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5分離れた距離のウチ。

 もう、1ヶ月以上経つ…。

新しい職場にも馴れ、毎日変わらない時刻ときを歩いてる。

季節は私を置いて進んでいくだけ…。


 7月。

あれから、陸に会ってはいない。

けど、洗面所の陸の歯ブラシはいまだ捨てずにいる。

帰ってくるわけでもないけど、なぜかね。

心の中では待っているのかも。

恋人でもなんでもなかった同居人、私は何を期待しているんだろう?。



 久しぶりの実家からの母親の手紙…。

電話ではなく手紙。


 借金は半分になりました。


あと半分…その半分もとてつもなく重い。

あと、どれだけ経ったら逃れられるんだろう?。

今月もまたお給料から3万円…現金書留で実家に送る。

会社をリストラされギャンブルに走った父親の借金を母、兄、私、弟で、今は返している。

現金書留に印を押すたび思い出す、『こんな家早く出ていってやる。』 

高校生の頃から借金の為バイト三昧、したいこともできず、私達の生活を360度変えた父親の会社とギャンブルに溺れる父親を憎みいつも心で思ってた。

  

 郵便局から帰る道、わざと陸のアパートらしい前の道を通る。

こんなの私らしくない。

だけど…。

5分しか、離れてないのに会わないもんなんだね。

苦笑いなんかもしちゃったりする。


陸は元気なのかな?。


暑く、蝉が鳴いてるせいか、陸が居た丁度よかった頃の温度を恋しく思う。

そんなノスタルジアに浸っていると、待っていたのかを知っているかのように

アキの携帯電話が鳴る。


 CALLING 陸


陸から…。

アキはドキドキしながら電話を手にする。

「もしもし?。」

『…アキ…ちゃん?。』

ん、なんか様子が変?。

なんか切なそう…気のせい?。

「陸、どうしたの?。」

『…俺…もう、だめ…。』

俺、だめ?。

だめって?。

「陸?。」

『はぁ…俺…もう死んじゃう。』

はぁ?。

なんで死んじゃうの?。

もしかして?そんな…。

「えー、何なの、どうしたの?。」

アキはドキドキしながら聞く。

『だって、40度も熱があるんだよぉ。』

「は?。」

『助けて…。』

は…助けて?40度…?。

あー、熱。

風邪…かぁ…。

アキはなんか恥ずかしい。

電話でよかった…。と思う。

私、何勘違いしてたんだろう?。

そうだよねぇ。

「あははっ。」

『何笑ってんだよぉ…、はぁ〜、人の非常事態に…。』

「だからってなんで私よ?。」

『アキちゃん、梅昆布茶粥作れるでしょう?。…あと、粒コーンスープも…。』

「うん。」

『だから…。』

なんだ…それだけ?、それだけかぁ…。

気づかれないように心でため息をつく。

『お願い。アパートの場所教えるから。』

「分かったよ。」


 陸の教えてくれたアパートの場所はやっぱり思っていた所だった。

すんごくボロイ古いアパート。

しょうがないから、作って行ってやろう。

アキはうきうきしていた。

久しぶりに陸に会える。

久しぶりに家族に会う感覚?。

それとも遠距離の恋人に会う感覚?。

そんな事どうでもいいや。

陸と暮らした短い間に磨いた料理の腕を振るう。

「待ってろよぉ、陸ぅ。」

アキは、作った梅昆布茶粥と粒コーンスープをタッパーに入れ、急いで陸のアパートに向かう。


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