最後の願い
目覚めた翌日、命は荷物の整理をするため家に返る事になった。
安静にするように言っていた医者は、当初は命の早まった退院に反対していたが、エージェントたちの強引さと国からの補助金を受け取ると、何も言わなくなった。
命はそんな大人の世界を目にし、ただ"汚い"と思うしかなかった。
「お別れだね…」
病室で命は新菜と向き合っていた。
「そうだね…」
今にも泣き出しそうな命に新菜は、
「泣いちゃダメだよ、命ちゃん」
「新菜ぁ」
触れることのできない新菜。
その事が余計に命を悲しくさせた。
「私、新菜がいなかったら…きっと…きっと何もできなかった…。新菜に会えて…よかった…」
すると新菜は優しく微笑み、
「私も、命に会えてよかった。楽しかったよ…」
と言った。
「「……」」
2人とも口を閉じ、少し沈黙が流れた。
「命ちゃん…」
と新菜は沈黙を破った。
「命ちゃん…お願い…」
何をお願いしているのか、言葉にしなくても命は分かっている。
「…」
命は無言で頷き、右手を口元に添えた。
「ちゃんと、お父さんとお母さんにお別れするんだよ?」
と新菜は言うと、目を閉じた。
そんな新菜の頬を、そっと触れる様に左手を上げた。
「清き霊魂よ、貴女の未練は絶ち消えた。成仏なさい…」
と命は囁くように言った。
すると新菜の体は徐々に消えていき、
――"ありがとう"
という言葉だけが残った。
「に…いな…」
ぺタン…
命はその場に座り込むしかなかった。
それから命は家に返された。
家には両親や有紀がいたが、エージェントたちによってガードされていた命は話しどころか顔すらも見れないでいた。
だが落ち込んでいる暇はなく、せっせと必要な荷物を鞄に詰め込んだ。
「お姉タン…お姉タン…」
ドアの向こうから有紀の声が聞こえてきた。
しかしすぐ後に、
「マークⅠに会うことは許可されていない。
リビングに戻れ!」
とドアの前で命をガードするエージェントの声も聞こえてきた。
「でも…お姉タンにあうの!」
と必死で食い付く有紀の声を聞き、命は涙が溢れた。
でも、
――泣いたら…ダメ。
――ダメなんだから!
――約束、したんだからっ!
と自分に言い聞かせて我慢した。
それから荷物を鞄に詰め終えると、命はコンコン、とドアをノックした。
するとエージェントがドアを開け、命の荷物を車へと積み込みにいった。
その際エージェントは命に、
「3分だけだ」
と告げた。
――3分。
その言葉を繰り返す。
その3分は命が望んだ時間。
お願い。
命は頷き、リビングへと入った。
「…」
リビングにもエージェントは1人いた。
それを確認し、ソファーに座る有紀の前に行った。
「お姉タン…」
目に涙を浮かべ、命を見上げる有紀。
「有紀、よかった。元気になったね」
と命は言い、有紀の頭を撫でた。
「ぅ…ふぇっ……お、お姉タン!」
ついに泣き出した有紀。
「もう泣かないの。有紀は強い子なんだから…」
と悲しそうに微笑む命。
それから命はポケットをゴソゴソとさせてから何かを出して、有紀の前で掌を広げた。
「?」
首を傾げる有紀。
「有紀にプレゼントだよ。もう怖いことが起こらないおまじない」
そう言って出したのは、命が小さい頃から大事に持っていた御守りだった。
「…これ、お姉タンのたいせつなもの」
有紀はそれをじっと見た。
「うん。だけど有紀にあげる」
命は御守りに紐を通し、有紀の首にぶら下げた。
「大事にしてね」
「…うん!」
頷いた有紀に、命はいいこいいこ、と頭を撫でた。
とそこへ、
「3分経ったぞ」
とエージェントが言いに来た。
「はい」
命は返事をし立ち上がると、両親を見た。
久しぶりに両親と向き合う命。
両親はどう見ていいのかわからず、表情が歪んでいた。
命は新菜の言葉を胸に、目を反らしたいのをぐっと堪え、真っ直ぐ見つめた。
それから口を開き、震える声で、
「お父さん、お母さん…今までありがとうございました」
と言って深く、深く頭を下げた。
「行くぞ!」
中々動こうとしない命に、エージェントは無慈悲に言い放った。
「わかってます」
命はスッと頭を上げると、笑顔でリビングを後にした。
咄嗟に立ち上がった両親を、エージェントは座らせたのが目の隅に残った。
だが止まることは許されず、命は玄関を出て、車に乗り込んだ。
乗り込むと家を見上げ、
「さようなら…」
と呟いた。
涙が溢れ、次々とこぼれ落ちていく命。
エージェントたちはそんな命を無視し、車を発車させた。
――もう、泣かない。
――泣いてたまるか!
命はそう覚悟を決めた。
それから車は港へ向かい、船を乗り継いで辿り着いた場所。
――鎖国島。
ここで命はとある少女と出会う。
こんにちは、中さんです。
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これにてAPTITUDE LEARN<アプティラ>命編は終了です。
本編APTITUDE LEARN<アプティラ>はPCの方で投稿いたします。
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