バレたウソ。
しばらく抱き合っていた。
いいムードのまま…。
「あっ!!。」
突然思い出したかのように、アキは声をあげた。
「なっ…何?。」
陸はアキをパッと離した。
「仕事、明日から仕事探さなきゃ。」
真剣な顔。
「はぁ?。」
「仕事探さないと、家賃払えなくなるでしょ?。」
ガクッ…頭を下げる陸。
「フツーこういうフインキの時に、そういう事思い出すぅ。」
「だって現実は甘くないのよ。」
「だからって…。」
「あー、朝一で、職安行かないと…。」
色々考えてるアキに陸は一言、
「俺がバイトして養うから、あせんなっ。」
「えっ?。」
アキは陸を見る。
強い瞳。
「俺が、バイトするから…しばらく休んどけ…。」
陸が…弟のように見てた陸がまた男に見える。
そう言えば、陸は男だったんだ。
私、今、陸を男として意識…してる?。
私、今さっきまで陸と抱き合ってたんだ…。
イヤだ…そう思ったら、陸の顔が…まともに見れない…。
アキは陸から目線をそらし
「は…い。」
小さくうなずいた。
仕事先には電話ひとつで辞めると告げ、仕事とタケル先生と私の繋がるものは何ひとつなくなった。
(これでいいんだ…。)
そう自分に言い聞かせる。
陸が居てくれたから、きっと私は早く立ち直れるんだろう。
今、こうやって起きていられるんだろう…。
ウチの中が暖かい。
しばらくたったある土曜日の夜。
久しぶりに、あの鍋パーティーのメンバーがそろう。
陸が何も言わず声をかけてくれた『アキちゃんの少し遅い誕生日会。』
ん?。
何、このネーミング?。なんかミョーウな感じ…。
聞いた時はそう思ったけど、陸の優しさが伝わる。
きっと『アキちゃんを励ます会。』と言いたかったんだろうと、自惚れだけど、そう思う。
今日は暑いから鍋パーティーではなく、すき焼きパーティー?(あんまし変わらないような気がするけど、そんな事はどうでもいいか…。)だそう。
とてもはりきっている。
「えー。あんた達いつからできたんのぉ〜。」
少しほろ酔い加減の幸子が聞く。
「もぉ〜。人聞き悪いっ!!。ルームメイトだよっ。」
「そうだよぉ、だってアキちゃん…俺にとっては男みたいなだもん。」
「げっ?、男…そこまで言うぅ。」
「あっ、ごめん〜アキちゃん。違う、男友達。」
ドサクサにまぎれアキに抱きつく陸。
「離してよぉ〜。」
「なんかいいフインキだぞっ!、陸。」
陸の友達の雅が言う。
「ほんとはできてたりして。」
「ぎゃははっ。」
「アキなんか、喧嘩して出ていった陸探してるんだよぉ。」
「それは違うでしょ?、このっ、ひかめっ!!。」
「あはははは…。」
「やめろよぉ…。」
みんなしてアキと陸をからかう。
こんなんが楽しい。
久しぶりに思いっきり笑う。
嫌なこと、全部忘れて…。
おもいっきり笑う。
「もぉ〜!!、じれったい、引っ付いちゃえぇ。」
酔ったひかるがアキを陸に押し当てた、瞬間…。
「お姉さ〜ん?、陸ぅ見つかりま…。」
陸の彼女の百花が玄関のドアを開けた。
「…。」
みんなして、百花を見る。
「し…た?。」
陸にぴったりと引っ付かせられているアキを百花は見た。
(あ…。)
パッと離れる二人。
「百、どうした?。」
「なんで、いるじゃん。私、ずっと捜してたの。」
「えっ?。」
そう言えば…百花に連絡してなかった…。
「ごめんね…色々あって連絡できなかったの。」
慌てて弁解するアキ。
「今…引っ付いちゃえ…って?。」
「えっ、そんな事言ったっけ?。」
雅がしらばっくれる。
「…。」
百花はアキをじっと見た。
「お姉さん…なんですよね?。」
アキはおもいっきり首を縦にふる。
「はぁ〜い。私が陸の従姉さんでぇ〜す。」
(ま、まずい。)
「ひかる、私達の従姉弟なの。ねっ、ひかる。」
アキはとっさにつくり、ひかるに振る。
けど、ふった相手が悪かった?。
「え〜、あんたは違うでしょ!!。だってあんたらじれったいんだもん。」
「げっ!。」
(しまった…。)
ひかる以外全員酔いが一気に冷めていく。
「どういうこと?。」
「まぁまぁ、百花ちゃん。俺達、外行ってるから。」
雅が百花を部屋にあげ、コタツに座らせる。
「陸のお姉さんじゃないの?。」
嗚呼、修羅場。
どうしたらいいんだろう?。
「うん。」
陸はたった一言頷いた。
「はぁ?。」
泣きそうな百花。
「ごめん…仕送り止められて…ここで世話になってる…。」
「…。」
「黙ってて、ごめん。」
「どうしてここなの?。どうして女の人のウチなの?。」
ポロポロと流れる涙。
そんな百花の涙を見てアキは
「ごめんね、百花ちゃん。私がいいよって言ったの。別にウソつく気じゃぁなかったの。」
百花の質問はアキへと移る。
「アキさんに付き合ってる人がいて、もしその人が女と一緒に住んでたらイヤじゃないですか?。」
「…。」
「アキさんって誰とでも軽く同棲できるんですか?。」
「そんな事できないよ。」
「じゃぁ…なんで?アキさんって見かけによらず、フシダラなんですね。」
百花の言ったこと、フシダラ…。
そうかもしれない。
不倫して、妊娠して、中絶して、こうしてルームメイトとして男と共同生活してる…。
アキがガクッと肩を落とす。
私、確かにフシダラだ…。
「百っ、俺が強引に居座ったんだよ。」
「違うよっ、私が軽率だった。」
アキをかばうように言った陸の言葉が、陸をかばうような言葉が百花を余計傷つける。
「もう、いいよ…。」
「百…。」
百花はゆっくり立ち上がると
「もういいや…。」
「ちょっ!!、百っ。」
「百花ちゃんっ。」
「さようなら。」
掴む陸の手を払い、ミュールを履き玄関を出た百花。
「ごめん。」
アキに一言、陸は百花を追いかけ部屋を出た。