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お粥の味と出ない電話。

 5分離れたところ。

だから走るともっと早く着く。

「はぁ、はぁ…。」

息を切らしながら陸のアパートの階段を上がろうと視線を上に向けると、

(あ…。)

アキの前を百花が立っていた。

「アキさ…ん。」

「…。」

「どうしてここに?。」

「あ。」

「まだ…陸と会ってるんですか?。」

百花は悲しそうな顔でアキに聞く。

「うんんっ。」

思いっきり顔を振るアキ。

「じゃぁ、なんで?。アキさん、お姉さんでもなんでもないでしょ?。」

なんでもないでしょう?。

確かにそう…。

「私達、友達みたいなもん。」

「友達?。」

「そう…。」

百花はアキの持っている二つのタッパーを見た。

「それ、なんです?。」

「えっ?、あ、これ?。陸、風邪引いてるって。」

「陸、風邪引いてるんですか?。」

あ、もしかして、知らない…。

何も知らなさそうな百花の顔はどんどん暗く悲しい顔になっていく。

前会ったイマドキの子という顔はではなく、切ない恋をしてる感じ。

「百花ちゃん?。」

ひとつ方向をじっと見る百花。

「陸…風邪、引いてたんだ…。」

「…。」

「陸はアキさんに電話したんだ。」

百花はゆっくり視線をアキに向けると、

「アキさん。…もう…会わないで…陸の気持ちが揺れるから、もう…会わないで。」

「…。」

「お願い。」

瞳いっぱいに涙を溜めて言う百花。

陸の気持ちが揺れる?。

なんで?。

私には、ワカンナイ。

でも、百花ちゃんの顔…見てたら、もう会ちゃぁ…いけないのかな?…って、

そう思う…。

「はい…これ。」

「…。」

アキは百花に二つのタッパーが入った袋を手渡すと、振り向き帰って行った。

 

 あんな顔されたら…何も言えない。

『私達は、姉弟きょうだいみたいにしか思ってない。』なんて、あんな切ない顔、されたら…。

男と女に友情は成立しない?。

私、言われてるんだよ、『俺、百花大事だし…』

陸にはっきり言われてるんだよ。


 

 コン、コン。

「はぁーい。開いてる。」

カチャッ。

「陸、大丈夫?。病院は行ったの?。」

入ってきたのはアキではなく百花だった事にびっくりする陸。

「あ、うんん。百…どうして…?。」

百花は今、何もなかったような顔で、陸のおでこに手をやる。

「熱いわねぇ。アキさんから電話もらって…みずくさいよ陸。」

「そ、そうなんだ。ごめん。」

陸は少し動揺している。

「アキさんが、粒コーンスープと梅昆布茶粥作っていってあげてって言ってたから…はい。」

百花は自分が作ったかのように机の上に置く。

「百が作ったの?。」

百花はニッコリ微笑んだ。

「そう、食べる?。」

「うんん、まだいい。」

俯きがっかりしたような陸の顔を百花は見つめると、

「もう、アキさんに連絡するのやめてよ。私がいるから…。」

「ん?。」

「私が陸の、彼女なんだから…ねっ!!。」

「あ、ああ。」

こんな事言いたくなかった、言いたくなかったけど、言わないと陸はどこかへいってしまう。

陸はアキさんの所へ行っちゃう。

「私…帰るね。」

「あ、うん。ありがとう。」


 百花が帰ってしばらくたった後、陸はゆっくりベットから降りると、

冷めた梅昆布茶粥と粒コーンスープの入ったタッパーの蓋を開けた。

陸はスプーンでお粥をすくい一口食べる、スープもスプーンで一口飲んでみる、

その二つの味はアキの味だった。

何回教えても、味を濃くするアキ。

「…。」

でも、この微妙に濃い味は、死んだ母さんの作った梅昆布茶粥の味。

この粒コーンスープの少し濃い塩コショウの味は、小さい頃母さんが一回だけ朝作ってくれた

粒コーンスープの味…。

「会いて…。」

TV台の上、アキの部屋の鍵。

「あいてぇー。」


 

 アキは夜空をずっと眺めている。

ここは星が見えない。

百花の切ない顔が目に焼き付いてる。

百花の言った言葉が耳について離れない。

『陸の気持ちが揺れるから…。』

陸が、私に揺れてる…の?。

そんな事は絶対ない、私の事、女としてみてないのに…。

そんなことない…よ。

百花ちゃん…。


 

 すっかり熱も下がり、いつものように大学へ行く。

洗って乾いたタッパーは家に置いてある。

「陸ぅ、良くなったんだね。」

「百、ありがとな。」

「えっ?、なんで?。」

「お粥美味かったよ。」

アキが作ったお粥と分かってるけど百花に礼を言う。

「あ、うん。よかったぁ。」


 

 授業を終え、陸はアパートに帰るとアキの携帯電話に電話をする。

なんコールしてもアキはでない。

(そうか、まだ仕事だ。)

時計を見ると、PM5:00.

「後でまた電話しよっ。」

陸は携帯をベットにほかり、倒れこむ。

「疲れたぁ、ちょっと寝よ。」



 PM8:00.

「お疲れ様でした。」

「お疲れ様。」

今日の仕事も終わり、アキはバックに入れてある携帯電話を見る。

今日もきっと…。

 

不在着信あり。

陸。


陸からだ…。

デスクトップの2番目、陸。

アキはボタンを押そうとした。

「あ…。」

『陸の気持ちが揺れるから…。』

百花の言葉。

「もう、会うのと一緒で、めないとね。」

アキはボタンから手を離し、電源をOFFにし携帯電話をバックにしまう。

今日は暑いし、すごく忙しくて疲れた…疲れたからコンビ二で冷やしうどん買っていこう。


 「ふうぁ〜。」

背伸びをして起きあがると部屋は真っ暗。

あれ?、もうこんなに真っ暗だ。

PM8:30.

やばい寝すぎた。

電気をつけ、布団の中の携帯電話を探し、アキに電話する。

『ただいま電話に…。』

「あれ?、まだ仕事かな?。」

いいや、もう少ししたらまた電話しよう。

しかし眠い…。

「風呂でも入るか…。」


 風呂から出た後、またアキに電話をかけてみる。

『ただいま…。』 

「あれ?。」

時計を見てみると、PM9:00.

「まぁ、いいや。明日にしよっ。」

陸はまだ風邪気味で少しだるい身体を横にした。

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