手紙と約束。
しばらく抱き合っていた。
二人の心臓の鼓動の音…早かった鼓動が、少しずつ、少しずつゆっくりになっていく…。
トクン…トクン…トクンっ…って。
「あー!!。」
突然アキは大きな声を出した。
「なっ!、何?。」
また、こんないいフインキな時に。
「そう言えば陸っ!!、なんでウチの中に入ってる?。」
ガクッ…。
「あ、アキちゃん…。」
「あ、ごめ…。」
「いつもいいフインキの時に…、もぉ…。」
陸はいじけて床に寝っ転がる。
「だって…。」
だって気になるんだもん。
ジーンズのポケットからくまのキーホルダーがついた鍵をアキに渡す。
「はい、これ。」
「あ…。」
お気に入りのくまのキーホルダーがついた鍵。
「返しそびれて…。」
「あー、それであの時も隣に寝てたんだ。」
アキはキーホルダーを揺すってみる。
隣で…。
あ、あの時の事。
「あの、アキちゃ…。」
「ごめん陸っ。」
「アキちゃん?。」
「私、ほんとにごめん。」
陸は首を振る。
「アキちゃんは悪くないよ。俺…自分に責任持てるまでアキちゃんの事、きちんと責任持てるまで、アキちゃんには手を出さない。」
「陸…。」
「俺は、アキちゃんを傷つけないから。」
「陸。」
アキは頬を真っ赤にして陸を見つめる。
「まぁ…アキちゃんがしたくなったら、言ってよ。」
「…。」
「いつでも大歓迎だからさっ!!。」
陸の口調が違う…なんか…違う…でも、この口調が本当の陸のような感じがする。
明るい優しい口調の陸…とってもいい…。
「うん。」
アキはそっと頷く。
「あー、お腹空いたぁ…。」
「ご飯、食べに行こうか?。」
「うんん、アキちゃんなんか作って…。」
「えっ?。」
「スープ飲みたい。」
「分かった。今、作る!。」
アキは立ち上がり、引出しからエプロンを取り出しスープを作り始める。
「そうだ…郵便屋さんが、これ。」
陸はアキに封筒を差し出す。
「ん。」
封筒の文字、お母さんからだ。
アキは手紙を受け取り、料理バサミで封筒を開ける。
アキへ。
元気ですか?。
お父さんがまた借金を作りました。
一度、話がしたいのでこちらへ帰ってきて下さい。
お母さん、たまにはアキの顔が見たいです。
また借金を作りました。
また…。
やっとの思いで、半分までもっていったのに…。
アキはギュッと手紙を握り締める。
「アキちゃん、どうかした?。」
「えっ?、あ、何もないよ。」
気づかれたくない…。
苦笑いをし、手紙を生ゴミ入れに捨てスープを作り始める。
陸には知られたくない。
そんなアキを変に感じる。
聞こうと思ってけど、踏み入れてはいけないように感じる。
「陸、今日泊まっていける?。」
「え?。」
「今日、泊まって…いって…お願い。」
「あ、今日じゃなくて、ずっと…。」
「は?。」
「また、マージャンですってさ…仕送り止められた。」
「えっ?。」
アキは振り向き陸の顔を見る。
「マージャ…ン?。」
「うん。」
陸はウソをついた。
「…。」
「だから、またここに置いて…。」
マージャン…ギャンブル…。
「陸っ!!。」
陸の顔を呼んだアキのものすごい形相。
初めて見るアキの顔。
「アキちゃ…ん?。」
「ここに…ここに居ていいからっ…賭け事はやめて…。」
「…。」
「お願いだから…やめて…。」
アキの真剣な顔。
「もう、しない…絶対しない。約束する。」
「約束…だからね。絶対、約束だからね。」
「う、うん。」
何があったんだろう?。
後ろ姿のアキ…いつもと違う。
手紙…誰からだったんだろう?。
約束からアキは一言も話さず、黙々と食事を作る。
そんなアキに一言も話しかけず、黙って陸はTVを見ている。
story1...end...
story1友達以上同居人未満。。。ここでendです。(いつの間にかついてる)
第22話からは、story2大切な人編。
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