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決戦の日

――夜明け前。


命は目が覚めると、病室の鏡の前で髪を1つに結んだ。


「よしっ!」


気合は十分だ。


パチン!


両頬を同時に叩き、更に気を高める。


それから、命は有紀の病室に向かった。


「…命…」


と新菜は呟く。


命の後姿を、新菜は不安気に見送った。



ガラガラガラ…


命は中に誰もいないことを確認すると、ドアを閉め、邪魔が入らないように結界を張った。


結界には他のモノの侵入を阻む以外に防音の効果もある。


これで、物音に気付き怪しむ者はいなくなる。


「さて、と!」


命は有紀のベッドの上で仁王立ちする。


そして、


「人に仇なす悪しき妖怪よ、その身が引き起こした悪行と共に消え去れ!」


光り輝く手を有紀に近付けた。


すると、


「クッ!」


それまで穏やかに眠っていた有紀の体に異変が起こった。


汗が流れ息は上がり、ピンっと頭から爪先まで体を張り腰を浮かせた。


更に体は小刻みに揺れ始めたのだ。


まるで何かにもがき苦しんでいる様に。


「去れ、白狐!」


命は唱える。


「去れ!」


ガシッ!


命は唱えながら、右手で有紀の額をわし掴んだ。


「…ヤ……ロ………ヤ、ヤ、………………ヤメロ―――――!!!」


抵抗する白狐。


有紀から想像もつかない声が発せられた。


「去れ!」


ガッ!


「!?」


突然、有紀が命の手を掴んだ。


「ゆ…き…?」


命の気が一瞬緩んだ。


それを白狐が逃すはずはなく、有紀は爪を立て始めた。


「くっ…」


表情が歪む命。


これも白狐の抵抗だ。


「去れ!」


何度も何度も力を込めて唱える。


「ヤ…ヤ……ヤメ……………」


すると有紀の体は左右に揺れて足をばたつかせ、暴れだした。


「っ…」


命の額から汗が流れるが、


「去れ!」


汗なんか気にせず唱え続ける。


すると今度は、


カッ!!


「!?」


目を見開き起き上がる有紀。


有紀の体は完全に白狐が乗り移っていた。


ガシッ!


突然、有紀の命を掴む力が強る。


そして、


「我から離れろ!」


白狐の必死な声、言葉。


「あなたが離れなさい!」


命は一歩も引かない。


「離れろと言っておる!!」


ふわっ…


「わっ!?」


白狐が叫んだと同時に病室内が無重力空間となり、ありとあらゆるものが浮き上がった。


ベッド、テーブル、機器、タンス、カーテン…


浮いたモノは各々動き出した。


まるで白狐の危機を表しているかの様に。


すると、


シュルルル………


命の足元から応援が現れた。


白い煙りが立ち込め、霊魂が飛び出し有紀に縛りつく。


白狐の動きを封じようとしているのだ。


しかし白狐もしぶとい。


全く離れようとしない。


すると命は、


(…離れないのなら、引きずり出すまで!)


と怪しい笑みを浮かべた。


それから、


「ちょっとだけ我慢してね」


そう言うと、


グサッ!


額を掴んでいない方の手を思いっきり有紀の胸に突き刺した。


「な、何を?」


顔を歪める白狐。


「っ…」


それから命は少しずつ、その手を引き抜き始めた。


ズズ…


「ま、待て…ヤ…ヤメロ…」


焦る白狐。


ズズズ…


まだ引き抜き続ける命。


「うぅ…」


苦痛に苛む白狐。


だが不思議なことに血は一滴も垂れてはいなかった。


「…ぐ…ぅあ……あぁ…あ!!」


急に白狐が叫んだ。


ズブッ!


それと同時に手を引き抜く。


「ああぁぁぁぁ――……」


白狐の声が遠退き、有紀は倒れた。


引き抜いた手は、何かを掴んでいる。


ユラユラと揺れる物体。


それを見て口元を緩める命。


「引き離し完了。後は…」


消滅させるだけ、と口にしようとした時、


「させるかぁ―――――!!」


物体から邪気が放たれた。


「うわぁっ!!」


ドンッ!


命は邪気に吹き飛ばされて、壁に打ち付けられた。


自身の力で浮かぶ物体。


「くっ…」


命は眉をひそめてそれを睨む。


「大妖怪である我が、小娘なんぞに負けてたまるか!?」


ユラユラと揺れていた物体は変形し、通常サイズの狐になった。


「しつこいなぁ…」


ため息混じりに言う命。


額の汗を拭い、立ち上がる。


「死ね、小娘がっ!!」


すると浮いていたモノたちが、命目掛けて飛んできた。


ドガッ!ドドッ!!


「キャ!」


命は間一髪で避ける。


そして、スッと左の人差指と中指を立て、口元に合わせた。


すると、


ブワッ!


命を包み込む霊魂たち。


命の髪は下から吹き上げる突風により逆立った。


それから深呼吸し、唱える。


「人に仇なす悪しき妖怪よ、その身が引き起こした悪行と共に消え去れ!消え去れ、白狐!」


ビッ…


物体が震えた。


そして次の瞬間、


パリッ…ピッ…ピキ…ピキピキッ…


まるで壁の様に亀裂が入っていった。


「消え去れ、白狐ぉぉぉ!!」










……パァン!


一瞬で。


鏡が割れた様に一瞬で割れ、欠片は砂のようにサラサラと流れていった。










ガッタン!…ゴトン!


次々と浮いていたモノがあちこちに落下し、


最後には、


……ガッシャァ――――ン!!


窓ガラスが砕けた。


命の力に耐えられなかったのだろう。


「…はぁ…はぁ…はぁ――っ!」


呼吸を繰り返し、深く息を吐き出した。


ざわ…


「?」


安心したのもつかの間、廊下が騒がしい事に気付いた。


「何?何か物音が…」


「中に誰かいるのか?」


「バレたの?」


驚く命。


戦いの途中で結界は消え去っていたのだ。


更には窓ガラスまで割れてしまい、騒ぎは大きくなってしまった。


「どうしよ…」


命は室内を見渡す。


散乱する機器や家具。


説明も言い訳もしようがないこの状況。


それでも何とかしようと一歩を踏み出したとき、


クラ…


「!?」


頭がボーっとなり、視界が掠れた。


フラッ…


斜めになる視界。


ドサッ…


命はその場に倒れた。



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