右手。
仲直りしてしばらく平穏な日々が続く。
大学4年になると今までとは少し違って、卒論とか…(私にはよく分からないけど)色々あって忙しくなるからと、外で初デートと言うものをしようと二人で計画する。
共同生活から気持ちが通じ合い同棲と言う名前に変わった私達の生活の中で気づくと二人で外に出かけたという事がない…。
元々ウチの中でまったりしてるのが好きな二人だから、そんな事気にもしなかった。
いや、出かけようと思いもしなかった。
コースはなぜか動物園?…。
なぜだ?。
陸の大好きな ○より男子 というドラマで、動物園デートしてたからだという理由(陸が決めた。)
定番だそう…?。
「ふーん、陸、付き合った子といつも動物園に行くんだ。」
「は?、行かないよ、動物園なんて…。」
淡々という…今、定番…と言わなかった?。
「じゃぁ、なんで私とは動物園なワケ?。」
しかもドラマの影響…。
「いや、意味はない。ただなんとなく…。」
えー、なんとなく?、なんとなくかい?。
「ふーん、まぁいいや。」
初デートがただなんとなくかぁ…。
まぁ、付き合う前に衣食住を共にしてるからなぁ…初々しさなんてないよなぁ…。
「どうしたの、アキちゃん?。」
「うんん。」
少しの納得いかない気持ちを胸に抱え(しつこい?。)日曜日はやって来た。
陸を起こし、いつものように二人で、パンと粒コーンスープを飲む。
これがないと二人の朝はぱっとしない。
最近、私の仕事が休みの日には大学へ行くため早く起きる陸が粒コーンスープを作ってくれる。
あの時の喧嘩のおかげ?で、とても上手くいっている。
「じゃーん!!。」
朝、早起きをして作った弁当を公開。
「うわぁ、これアキちゃんが作ったの?。」
「そうっ、玉子焼きでしょう…。」
わざわざ指を指して説明。
「すごい。でも、見せてくれるんなら向こう着いてからのが感動がすごかったかも…。」
「あっ。」
いいんだ、いいんだ…。
アキは落ち込んで弁当箱に蓋をする。
「あ、ごめん、ごめん。」
「ふんっ、いいんだ、いいんだ。」
「ごめんってばぁ〜。」
「さ、行こう。」
「あっ、待って、アキちゃ〜ん。」
陸の大馬鹿者、動物園で馬と鹿に蹴られちゃえ!。
私、嬉しくて嬉しくてしかたなかったのに…。
よく考えたら私は高校に上がってすぐ、父親の借金を返す為にバイトをしていたから彼氏が出来てもデートというものを数えてみると片手もしたことがない。
思えば、暗〜い高校生活。
「アキちゃん、そのスカート可愛いね。」
いつもジーンズの姿のアキ。
「えっ?。」
気づいてくれたの?、今日の為に買ったスカート。
「アキちゃん、顔は女らしいからスカートのが似合うね。」
顔は…もうっ、一言多いっ!。でもすごく嬉しい。
「あ、ありがとう。」
陸とは色んなとこいっぱい行きたいな。
映画とか、温泉とか、遊園地とか…いっぱい、いっぱい行きたいな。
「ねぇ、アキちゃん。今日だけじゃなくてさ、これを機にいっぱい色んな所行こうね。」
「陸…。」
アキの顔を見て優しく微笑む陸。
陸…私と同じ事考えて…。
自分に向かって差し出す陸の右手。
アキはその陸の右手をぎゅっと握り締め、陸もアキの手を握り締める。
「行こっ、アキちゃん。」
「うん、陸。」
「動物園着いたらすぐ弁当食べよ。」
「えっー?。」
「早く食べたい。」
「もぉー。」
陸、この手、離さないでね。
私、離さないから…。