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不安的中ー父、出現。

 覚悟…。

なんの覚悟だろう?。

フツー、女の親が乗り込んで…。

陸のお父さん、どんな人なんだろう?。

ひかるはなんでその事を陸に言わないで私に言うんだろう?。

分からない。

陸のお父さんはほんとうにウチに来るのかな?。

来るんだろうな。

不安…。



 「こんにちは、おじさん。」

「おー、なのちゃん。」

「りっくん、おばさんの13回忌に帰ってくるの?。」

「なんでぇ?。」

「久しぶりにりっくんの顔が見たいなぁ…と思って。」

なのかは照れくさそうに言う。

「なのかちゃんそんなに陸の事好きか?。」

「うん。」

「おじさんが連れてきてやるから、待ってろ。」

「うんっ、おじさん。」

 

 なのかは陸の幼馴染で榊原さかきはら酒造の娘。

陸の父親となのかの父親は昔からよき友良きライバルだったが、去年の夏、なのかの父親が亡くなり

榊原酒造はなのかの兄、信司が代表を努めている。

どうやら最近経営が上手くいってないらしい…。


 

 最近、仕事に集中できない。

たまにミスをする。

陸の父親はウチを探しだして本当に来るのかな?。

そんな事陸には言えないし聞けない。

 

 「アキちゃん、最近元気ないね。」

「え、そう?。」

「女らしくてなんか変。」

女らしくて変?。

こいつ、やっぱり私を女としてみていない…。

「クリスマス…どうする?。」

アキは何気に聞いてみる。

「クリスマスかぁ…どっか行く?。」

どっかって、お母さんの13回忌に帰らないつもりなのかな?。

「冬休みは実家に帰らないの?。」

「アキちゃん、帰るの?。」

「うんん、帰らない。」

こっちに来てから帰ったことないし、帰りたくない。

いつも、現金書留と母親の短い手紙で会話してる。

「俺も帰らないよ。」

「そう…。」

「そういえばもうじき1年だね。」

「うん。」

1年かぁ…早いなぁ…また1つ歳をとってしまう。

私は、陸より3つも上なんだ…。

大きいよなぁ、3つって。

ぐすんっ、なんか色々考えると切なくなってくる…。

TVを見る陸の顔。

私のが早くお婆さんになるんだ…。

 



 あまりの忙しさに忘れかけていたあの不安は、的中。

ある日曜日の寒い朝、アキのウチのチャイムが鳴った。

「はぁーい。」

カチャッ。

開けたドアの向こうには体格のいい中年のおじさんが立っていた。

「安藤アキさんのお宅かね?。」

「はい…そうですが?。」

「あんたがアキさんかね?。」

「はい、あの?…。」

「ちょっと、上がらせてもらうよ。」

「えっ!?。」

え、誰、この人?。

中年のおじさんは部屋をキョロキョロ見渡し、陸が寝ている部屋の引き戸を開けた。

「おいっ!、こらっ、陸起きろっ!!。」

(えっ、陸のお父さん?。)

忘れてた…。

聞き覚えのある声にびっくりし飛び起きる陸。

「わぁ、な、なんで親父ここにいるんだよっ!!。」

「それは、俺の質問だっ、なんでこんな所にいるんだっ!!。」

すごい剣幕で怒鳴る陸のお父さん。

「…。」

「いいからここに座れっ、あんたもだっ!!。」

「は、はい。」

アキと陸はそそくさと座る。

「これはどういうことだ、お前達同棲してるのか?。」

「…。」

俯くアキ。

「そうだよ。」

陸は睨み、答える。

「俺は、女と同棲するために仕送りしてるんじゃない。」

(えっ、仕送り?。)

仕送り止められたんじゃ…。

アキは陸の顔を見る。

「…。」

「まさか、彼女の親の借金を返すために使ってるんじゃないだろうな?。」

な、なんでその事を…?。

「えっ?。」

陸はアキを見た。

「君の親はリストラされギャンブルにはまって多額の借金をしてるそうじゃないか。」

「…。」

「アキちゃん?。」

知られたくなかった…陸には知られたくなかった。

「はい。」

陸は前、アキがある手紙を見ておかしかった事を思い出す。

「あ…。」

「君は、こいつが安西酒造の息子だと知ってこんな事をしてるのか?。」

お金目当てって言うこと?。

「それは違う!!俺がマージャンで有り金すって仕方なしにアキちゃんのウチに居候させてもらってる。」

陸は必死に弁解するがアキは何も答えない。

違うと一言いえばいいのに、

「…。」

「陸、お前は外に出てろ。俺は彼女と話する。」

「親父。」

「陸、大丈夫だから外に行ってて。」

心配そうな陸の顔、アキは少し微笑むと陸を外へ出した。


 「陸が言ったことは本当か?。」

「はい。でも、仕方なしではありません。私が一緒にいたいと思ったからここに置いてます。」

物怖じしないで真っ直ぐ目を見て答えるアキ。

「…。」

陸のお父さんは険しい顔で何かを考えている。

「今はもう、あいつがここに住む理由がない。」

「そうですか?。」

「こんな事は言いたくないが、もしこのまま陸と同棲していて結婚を考えるような事になっても、俺は君を安西家の嫁として迎える事は出来ない。」

「…。」

「陸には、陸に合った嫁、安西酒造に合ったなのかと言う娘を嫁と決めてある。」

陸に合った嫁、安西酒造に合った嫁。

陸にはもう決まった子がいる…。

その言葉がアキを傷つける。

「…。」

「その事だけは覚えておいてくれ。」

「…。」

「邪魔したな。」

「いいえ。」

あの時感じた遠い世界の人。

陸は私とは住む世界が違う人。

『とにかく、覚悟しといた方がいいよ。』

ひかるの言った覚悟の意味が今、分かった。

ひかるは私に、陸のお父さんが今言った事を、覚悟してと言ったんだ。

結婚なんて考えてもいなかった。  

ただ、一緒にいたいから…。

そばにいたいから一緒に暮らしてるだけ…私はただそれだけだった。

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