story2:平穏な日々と助言
story:2.大切な人編です。
陸との共同生活を再開して、何もなく日々は流れる。
季節は12月。
実家にはまだ帰っていない。
増えた金額。
相変わらず父親の借金を郵便書留で送っている。
もうじきクリスマス。
今年は陸と二人で過ごせるんだ。
そんな事を考えてるとイヤな事全部忘れられる。
陸は一緒に暮らしていくうちに、冷めた口調から明るい優しい口調に変わっていく。
これがほんとの陸なのかな?。
あの事を除けば本当に幸せなのに…。
あー、もう、イヤな事は忘れよう。
チチチ…。
チチチ…。
あーもう、朝だ。
「んんー、早ぁ〜い。まだ寝たぁい。」
ボサボサの頭をかきながら起き上がり、襖を開ける。
「陸ぅ、朝だよ。」
「ん。」
気持ちは通じ合っても、陸と私は前と同じように違う部屋で寝ている。
当たり前か…。
あの時から、陸は私に手を出してこない。
大切にしてくれるんだ、という幸せ感と、少し物足りない不満感…。
陸、我慢してるんだろうな?…。
あ、それともまた一緒に暮らしていくうちに女として意識しなくなったのかな?。
どうしたら女らしくいられるんだろう?。
んー、こんな事言ってると怒られるか?。
(陸の寝顔、可愛い。)
「陸ぅー。」
「うーん、あと少し。」
もうっ、ほんとに起きないんだからこいつ。
「こらっ!。」
陸の布団をめくるアキ。
「さぶい…。」
「起きてよ。」
毎日こんな調子。
アキは起きたまんまのジャージの上にエプロンをつけ、粒コーンスープを作りはじめた。
誰かの為に作る朝食。
日々上達する料理の腕。
「陸、スープできたよ。」
あ、まだ寝てる。
「陸ちゃん、起きて。」
「んー、アキちゃん起こして。」
手を伸ばす陸。
「もぉー、ほんとに甘えん坊だなっ!!。」
「はやく。」
エプロンを取り、アキは陸の腕をひっぱる。
「うんっ…重いぃ…。」
(えっ?。)
ドンッ!!。
「いったぁ〜い。」
ひっぱるアキの手を陸がひっぱり返し、アキは陸の身体の上に倒れ込んだ。
「…。」
陸の心臓の音が聞こえる。
トクン… トクンッ…。って。
「アキちゃん。」
「…。」
サラサラしたアキの長い黒髪が顔にかかってくすぐったい。
「アキちゃん、いい匂い。」
「えっ?。」
「なんか…。」
「ん?。」
「なんかさぁ…。」
アキは顔を上げ、陸の顔を見る。
「何?。」
「うんん、なんでもない。」
なんか…したくなっちゃった…。
「変なの。」
「さっ、起きよ!。」
「うん。」
陸は起きあがると、そのまま洗面所に入っていく。
(どうしたんだろ?、陸。)
アキは洗面所のドアを見つめる。
「まっ、いっか…。さぁ、仕度、仕度。」
♪you've got a mail♪
(ん?、珍しい朝からメールだ。)
はろー♪ 久しぶり!!。
今日、昼休憩の時間ランチしよ!。
ちょっと話がある。
13:00に プぺで…。
ひかるからの久しぶりのメール。
ちょっと話がある。
なんだろう?。
「陸ぅ、食べるよ。」
「おー。」
PM13:00.
ひかると待ち合わせのプぺで待つ。
待ち合わせの時間を少し遅れてひかるは来た。
「ごっめーん!!。」
「大丈夫。」
「今日に限って忙しくってさっ。」
「そうなんだ。」
ひかるはアキと一緒の歯科衛生士で専門学校からの友達。
ひかるは椅子に座るとタバコを吸いはじめる。
「いる?、アキ。」
「うんん。」
タバコ…そういえば陸と知り合ってから吸ってない。
「ふーっ、止めたんだ。何、食べる?。」
「ミニコース。ところで話って何?。」
ひかるはアキの顔を見て、ニヤッと笑う。
「ふふふっ。」
「な、何?。」
何この不気味な笑い。
「アキ、陸の居場所知らない?。」
「えっ?。」
「アキなら知ってるかなぁ…と。」
ギクッ!。
お見通し…かな?。
ウエイトレスのお姉さんが並べてく料理を見ながら、
「う、ウチにいる…。」
「やっぱり、いつから?。」
「んー、8月ぐらいかな?。」
「…そうなんだぁ…やった?。」
「えっ?。」
「それは冗談。」
「え。」
ひかるはスープを一口飲むと真剣な顔で、
「陸のお父さんから電話があってさ…。」
「お父さん?。」
「うん。アパートも引き払ってるし、連絡がとれないって。」
「…。」
「クリスマス、陸のお母さんの13回忌なんだ…。」
陸のお母さん、クリスマスに…。
「そうなんだ…。」
「アキ、私、陸が同棲してるって言わなかったけど、伯父さん陸の事すごく怒ってるから
捜し出してアパートに来るかもよ。」
「…。」
「陸、追い出すか、覚悟…しといた方がいいかも。」
「う…ん。」
「ところでアキ…陸と寝たの?。」
「えっ?。」
アキは首を振る。
「なーんだ。」
「ねぇ、ひかる、陸ってお父さんと仲悪いの?。」
気になる。
私、陸の事何にも知らない。
「高校2年の頃かなぁ…仲悪くなったの。陸、学校1の秀才でさ、伯父さん陸に大学行かせたくてさ、それで大喧嘩。その頃からかな?、陸が変わっていったの。」
陸、変わっていったの?。
「陸は、大学行きたくなかったの?。」
「アキ知らなかったっけ?、うちお酒造ってるの。」
「うん、知らない。」
「陸のお父さん、安西酒造の代表者で杜氏、だから陸は安西酒造の跡継ぎなの。」
「跡継ぎ。」
安西酒造の跡継ぎ…陸が遠い人のように感じる。
「陸、小さい頃から伯父さんのお酒造ってる姿が好きでいつも伯父さんの後付いて歩いてた。
だから、高校でたら当たり前のように酒造の仕事につくつもりだったみたい。」
「そうなんだ。」
大好きな酒造…陸がすごい世界の人に思える。
「陸、4年も家離れるのイヤだったみたい。大学行かないと家業継がせないって追い出されて仕方なしに…。それで投げやりになってんの、あいつまだ子供だから…。」
「陸ってほんとはどんな感じ?。」
「優しくて、明るい感じ。」
「…。」
「とにかく覚悟しといた方がいいよ。」
「うーん、ありがとう。」
明るいラブコメのような物語を書こうとノートにまとめたものの、なぜかこーゆう風になってしまう…(涙)。
私の暗い性格のせいでしょうか?…。