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陸の決心、アキの葛藤。

 また親父と喧嘩をして家を飛び出した。

大学の話と違って今度はどうしても曲げられない。


 …「なのとは結婚できないっ!。」

「なんでだっ!!。」

「分かってんだろっ!。」

「あの子は許さんっ!!。」

「別に許してもらおうなんて思ってないっ!。」…

 

許してもらおうと思ってた気持ちが爆発し、出た言葉。

こんなんじゃアキちゃんが可哀想だ、と思いながらも、

「もう、帰るもんかっ、こんな家っ!。」

門を蹴飛ばし表札を睨んだ。

こんな家。

「はぁ、もぉっ!!。」

振り返った陸の前になのかが立っていた。

「りっくん?。」

不思議そうに陸の顔を見る。

「なの…。」

「今から帰るんだ。」

「あ、うん。」

「良かったぁ、間に合って。」

「どうした?。」

なのかはニッコリと微笑むと背伸びをし陸にそっとキスをした。

風に靡くなのかの柔らかい髪が陸の頬を触れる。

(あ…。)

保育園の頃、なのかにキスをされた時の事を思い出す。


「私、待ってるから…。」


『僕が父さんみたいにお酒が造れるようになったら、なのちゃんお嫁さんにするから待ってて。』

教室のピアノの後ろでした約束と気持ち良くていつも触ってたなのかの髪の毛。

幼少の頃…。


「…。」


なのかは大切にしている約束。


「大学卒業するまで待ってるから。」


陸は思い出しもしなかった、ただの子供の約束。


「なの。」

「ん?。」

「あの約束は、ただの子供の頃の約束だよ。」

「…。」

「俺には幸せにしたいひとがいるから。」

「知ってるよ。」

「知ってるなら、俺のことはもう…諦めて。」

「りっくん。」

涙が薄っすら浮かぶなのかの瞳。

「ごめん、じゃぁ…。」


 

 俺はアキしかいない。

アキが俺のすべて。

酒が造れなくなったとしても…アキちゃんとだけは離れたくない。

もう、あそこには戻らない。

もういい…と思いながら、走って大好きなアキちゃんがいるウチに向かう。

「はぁ、はぁ、はぁ…。」

クマのキーホルダーがついた鍵でドアを開ける。

カチャッ。

「ただいま。」

部屋を見渡す、アキちゃんはいない…。

「あっ、そうか仕事だ。」

綺麗に整頓された部屋。

アキちゃんのいい匂いがする部屋。

俺のウチはここだ。

そう確信する。


 

 仕事を終え、アキはコンビニで弁当をひとつ買い家路を歩く。

3月に吹く風はとても強い。

この風と一緒に飛んで行ってしまいたい。

けど、何処にも飛べない。

陸、帰ってたら、陸になんて言おう。

こんな事、言ったらまた喧嘩になるんだろうな?。


『私達…終わりにしよう…。』


アパートを見上げると電気がついている。

アキは大きく深呼吸をし、階段をコツコツと音をたてずに静かに昇る、そして…。

「ただいま。」

「おかえり、アキちゃん。」

「…。」

コタツの上に並べられた陸が作った晩御飯。

「手、洗っておいで。」

ニッコリ笑う陸に、涙がでそうなアキ。

「あ、うん。」

陸に気づかれないようにアキは頷きバックを置きコートを脱いで、洗面所に向かう。

言えない…言えば陸を失う…。

言えば、また一人になる。

もうこんなに好きな人できない。

やっぱり…。

でもこの先私は…。

自信がない。

心の中で葛藤する。

アキ…しっかりね。


 カチャッ。

「いい匂い、美味しそうぉ〜。」

「でしょっ?。」

やっぱり、陸を失うなんて考えられない。

「いただきまぁ〜す。」

私はなんて弱いんだろう…。

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