これで最後?。
そよそよと風が新緑の葉を揺らす時期。
陸の新しいアパートは決まる。
ウチのアパートから5分ぐらい離れた、古い木造のアパートらしい…。
ある晴れた日曜日の朝、粒コーンスープとロールパンを陸と食べる。
食べ終わると陸は、バックひとつに衣装ケースの服を詰め込むけど、季節は当然変わっていくから衣装ケースも服も多くなり、指定ゴミの大きなサイズの袋にも服を入れる。
アキは無言のまま陸の後姿を見ている。
可愛い義弟の新しい門出を見送る、姉の感じ?。
淋しさが胸を苦しくする。
明日からまた一人…。
そう思うとなぜかとても切ない。
「これでよしっと。」
「忘れ物したら駄目だよ。」
陸のバックを覗きこむ。
「いいじゃん、近くなんだから。」
「それはそうだけど。」
歩いて、5分。
なんか複雑。
すぐ会える距離、だから複雑…。
「じゃぁ、アキちゃん行くね。」
「うん。」
「短い間だったけど、ありがとう。」
「うん、さようなら。」
「バイバイ。」
バイバイと言われると、なんか切ない…。
陸の笑顔を見たら、行かないで…。の、一言が出そうになる。
今度は、イライラして靴を履くんじゃ、ないんだね。
「じゃぁ…ね、陸。」
陸は振り返らず玄関のドアを開けると、
「養ってやるって言ったのにごめんね。」
そう小さな声で言うとアパートを出た。
「…。」
陸…覚えててくれてたんだ。
それだけで、私はいいかも…その言葉だけで、いいのかも。
陸のいなくなった部屋は妙に広く感じる。
今日からは、5ヶ月前のように…また、ひとり。