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押さえきれなくなる気持ち。

 珍しくすごいハイペースで飲んだ。

お酒は大好きで、自分家の家業でもあるから酔いつぶれたりすることはほとんどなく、

アキの家で鍋パーティーをした時、はじめて酔ったくらい。


 珍しく、酔った。

まさと別れ、ビアガーデンの帰り道フラフラ歩く。

最近、何もかもたるくて人と楽しい場所で飲んでいても、遊んでても、毎日死にそうなほどつまらなく、いつ電話してもアキの携帯電話は、応答メッセージが流れるだけ…。

ジーンズのポケットには返しそびれたアキのアパートのくまのキーホルダーがついた鍵がいつも入っている。

陸はそれを握り締めると、薄笑みを浮かべた。


 

 「んん…きつい。」

お尻で壁側に何かを押し付け、アキはいつもよりなぜかきついベットの上、寝返りをうつ。

「んん。」

半眠り状態の頭の中できつい原因を探してみる。

この間買った、どでかいくまのぬいぐるみ?。

他には確か…なにもないはず?。

ないはず…。

アキはそっと目を開き、壁側を見る。

(えっ?、ええっ!!。)

隣にある物体。

生の物体?。

アキはその物体にびっくりし目を見開く。

隣には居るはずのない陸が寝ている…。

しかも裸で寝ている。

はっ、はっ、裸…はだかぁ?。

えっ?、何?なに?、ナニ?……何事ぉ?。

「はぁぁぁぁ〜?。」

あれぇ〜ぇ。


ドスッンッ!!。


「いったぁ〜い。」

落ちた…。

ベットから落ちたアキ。

「もぉ〜、うるさい。ふぁわぁ〜。」

のん気にあくびをしながら起き上がり陸はアキを見た。

(ん、あれ?。)

「…。」

「…。」

「アキちゃん…?。」

陸はアキを指差す。

「そう、私はアキちゃん。」

「んう、アキちゃんなんで俺んちいるの?。」

(えっ?ここは私のウチ。)

「陸はなんで私のウチにいるの?。」

首をかしげる。

「えっ?。」

陸は、天井、窓、部屋中を見まわし、最後にベットを見る。

あれ?、俺のベットじゃ…ない。

ここは俺んちじゃない…。

「…。」

どうしてここにいるのか…記憶がない…。

深く、深く考えてみるけど、記憶がビアガーデンから途切れてる。

確か歩いて帰って…。

恐ろしく途切れている。

しまった。

やってしまった…記憶がなくなるほど…飲んだ…んだ。

「アキちゃ…。」

陸は申し訳なさそうにアキを見た。

ベットから落ちたまんまの姿で唖然と自分を見ているアキ。

寝巻きであろうキャミソールとハーフパンツのアキの姿。

冬はジャージ姿で気づかなかったけど、色の白い曲線美の身体。

キャミソールの細い肩紐がアキの細い肩からずり落ちていてかなり色っぽい。

頭で考えるより先に陸の身体はアキの姿に反応し惹きつけられた。

「あ…。」

「…。」

ベットの上からアキにキスをする…。

陸はベットから降り、アキの太ももの上にそっとのっかかり、アキの顔を見るとまたキスをする。

「ん…。」

陸の唇はアキの唇から離れ、今度はアキの首筋を優しくすべる…。

「ん…。」

なんだろう?この感じ…。

手の先と足の先が痺れて動かない。

陸の肌と私の肌が密着してる…。

すべすべして気持ちがいい。

確か前にもこんな感じ…。

(あ…。)

アキの頭にふと、タケルの顔、百花の顔が浮かび、

見なれた診察室の天井と見なれない診察室と診察台が交互にフラッシュする。

「いやぁー。」

アキはとっさに陸の身体を押し起きあがった。

「アキちゃ…。」

何が起こったか分からない。

「ごめん、イヤ。」

「アキ…。」

アキは震え、首を左右に振りながら

「…ごめん。私、イヤ…イヤだ。」

…イヤだ。

そのアキの言葉に陸はショックを受ける。

「…あ。」

泣けそう…。

思いもしない言葉に泣けそう。

「ごめん。」

「あ…。」

陸はアキに一言謝ると、急いでTシャツとジーンズを履き、アキの部屋を飛び出した。


 アキは天井を見たまんま、 

陸と、だったんだよ…アキ。

どうしたのアキ…。

手足が痺れるほど陸を感じてたのに、陸の肌、気持ちがいいって感じたのに…。

まだ、覚えてるの?。

タケル先生の肌の感触…まだ覚えてるの?。

ひどいよアキ…ほんとにひどいよ。

こんな時にタケル先生の事思い出すなんて…

こんな時に手術の時の事…思い出すなんて…

陸、ごめん。

陸ほんとにごめん…。

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