放課後
放課後になると生徒は皆帰るのだが、教室には唯・紫姫・雛子・隆平・忍・哲司の6人は残っていた。
6人は外が暗くなるのを待っているのだ。
「やっぱり止めなよ!
もうすぐ5時だよ!!」
命は止めさせようとするが、
6人は聞く耳を持たなかった。
「だから、命ちゃんは嫌なら帰っていいんだよ!
無理やりしなくていいんだから」
唯は命を追い払おうとする。
が、命も折れなかった。
「危ないんだってば!」
「何が?」
「コックリさんが!」
すると哲司が入ってきた。
「澤田はさ、コックリさんが本当にいるって信じてんだ〜(笑)」
「哲司は信じてないの?」
忍が哲司に尋ねた。
「信じてないよ、ただの迷信さ!今日は面白そうだから付き合ってるだけ」
「「いるよ!」」
そんな哲司の言葉に
命と唯は同時に口を開いた。
「コックリさん、いるから…」
唯は驚きもせずに続けた。
「…」
命は驚いて唯を見ていた。
その時、
『4年2組の澤田命さん、
澤田命さん、校内に残っていましたら今すぐ職員室まで来てください。担任が待っています』
と放送が入った。
「へ、吉田先生?」
命は思わずスピーカーを見上げた。
「ほら、呼ばれてるよ!
行っておいでよ!」
「う…うん」
命は唯に追い出される形で教室を出た。
「はぁ、何だろ…」
命は溜め息をついて職員室に向かった。
4年の教室は四階にあって、3年と共用している。
ちなみに3階は5年と2年で、2階は6年と1年が共用している。
そして職員室は1階にあって、4階からだと一番遠い。
今まで呼び出された事のなかった命は、何か呼び出されるのに思い当たる点を思い返していた。
そうしているうちに1階に着いた。
そして職員室に緊張しながらも入り、担任の吉田先生の元へ向かった。
「あら、澤田さん。
まだ校内にいたの?
帰る時間はとっくに過ぎているわ。遅くなったらご家族の方も心配するでしょう?」
「吉田先生、私に何か用事でもあったんですか?」
「はい?」
吉田先生は首を傾げた。
「さっき放送で私を呼び出しましたよね?」
命はまさかと思い、尋ねた。
そして予想通りの答えが返ってきた。
「いいえ、呼び出してないわよ。そもそも放送なんて流れてないわよ」
その言葉に命は上を見上げた。
「騙されたっ!」
命は慌てて職員室を出ようとした。
「あ、澤田さん!」
急ぐ命を吉田先生は呼び止めた。
「?」
「何かあったの?
もしかして、いじめ…とか?」
吉田先生は他の先生には聞こえないように声をすぼめた。
「いいえ」
命は苛立ちを隠し、平然と堂々と答えた。
「…そう。
早く帰りなさいね」
「わかっています」
職員室を出ると、命は全力疾走で階段を駆け上がった。
おそらく邪魔者(命)がいなくなった教室では、コックリさんを始めているだろう。
唯の思うつぼにはまってしまったのだ。
命は手遅れだけはなるまいと、上がる息を押さえて休まず4階まで上りきった。
「はぁはぁはぁ、はぁ、はぁ…はぁ…はぁ…」
命は重い足を動かして教室の前まで戻った。
そしてドアに手をかけた。
開けようとした。
が、
ガン!
何かに阻まれてドアは開かなかった。
「何で!?」
両手でも開けようとしたが、どんなに力を入れても開かなかった。
「結界…?」
命は霊力を手に籠めてドアに触った。
途端、
バチン!
「きゃあ!」
弾かれて廊下の棚にぶつかった。
「…強…すぎっ!」
命は打った腰に手を当てながら立ち上がった。
すると中から声が聞こえた。
「コックリさん、コックリさん、私の話を聞いてください…」
―始まった
ゾワッ!
その瞬間、ただならぬ邪気が教室内に現れた。
結界を張っているが邪気は溢れ出てきている。
「…っ!」
命は中の様子を見ようと、廊下の棚に登った。
教室の中では中央で、
1つの机を取り囲む様に6人は座っていた。
「みんな…」
命は棚から飛び降りてドアを思いっきり叩いた。
ガン!ガン!ガン!
だが中の皆が気付く気配は無かった。
もう一度棚に登ると、
命は唯と目があった。
唯はそっと口角を上げて笑って見せた。
「!」
命は力なく棚から降りた。
どうしようもなかった。
中に入る事も、中にいる人に伝える事もできないのだ。
命は冷たい廊下に座り込み、目を閉じた。
すると中の様子が見えた。
〜 〜 〜 〜 〜 〜
「コックリさん、コックリさん、あなたの名前は何ですか?」
唯は定番の質問をした。
ス…
すると6人が指を置いていた十円玉が平仮名がかかれた紙の上を動き出した。
「く…ら…ま…、クラマね!」
唯ははしゃいだ。
「じゃあさ、2組の担任の名前は?」
哲司が尋ねた。
ス…
「よ…し…だ……か…な…み…」
十円玉はそう示した。
「哲司君!
私たちが知ってること聞いたって仕方ないでしょ!!」
唯は口を尖らした。
「なら、吉田先生の恋人の名前、とかは?」
紫姫は興味津々に尋ねた。
「は…ま…お…あ…き…ら…」
ハッとしたように6人は顔を合わせた。
「「体育の浜尾先生!?」」
全員は驚いた。
「職場恋愛ってやつ〜?」
紫姫は面白がった。
「雛子は聞きたいことないの?」
唯は尋ねた。
「ううん、思い付かないや…」
「じゃあ隆平は?」
「んー、明日は雨か?」
「ちょっ、しょーもない事聞くな!」
ス…
唯が反抗したが、十円玉は動いた。
「く…も…り…」
「よっしゃあ、外で体育だぁ!」
「浜尾先生だね(笑)」
隆平と紫姫は笑い合った。
「さ、そろそろお開きにしましょうか?」
6人は時計を見た。
「あ、もう6時…」
と忍。
「外真っ暗だ…」
と雛子。
「じゃあ、帰ってもらうね」
唯は仕切り始めた。
「コックリさん、コックリさん、お帰りください…」
・・・ガタッ、ガタガタガタ!
すると突然十円玉が震えだした。
「「え!?」」
唯以外の5人の顔が青ざめた。
「…クス、皆は知らなかったんだね。コックリさんはただでは話は聞かないんだよ。質問の数だけ魂をもらっていくの♪」
唯は楽しそうに言った。
5人は数えた。
質問の数は…4つ!
ここにいる6人の内4人の魂が奪われる事になる。
5人は恐怖のあまり十円玉から手を離して廊下に出ようとした。
「だめだよ、まだコックリさんはお帰りになってないんだから…」
唯は笑った。
「おかしいぞ、お前!」
隆平は唯の胸ぐらを掴んだ。
「乱暴しないで!」
ゾワッ!
唯の周りから邪気が放たれた。
バタバタバタン!…
それを吸った5人はその場に倒れた。
「こ、こんなの…
聞いてない…よぅ!」
雛子は泣き出した。
「唯、お前!」
隆平は唯を睨んだ。
「ゆ、唯ちゃん…」
紫姫は虚ろな目で唯を見た。
「ふふふ、みんな死んじゃえ!」
唯は叫んだ。
〜 〜 〜 〜 〜 〜
パチン!
命は目を開いた。
「させない!」
そして命はドアの前に立った。