目が覚めたら、
「…?」
ゆっくりと重い瞼を開けると、
「命ちゃん?起きた?」
と心配そうに覗き込む新菜の顔があった。
「…に、い…な?」
命は何度か瞬きを繰り返し、頭がハッキリとすると、起き上がろうとした。
「…っ」
しかし体は重く、言うことをきかなかった。
「…新菜、ここ、病室?私の?」
「うん、そうだよ」
と新菜は頷いた。
起き上がれないので全く状況が理解できない命。
「…あ、あのね
ガラガラガラ…
「…」
新菜が何か言おうとした時、病室のドアが開かれた。
「失礼しま…って命ちゃん!?目が覚めたの!?」
入ってきた看護婦は目を見開いて驚いた。
「あ…はい」
「よかったわ。命ちゃん、突然3日も意識が戻らなかったのよ!原因不明だったし、驚いたわ。あ、先生を呼んでくるわね!」
と看護婦は興奮気味に喋るだけ喋って病室から去っていった。
「どういう事?」
嵐が去った後の様に静まり返った病室内に、命の声だけが響いた。
命は視線を新菜に向ける。
「あのね、あの日…」
新菜は話し難そうに、命の様子を見ながら少しずつ話し始めた。
―
―――
―――――――
パタン―……
命が床に倒れた後、病院内に広がっていた嫌な妖気が消えた事に気付いた新菜が病室に現れた。
「命ちゃん?命ちゃん?」
と倒れた命に声を掛ける。
こういう時、霊体は物に触れれないので体を揺することができず、もどかしい気持ちが募る。
「ど、どうしよ…」
廊下から騒ぎの声が聞こえ、焦っていると、
ガラガラガラ!
突然ドアが開きサングラスにスーツの男たちが入ってきて、状況を確認すると、
「マークⅠを発見。至急移動を開始する」
と1人の男がケータイで誰かと会話し、倒れている命の体を抱上げた。
「ちょっと命ちゃんをどうするつもりなの!?」
と新菜は思わず声を荒げるが、ただの人間の男に聞こえるはずもなく、命を連れ去られた。
「!?」
それから新菜はすぐに後を追った。
―――――――――
――――
―
「…それから男は命ちゃんをここの病室まで運んで、このベッドに寝かせたの。その後すぐに出てっちゃっわ」
と新菜は覚えている限りを話した。
「…その男、鎖国島のエージェント?」
「たぶん」
と新菜が答えた時、
ガラガラガラ!
「失礼するよ!」
と慌てて走ってきたのか肩で息をしながら医者が入ってきた。
それから4,5分で医者は命の診察を行い、
「明日,明後日までは安静にするんだよ!」
と言って、看護婦と話しながら病室から出ていった。
「…あの騒ぎの正体が私だって事は知らないの?」
と先程までの以前と変わらない医者の対応を見て、命は尋ねた。
「知らないと思うよ。命ちゃんがここまで運ばれてくる時、男たちが廊下の人払いをしてたから。誰にも顔は見られてないと思うよ」
と新菜は答えた。
「だから原因不明って…」
と納得する命に、新菜は少し慌てて話を付け加えた。
「あ!そうそう、これも話しておかないと…」
「何?」
命は新菜を見る。
「有紀ちゃんの病室!命ちゃんがここに運ばれてしばらくしてから見に行ってみたら、元に戻ってたの!!」
「え!?」
それには命も目を見開いて驚いた。
「な、何で?」
「それはわかんない。だけどそのお陰で病院内にあの騒ぎを知る人はいないよ」
と新菜は答えた。
「え…」
命は固まる。
――おかしい…
――窓ガラスまで割れたのに、知れ渡ってないなんて…
再び命は新菜を見た。
「誰も?廊下で騒いでいた人たちは?」
「それがね、急に何事も無かった様に野次馬は解散したの…」
と不思議そうに話す新菜。
「何で…」
命は考えた。
するとその時、
コンコン
とノックがした。
「はい?」
と答えると少しドアを開け、鎖国島のエージェントの角田が顔を覗かせた。
「何ですか?」
身構える命だが、今の命に以前のような追い払える力など残っていない。
白狐に使いきってしまったのだ。
今は霊力充電期間中と言える。
「入っていいかな?」
と角田は恐る恐る声を掛けた。
命は少し考え、
「…あなた1人なら」
と答えた。
「…ありがとう」
と角田は言い、病室に入ってきた。
チラッ…
命は枕元にいる新菜に視線を向けた。
いつもなら客が来た時は出ていく新菜だったが、今回は角田を警戒しているのか命を守ろうと残っていた。
その視線に気付き、角田は話し始めた。
「大体の事は、そこにいるお友達に聞いた様だね」
「「見えるの!?」」
と同時に驚く2人に、
「まさか」
と角田は返し、
「…でも、君が病室で1人の時に誰かと会話しているような声が聞こえてきたからね」
と言い、角田は真面目な面持ちで命を見た。
「それが君の能力、inspirationだね?」
と問う。
「インスピ…?」
意味がわからず?がとぶ命に角田は、
「inspiration、つまり霊感。だよね?」
と説明した。
「霊感…。能力?」
命は眉をひそめて角田を見た。




