捜してる…。
桜の花が咲き乱れ、そよ風に舞う。
陸は結局、1ヶ月帰ってこなかった。
もうじき私の23歳の誕生日。
今年は、タケル先生と二人でいられるのかな?。
さすがに毎日の診察室LOVEは1ヶ月経つとなくなり、週2日ぐらいのペースになる。
最近、暖かくなったせいか粒コーンスープを作るのを止めた。
そろそろ陸のいない生活に慣れてきた感じがする…。
人間、日が経つにつれ、今自分のいる場所に納得する。
そんなある日、思いもよらない珍客がくる。
「はい。」
玄関のドアを開けると、陸の彼女、百花が立っていた。
「お姉さ〜ん!!。」
お姉さん!?あっ、そっか。
「おっと!。」
百花はいきなりアキに抱きつく。
「ふえーん。」
泣いている?。
「どうしたの?。」
百花は鼻をすすりながらアキの顔を見る。
「ふぇ…れないんですぅ。」
「へ?。」
「陸と、連絡が全然とれないんですぅ。」
「…。」
「もう、1週間になるんですぅ。ぐすんっ。」
「そ、そうなんだ…。」
「お姉さんなら知ってるかなぁ…と思って。迷惑かな?と、思ったんですが来ちゃいました。」
私、お姉さんじゃぁないんだよな…。
「うー、ごめんね。私にもわかんない。」
「そうなんですかぁ?、分かりました、ありがとうございます。」
「えっ?。」
なんて淡々とした子なんだろう。
百花は、わかんないの一言であっさり帰っていく。
ありゃぁ気づかんわ…私と陸が他人だって事。
うらやましい性格してんな…。
感心する。
陸、どこに行ったんだろう?。
今、何してるのだろう?。
陸のいない生活に慣れてきた感じの今、突然の陸の事…。
気にならないわけがない。
けど…もう気にするのはよそう…私には、もうカンケイない。
カンケイない…。
気にするのはよそう。
そう思っていたのに、手は言葉と裏腹にひかるの電話番号を押していた。
「ハロー。ひかる?。」
『どしたぁ…。』
「あのね、この間ね、陸の彼女が連絡取れないってウチ来たの、あんた知らないかなぁ。」
『陸ぅ、アキんとこからウチきてさぁ、2日で追い出してやったから、それからの事はしんなぁーい。ネットカフェで寝泊りしてんじゃぁない?。』
はぁ…、このノー天気淡々従姉弟。
どうして私の周りはこんなんしかいないんだか…。
「そうか、ありがとぉ。」
『連絡あったらアキんとこ帰れって言っとくよ。』
「んなこと言わんでよいっ!!。」
『がははっ。』
がははって、あんた…。
「陸、どこ行ったんだろう?。」
うっ…、気になる。
もうぉ〜やだぁ。
百花が来た次の日から昼休憩の時間は大学、仕事帰りはインターネットカフェを捜し歩く。
まさか殺されてないだろうな?そんなありもしない事も考えながら、陸を探した。
陸を探し続けたある日。
「ん?。」
なんかお腹が痛い…生理でもくるのかなぁ…。
急に、下腹部が痛み出した。
(今日はこれで止めておこう。)
引き返してアパートへ帰る。
しばらくすると腹痛は言いようのない吐き気に変わっていく。
「うっ。気持ち悪い。」
アキはトイレに駆け込んだ。
「げほっ。はぁ…はぁ…。」
水道の蛇口をおもいっきりひねり水で口をすすぐ。
最近まともにご飯食べてないからなぁ…。
胃がおかしいのかなぁ…?。
排水溝に流れていく水、奥ふかく、アキはハッとし鏡の中の自分を見た。
「まさか…?。」
でも…。
まさか…。
もうしばらく待ってみよう…。
わけが分からない事を考える。
毎日わけもわかんないまま通り過ぎていき、気づかないうちに4月15日の自分の誕生日も過ぎていた。
朝、気分が悪いと嘘の休暇をもらう。
タケル先生とは、相変わらず週2日のペースで続いている。
朝一、ドラックストアに走り、妊娠検査薬を買いアパートのトイレに駆け込む…。
時計の秒針のすすむ音がやけに大きく聞こえる。
後少し、後少し…。
結果は…。
落胆、この二文字。
頭を大きなハンマーで殴られたような、そんな感じ…。
どうしよう…。
頭ん中で赤ちゃんがフォークダンス踊ってる。
そんなのんきな場面見てる暇じゃないよ…。
「陸ぅ…どうしよう…。」
私、タケル先生の子妊娠しちゃった。
走って陸に相談したい気分。
けど、今はもう陸はここにはいない…。
今は、タケル先生より陸に会いたい…。
私は、タケルより陸に会いたかった。
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希凛希