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大袈裟に云えば四面楚歌。

 ひかるの結婚式は3月3日に決まる。

地元の神社で式を挙げるらしい。

めでたいのにアキはブルーだった。

アキはひかるの友人で、陸はひかるの従弟なので当然式に出席する。

それはまったくもって問題はないのだけど、陸はひかるの従弟だから当然陸の父親も結婚式に出席する。

気まずい…すごく気まずい。


 そうこう考えてるうちに、3月3日は来た。

式は昼過ぎからということで、アキは幸子と一緒に朝早い新幹線に乗り向かう。

陸は昨日のうちに一人先に実家に戻った。

新幹線で向かう中、極度の緊張がアキを襲う。

「アキ、大丈夫?。」

顔が真っ青、昨日眠れなかった。

「う、うん。」

「席離れてるみたいだから大丈夫だよ。」

「うん。」

気持ち悪い…こんな気分初めて。

向こうに言ったら陸とは話せないし、一緒にいることできないだろうな。

少しの辛抱だよ…今日はひかるの晴れの舞台だから、笑顔、笑顔でいないとね。

 

 久しぶりに訪れる陸とひかるの産まれ故郷。

ほんとにここは違う世界みたい。

「すごいね、なんか建物だけ江戸時代みたい。」

「私もこの間来てびっくりしたよ。」

「アキ、顔色だいぶ良くなったんじゃない?。」

ここの町並みは、私にすごく優しい。

癒してくれる、そんなフインキ。

「そう?。」

「行こうか。」


 ひかるとボブ(ひかるの旦那の名前)が式を挙げる神社は陸の実家を通り越してすぐの所にある。

格式がある神社らしく地元の人々はここでみんな結婚式を挙げるらしい。

タクシーを降り、木々に挟まれた細い階段を登る。

花嫁になる者はここの階段を歩いて登って行かなければならないらしい。

 

 受付を済ませ、座席表で自分と陸の座席を確認してみる。

離れている淋しさと、安堵の気持ち。

(あ。)

陸の席の隣に書いてある榊原なのかと言う名前を見つける。

陸のテーブルを見つめるアキ。

スーツ姿の陸…初めて見る…。

やんちゃ坊主のような陸が少し大人っぽく感じる。

隣にいる着物姿の、なのかという子…仲良さそうに話してる二人にアキの胸は締め付けられそうになった。

ある少ない人達、うんん、ほとんどの人達が私と陸の関係を知らない。

ここにいる私と陸はみんなからみれば本当に赤の他人なんだ。

あの子は知っている私と出逢う前の陸。

私の知らない陸。

歓迎されない私。

ボブと入場する幸せそうなひかるの姿…涙が溢れる。

「綺麗、ひかる。」

「うん。」

綺麗だよ、ひかる。

でもごめんね…ひかる。

私、ひかるの一番幸せなこの時に違う事で涙を流そうとしてる。

なぜか孤独に襲われる。

背中がすーと寒く感じる。 


 2時間あまりの式にまったく集中できなかった。

陸とは今日1度も話しをしてない。

ここは私の知らない世界…みたい。

大袈裟に云えば、四面楚歌。

陸の隣には陸のお父さんとあの子がいる。

3人を囲むようにしている親戚?の人達。

陸のお父さんはアキに気づいているが気づかないフリをしている。

近くにいて遠く感じる陸。

笑ってるフリして泣いてる私。

 

 「今度はおまんらの番だな。」

バシッ!!。

「えっ?。」

「嫌だぁ、おじさん。」

「なぁ、陸。」

「ははは。」

親戚に冷やかされ苦笑いする陸は少し遠くにいるアキを見た。

陸…。

淋しそうな顔でぼーっとアキは陸を見ている。

(あっ。)

陸が自分を見ていることに気づいたアキはなぜか不意に陸から視線をそらした。

「幸子、私トイレに行って来る。」

慌ててその場から立ち去ろうとする。

「うん。」

どうしよう…私、露骨に目をそらしちゃった。

「ごめん、俺ちょっとトイレ。」

「えっ、りっくん?。」

アキの態度が気になり陸はアキを追いかけた。

そんな陸をなのかは見つめる。

 

 溢れ出しそうな涙。

「嫌だ、こんなとこで。」

トイレに駆込みハンカチで顔を押さえる。

鏡の中の自分。

真っ赤な目と震える唇。

どうしようこんな顔。

がんばれ、アキ。

思いっきり鼻水をすすり、自分に気合を入れる。

がんばろう、アキ。

大きく深呼吸をし、笑顔を作りトイレから出たアキを

「アキちゃん。」

陸が呼んだ。

「…。」

まさか追いかけて来たなんて思わないアキの顔を覗き込む陸。

「アキちゃん、どうして目そらしたの?。」

怒ってる?…不機嫌そうな陸の顔。

「えっ、何言ってんの?。」

アキは陸の体を後ろに押し、歩き出す。

「目、そらしたろ?。」

「そらしてないよ。」

「そらした。」

「…。」

「アキっ!。」

陸はしらばっくれスタスタと歩くアキの腕を強く掴んだ。

「痛いっ、痛いよ、離して陸。」

「嫌だ。」

こんなとこでこんなことされたら私…また…。

必死で平然を装う。

そんな二人を遠くで見ていたなのかは

「りっくーん。」

走って二人の所にかけて来た。

「なの、どうした?。」

なのかはアキを見てニッコリと笑い、頭を下げる。

「みんな行くって。」

「あ、うん。俺はいいから先行ってて。」

アキは陸の手を思いっきり振り払い

「早く行かないと…ね。」

ニッコリ笑う。

「アキ…。」

「早く行きな。」

「行こう、りっくん。」

「じゃぁ、あ、後でアキちゃん。」

なのかに手を引っ張られ歩く陸の後ろ姿をアキは見つめた。

「アキ、陸の隣にいるあの子誰?。」

遅いのを心配して探してた幸子が陸となのかを指差し聞く。

「陸の将来の奥さん。」

「はっ?。」

「さっ、行こうか。」

「ちょ、アキっ。」

いつか、私と陸はこうゆう風に背中を向けて歩いて行かないといけないんだね。


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