学校
登校し教室に入ると、
命の元には親友の雛子がやって来た。
「おはよう、命ちゃん」
「雛子、おはよう」
挨拶を交わして命が席に向かうと、後ろから雛子もちょこちょことついていった。
雛子は小柄でショートヘアーで、命についていく姿はまるで雛の様でとても愛らしい。
命にとっては第2のかわいい妹の様な存在だ。
席に着くと、命はふと視線を雛子の足元に向けた。
足元ではヨークシャテリアが尻尾をパタパタと振って、はしゃいでいる。
「おはよう、コルン」
と命は雛子に気付かれない様な小さな声を発し、落ちたペンでも取るフリをしてコルン(ヨークシャテリア)の頭を撫でた。
そして椅子に座り、雛子を見た。
「なぁに?」
雛子はじっと見られたのに気付き、頭を傾げた。
どうやら雛子は命の行動を気にしていないようだ。
ホッと命は息を撫で下ろした。
何故そうするのかと言うと、率直に言ってしまえばコルンも普通の人には見えない存在だからだ。
コルンは雛子を守る、守護霊だ。
守護霊が憑いてる人は滅多にいない。
何故なら、純粋な心の持ち主にしか憑かないからだ。
雛子は嘘が嫌いで正直で純粋な性格のためか、コルンはすっかり雛子になついている。
そのため雛子と仲が良く、見えている命にもなついているのだ。
「おはよう。
ひなちゃん、命ちゃん」
「あ、おはよう。
唯ちゃん、しずちゃん!」
そこへ2人のクラスメイトも来た。
黒髪ツインテールの唯とポッチャリ&ポニーテールの紫姫だ。
唯は何にでも興味を持ち、思い付いた事は直ぐに行動に移すタイプ。
紫姫はマイペースで
嫌いな事には全く関わらないが、好きな事には全力を注ぐタイプ。
4人は同じクラスになってから仲が良く、いつも一緒だ。
今日は唯が何か雑誌を持ってきていた。
「それ何?」
雛子が雑誌を指して言うと、
唯は雑誌が皆に見える様に持ち上げた。
「ジャーン!」
雑誌のタイトルは『学校の七不思議』だ。
「…」
雛子はタイトルを見て直ぐに命にくっついた。
「…怪談話だよね?」
命が尋ねると、唯は頷いた。
「全国の小中学校の七不思議が載せられてるの♪どう?面白そうでしょ?」
唯は楽しそうに話始めた。
命は大体の察しは着いていたが、一応聞いてみた。
「だから?」
「だーかーらっ、私たちも学校の七不思議を探してみようよ!」
「えー!」
楽しいそうに話す唯の言葉に、雛子は固まった。
「えーって、ひなちゃん怖がりすぎ!ってゆーか、お化けとかいるわけないよ」
と紫姫は笑った。
「いる!だから七不思議とかあるんじゃん!!」
それに怒ったのか、唯が口を尖らした。
「…唯ちゃん、探すってどうするの?」
恐る恐る雛子は尋ねた。
「もち、夜の学校に忍び込むんだよ!」
すると隣から、
「冒険みたいで楽しそうじゃない?」
と目を輝かせて紫姫は言った。
「じゃあしずちゃんは
忍び込むから七不思議探しするの?」
「うん!」
紫姫は笑顔で命を見た。
「しずちゃん…」
命は呆れ、頭を抱えそうになっていた。
「とりあえず私としずちゃんは行くとして、2人も七不思議探すよね?行くでしょ?」
唯は雛子と命を見た。
「ねぇ、もし本当にお化けがいたらどうするの?お祓いとかするの?」
と雛子は尋ねた。
「うーん、考えてないなぁ…」と唯。
「てかお化けとかいるわけないし!」と紫姫。
唯は今回は紫姫をスルーして命を見た。
「命ちゃんなら、行くよね?」
しかし、
「ダメだよ、忍び込むのは。
幽霊がいなくても危ないんだから」
命は言った。
「危なくないよ!」
唯は諦めず、雛子を見た。
「ひなちゃんは行くでしょ!」
「え…わ、私は怖いもの苦手だから止めとく」
「ひなちゃん!」
唯が雛子に近寄ると、
コルンは威嚇を始めた。
怯える雛子を守ろうとしているのだ。
「雛子は嫌がってる、唯ちゃん!」
命はコルンが飛び付かないように、雛子の前に立った。
「命ちゃんには聞いてないよ!」
「とにかくダメ!」
命はキツく言い放った。
学校にだって霊はいる。
昼間は大人しいが、
力が増す夜になると暴れだす危険がある。
それが勝手に動く人体模型やピアノの七不思議に繋がる。
命は唯たちを心配して言ってるのだ。
だが、その心配は唯と紫姫には伝わらなかった。
「どうしたの?急に…」
紫姫は必死になる命を怪しんだ。
「…とにかく絶対にダメだからね!」
命は顔を背けた。
「変なの〜」
唯は面白くないといった表情で命を見た。
キーンコーンカーンコーン…
その時チャイムが鳴った。
「ちぇっ!」
唯と紫姫は席に戻っていった。