鎖国島
「能力って何?」
と命は角田に尋ねた。
すると角田は、
「今から話すことを、落ち着いて聞いてほしい。…いいかな?」
とゆっくりと落ち着きのある声で問い掛けた。
「…うん」
と戸惑いながらも命は頷く。
「…今言った"能力"とは、"物事をなしとげることのできる力"ではなく、"通常の人間にはできないことを実現できる特殊な能力"で、"今日の科学では合理的に説明できない超自然な能力"の事なんだよ。
我々はその力を持つ者を、"超能力者"又は"能力者"と呼んでいる」
「超能力者…私が?」
「そうだよ」
「そんな人間が実際にいるの?」
と驚きながら問い掛けると、
「いるじゃないか、君が…」
角田の強い視線を受け、
ゴックン…
と命は唾を呑み込んだ。
「…驚くのはわかる。今現在、超能力者という存在は公表されていないからね」
と角田は言う。
「他にもいるの?」
「今のところ日本の総人口1億2800万人のうち、1/1000にあたる1万2000人の超能力者がいる…」
「そんなに!?でもそんなの、聞いたことない。公表しなくてもそんなに沢山いたら気付くはずよ!」
すると角田は、
「気付かれないための"鎖国島"だからね。今いる超能力者は全員そこに集められている」
「できるはずない」
とすぐに言い返す命。
だが角田は表情を変えず、
「できる。我々は独自の特殊能力測定器を開発し、能力者の早期発見、勧誘をしているからね。今君にしているように」
と言う。
「…」
命は開いた口が塞がらなかった。
そんな命に角田は、
「どうだろうか、我々と鎖国島に来ないか?」
と手を差しのべた。
「い、嫌よ!」
命は眉をひそめ、態度に出す。
「どうしてもか?」
と角田はしつこく問い続けた。
「嫌ったら嫌よ!!」
と命は言い放つ。
すると角田は溜め息を付き、
「本当は君の意思で鎖国島に行く事を選択してほしかったんだが、仕方ない」
と呟き、雰囲気が変わった。
「もう君の居場所はここにはないんだと言ったら?」
「は?何言ってるの?」
命は眉をひそめる。
更に角田は、
「…君は正式に鎖国島に移り住む事が決定した。今までの生活に戻るのは不可能だと判断が下ったのだ」
と深刻な面持ちで言う。
「判断?」
命は尋ねた。
「君は想定以上のハイパワー能力者だ。このままでは生活に支障が出ると判断された」
「…意味がわからないわ」
「正式に君の身柄を鎖国島で預かる事に決まった」
「何言ってるの?」
命は眉をひそめる。
「これは決定事項だ。君は鎖国島に移り住む。御両親の承諾も得ている」
「は?承諾?」
混乱し始めた命に角田は、
「君は、捨てられた。御両親に」
と留目の一言を告げた。
命は頭の中が真っ白になった。
――お母さんとお父さんが私を捨てた?
――ワタシヲステタ?
命は体角田を睨み、
「そんなの、私は信じない!」
と言ったが角田は用意周到な男だった。
持っていた鞄から1つのファイルを取り出して命に中を見せた。
「…っ!?」
命はそれを見て言葉を失った。
そこには、"身柄受渡書"と書かれていた。
下の方には母親と父親の字で各々に名前と、印鑑に判がなされていた。
「"身柄引受書"もある」
と言って角田は紙を捲って2枚めも見せる。
すると命はがっくりと下を向き、
「あぁ、私…捨てられたんだ…」
と力なく呟く。
受け入れがたい言葉だと思っているが、どこかで納得している自分がいた。
命は大きく溜め息をついた。
いつかは力の事で家を出ることになると、頭のどこかでは考えていた。
ただ、今かと思う。
「理解できたかな?」
と角田が尋ねると、命は無言で頷いた。
「では、通告は終了だ。鎖国島政府は君の身柄の早期引き受けを望んでいる。早速だが、君には今日中に退院し、鎖国島に来てもらう」
そこまで聞くと、命の脳裏に有紀の顔が浮かんだ。
「…あ、有紀は!?」
命はハッと顔を上げ、角田を見る。
頼りたい相手ではないが、この際どうでもいい。
利用できるものは利用しなければ、と命は悟る。
「有紀…妹さんだね。彼女なら無事に退院した」
と角田が答えたのを聞き、命の瞳から涙がこぼれ落ちた。
「良かった、有紀が無事で…」
「悪霊が取り憑いていたんだろう?彼女もとんだとばっちりだな」
と胸に突き刺さる角田の言葉は、今の命には何の効力にもならかった。
ただ有紀が無事で嬉しい。
それしかない。
それから命は涙を拭き、大きく深呼吸をして、
「…私、鎖国島に行く前にしたいことがある」
と言った。
すると角田は、
「何だ?」
と尋ねた。
命は真剣な面持ちで角田を見て、
「お願い………‥‥・・・・・・」




