可愛い(義)おとうと。
ごめん?。
何が、ごめんなの?。
百花ちゃんの言った事に代弁してるの?。
「アキ…?。」
しばらく外に出ていた幸子達が戻ってきた。
何も理解していないみんな、心配そうな顔。
「あっ、ごめんね。私達あの子に何も言ってなかったからさ…。ほんとせっかく来てくれたのに…
ほんとごめんね。」
「アキ…。」
「別に、恋心とかやましいカンケイじゃぁ、ないんだけどね。イヤだよねぇ。」
笑って見せる。
泣かない。
泣く理由が、私にはない。
落ち込んでるアキと見抜いたのか幸子はすぐ切り返す。
「さっ、食べよ。ほらぁ、雅、温め直して。」
「おおっ。」
「あーあー、修羅場にした発端人は寝てるよ…。」
ひかるは酔いつぶれ寝ている。
「ありがと…。」
「さっ、今日はとことん飲もうっ!!。」
「おー。」
朝、眩しい朝日が部屋を差し込む。
AM5:00.
一睡もできなかった。
陸は当然の様に帰ってはこない…。
みんなあの後、何もなかった様に振るまい、そして寝た。
6畳の狭い部屋に大の大人が気持ちよさげに寝てる。
「気…使わせちゃったな…。」
一人、一人にバスタオルをかける。
友達って、いいなぁ。
そう感じる。
喧嘩して出ていった陸が帰ってきてからまた作りはじめた粒コーンスープをアキは作りはじめる。
作り方は簡単。
ただ、クリームコーンと固形のチキンスープの素を温めたお湯の入ってる鍋に入れ、塩コショウをし、私はとうもろこしがいっぱい入ってるのが好きだから、ホールコーンを入れるだけ。
ただ、それだけのコト…。
なのに、このスープを好きと言ってくれる陸。
何回か喧嘩して、短い間だったけど…もう、ほんとに終わりにした方のがいいのかも…。
『俺がバイトして養うから、あせんなっ。』
陸の言葉、嬉しかった。
どうしよう、泣かないつもりなのに涙が出てくる…涙でスープが見えない。
「ぐすんっ。」
コンコン。
アキがスープを作り終えた頃、アキの部屋の玄関のドアを誰かがノックした。
コンコン。
(こんな朝早く誰だろう?。)
そっと覗き窓を見てみると外には陸が立っていた。
なんでノックなんだろう?。
首を傾げ、玄関のドアを開ける。
「陸…。」
「おはよう。」
何もないような顔で部屋に入る。
「お帰り。」
「みんなは?。」
「爆睡状態。」
アキはみんなを指差す。
「あーほんとだ。」
陸はみんなを見て、ニッコリする。
あの後、どうしたんだろう?…百花ちゃん追いかけてどうしたんだろう?。
気になるけど聞かない。
アキは出来上がったスープをお玉で1回かき混ぜ、鍋に蓋をする。
「陸…。」
「ん?。」
エプロンをはずし、洗面所で、ものすごい勢いで顔を洗う陸に、
「もう、ここ出ていった方がいいんじゃない?。」
と、聞く。
「…。」
返事がない。
聞こえてないのかな?。
洗面所を覗きこむと、陸がタオルで口を押さえ、鏡で自分の顔を見ている。
「ここ、出ていった方がいいんじゃ…ない?。」
もう1度聞いてみる。
陸は目線を鏡からアキに移し、また鏡に移す。
「…そうだね。」
「そうだよ。」
「そうだよね?。俺、百花大事だし…アキちゃんに迷惑かかるしね。」
迷惑?。
陸と暮らしてて迷惑なんて思ったことない、むしろ私の方が迷惑かけて、
陸にどれだけ助けられたか…知れない…。
「そうだよ、百花ちゃん大事にしなきゃ…。」
「俺、親父に謝って、もう1回仕送りしてもらえるように頼んでみるよ。」
「うん。」
「それまでは、むしがよすぎるけど、ここに置いて。百花もいいって言ってくれたから。」
「うん、分かった。」
なんだ、百花ちゃんとそこまで話、進んでるんだ。
なんか悲し。
そうだよね、彼氏彼女なんだから。
養うから…そんなコト、もう忘れてるよね?。
「さっ、みんな起こすか?。」
「えー、まだ6時だよぉ。」
「だね。」
「一眠りすべっ。」
「何、それ?さむうっ!。アキちゃん。」
「うるさいっ!!。」
一眠りがみんな爆睡状態。
「ふうわぁ…よく寝たぁ。」
1番はじめに起きたのは昨日修羅場まで追い込ませ、その修羅場から見事すり抜けたひかる。
「なぁに、みんなまだ寝てるんだ。」
昨日の事は途中からまったくもって覚えていない。
「こらぁー、陸ぅ起きろぉー。朝食作れぇ。」
ひかるは陸を揺すり起こす。
「…んん?、何、ひかるネェ…?。」
「お腹空いた。梅昆布茶粥作って!。」
「えっー。」
まだ半分眠る身体を起こす。
「作って!!。」
「イヤだぁ、ひかるネェ作れよ。」
「こらぁ、お姉様のゆうこと聞くんだぁ。」
「もぉー、分かったよぉ。」
全員起きての朝食(昼食)は、陸が作った梅昆布茶粥とアキの作った粒コーンスープの微妙な組み合わせ。
だけど美味しい。
「美味しいぃこれ、どうやって作るの、陸?。」
「また、教えてやるよ。」
「うん!、教えて。」
昨日何が起こったか知らないひかるは美味しそうに食べてる。
「ほんとっ、あんた達引っ付いちゃえばいいのに。」
(げっ!!。)
「あっ。」
「うっ。」
「…。」
みんなの手が一気に止まる…。
「ん、どしたのみんな?。」
(あー、この人知らないんだ。)
モグモグ食べながらひかるはどうしたんだ?という顔をしてる。
「べっ、別に何もないよ。」
「そう、ひかるさん、二日酔いなく美味しそうに食ってんなぁ、と思って。」
「ふーん。ならいいや。」
ほんとあっさりノー天気女…。
私達の気も知らないで。
いつまで、陸と暮らせれるんだろう?。
あと少し、陸との生活楽しもぉ…。
それにしてもこの梅昆布茶粥美味しい。
可愛い義弟との楽しい生活を…後少し楽しもう。