第1話 忍び寄る影
はい、心機一転新連載始めました。
医療や警察機構の仕組みなど、素人ですので突っ込みどころは多々
あるとは思いますが、何卒大目かつ温かい目で見守っていただき
ますよう、お願いいたします。
2011年 冬 横浜……
― 岩崎外科病院 ― pm1:00
【診療台のベッドに横たわり、点滴を受けている一人の男。彼の名は高階 直人/28歳、
元神奈川県警の特捜課に所属していた刑事で、現在は港町警察署捜査一課に属して
いる。かなりの切れ者ではあるが、どこか退廃的であり、破滅思考のある人物で
ある。】
岩崎/どうだ、気分は?
直人/ああ…、悪くない。
岩崎/そりゃ良かった。
【直人にそう声を掛けているのは岩崎 雪宗/30歳、外科医師で直人の親友でもある男。
以前は大学病院に勤めていたが現在は独立し、その頃から一緒に仕事をしていた
看護士の神矢 結衣/21歳と共に小さな個人病院を開いている。】
直人/悪かったな、こんな時間に…。休憩時間だったんだろう?
岩崎/まあ、いいさ。それより、あんまり無理はするな。お前は普通の体じゃない
んだ。
直人/無理はしてないさ。
岩崎/どこが? さっき、マジでやばかったんだからな!? 脳圧が上がり過ぎたら
危険だって、あれほど言っておいたろう!! それをお前は……。
直人/すまん…。
岩崎/俺に謝られたって、仕方ないさ。
直人/そうだな。
岩崎/なあ、直人。やっぱりどう考えても不可能だよ、その体で刑事の仕事を
続けるなんて。お前の病気は、
直人/脳腫瘍…、しかも悪性で摘出も不可能。耳にタコだぜ…。
岩崎/直人…、俺は、
直人/お前の言いたい事は解かる…。だが、俺はまだ刑事を辞めるわけには
いかないんだ。“あの男”と、ケリを付けるまでは。2年だぞ!?
この腕をまともに動かせるようにするのに、2年もかかった!やっと、
やっと現場に戻れたんだよ!! それを、お前は無駄にしろって言うのか!?
岩崎/そうは言ってない。いや、言ってることになるのか…? とにかく、もっと
大事にして欲しいんだよ!!お前自身を。
直人/…………。
岩崎/俺だって、お前がどれだけ努力して刑事の職に戻ったか、それを知らない
訳じゃない。ほとんどの医者は可能だと言っていたし、事実…、お前のその
右腕がそこまで回復したのは奇跡と言っていい。勿論、お前の死にもの狂いの
リハビリの結果だがな。それは傍で見ていた俺が…、一番良く知ってる。
だけど、これもまた現実なんだよ!
お前の体は不治の病に冒されて、いつ、どうなるかも解からない…。
その現実を、まずキッチリと受け止めて欲しいんだよ、お前自身に!!
直人/…………。
岩崎/逃げるなよ、直人。現実を受け止めなきゃ、何も始まらない。無茶をして、
どうにかなる病気じゃないだろう? 脳腫瘍は。
直人/岩崎…。
岩崎/約束したろう? 刑事でいさせてやるって。
俺はちゃんと覚えてる…、あの日の約束を。
だから、そのためにもお前には…、キッチリ俺の言いつけを守ってもらう。
主治医の指示は絶対だ、いいな?
直人/…解かった。
岩崎/よし。じゃあ…、まずは携帯出せ。
直人/えっ?
岩崎/署に連絡するんだよ。今日はこのまま絶対安静!
直人/ま、待てよ! 俺、仕事抜けて来てて…、
岩崎/そんな事は解かってるよ。パトロールの途中で頭が痛くなって、でも仲間の
手前薬も飲めなくて、ギリギリまで我慢して、
昼休み利用して抜け出して来たんだろう?
直人/ご明答。
岩崎/だからさ、なんでもいいから理由作って…、今日は休め。
今の状態で仕事に戻るのは絶対に無理だ。
直人/…厳しい事をサラッと言ってくれるね。
岩崎/なんなら、俺が電話してやろうか?
お前の所の課長さん…、俺も知らない訳じゃない。
或いはあの人なら、全てを話しても…、
直人/駄目だ!!信用できん…。俺は、誰も信じない…。お前以外にはな。
岩崎/直人…。
【ハッキリと感じる直人の拒絶…、岩崎はそれ以上掛ける言葉を失っていた。】
どうも、作者です。
昔書いてたものを起こしてるので、ちょっと文体がシナリオっぽいです。
こんな感じで進んでいくと思いますので、どうぞお付き合い下さいませ。