獣を使役している人って少ないの?」

「いいえ、お嬢様。一応、相当数おります」


 何が一応かというと、基本、幻獣を使い魔にしている人は、もの凄い高いコストをかけて維持しているそうだ。

 もの凄く高価な餌を与えているとか、もの凄く高い報酬を支払っているとか、いろいろ。

 それって、契約は契約でも雇用契約だよね?


「でも、私は敖欽ちゃんとそういう契約していませんよ?」

「お嬢様、だからこそ、特異な例なのです」

「きゅわー」


 精霊や幻獣が勝手に契約にやってくると言う場合があるそうで、今回はそれ。

 敖欽ちゃんは、私が気に入ったからこそ自分で契約にきたとのこと。

 私も敖欽ちゃんすきだし、もしかして、


「相思相愛?」

「きゅわ!!」


 きゅー、っとお互いで抱きあってしまった。

 んー、このひやっとしたかんじが気持ちいい。 


「お嬢様、一応申し上げますが、赤龍は人間と交配可能なので、あまりお気を許さないでくださいね」

「大丈夫よ、アンジー。このこ女の子ですもの」

「きゅわ」


 ぴしっと片手をあげる敖欽ちゃん。

 なにか、こう、いろいろと疲れた表情になってしまったアンジーだった。


「えーっと、お嬢様」

「なに? アンジー」

「赤龍の雌は、こう、とんでも無く希少種ですので、出来る限り秘密にしてください」

「そうなんだ、敖欽ちゃん素敵」

「きゅわ!!」


 父上と母上と姉上、そしてちょっとお出かけ中の兄上と敖欽ちゃん。

 メイドのアンジーやみんな。


 それが私の家族です。

 

ある意味、最強令嬢です。

で、ここまで記憶があれば、自分の起こした事象が理解できそうなものですが、基本、幼児の脳みそを使った記憶確認なので、性的な判定が出来ていません。


という設定ですw

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