今、そこにある。。。
たくさんの精子がたった1個の卵子に辿り着く奇跡。
その奇跡を、まだ見えぬ生命を、自分がした事の代償として、私は空に払った。
自分が空へ飛んでいけばよかったのにとも、今、思う…。
(ごめんね。)
見えない、受け止めてあげれなかった命。
ごめんね…。
私の…。
レースのカーテン越し、揺れる木が沈む夕陽をキラキラさせ、部屋を照らす。
アキは布団の隙間から見えるその場面をしばらく見ている。
キラキラした光…。
「アキちゃん…。」
陸は襖を開け、ずっと塞ぎ込むアキにそっと声をかける。
「…。」
寝てるフリ、してるのは分かってる。
「…アキちゃんには…愛があったんだよね?。」
愛があったんだよね?…。
陸の言葉に堪えていた涙が溢れ出る…。
愛は、あった。
溢れるほど愛はあった。
私は、タケル先生を愛してた。
「ずずっ、うん…。あったよ。溢れるほどの…愛が…あったよ。」
陸はアキの布団をそっとめくる。
涙で濡れてる頬とぐちゃぐちゃになった黒い髪。
陸は座り、アキの頭をさする…。
「アキちゃん…。」
陸…。
アキは起き上がり、陸の目を見つめ、
「私には、溢れるほどの…愛が…あったよ。」
「…。」
「溢れすぎるほどの…愛が…あったよ。」
そっとアキを抱きしめる。
私は何度、この大きな胸でホッとしたんだろう?。
今、私はこの暖かい大きな胸がなかったらどうしてたんだろう?。
ここまでで、いられるのは陸の大きな心の…おかげ。
「…きっと、分かってくれるよ。アキちゃんには愛があったんだから、きっと分かってくれてるよ…。」
逢える事の無かった命…きっと分かってくれるよ。
その言葉がとても救いになる。
「陸…。」
「ん?。」
「ありがとう。」
「ん。」
ほんとにありがとう。
こんな私を…。
「抱きしめてくれてありがとう…。」
アキはぎゅっと陸を抱きしめる。
陸はそっと目をつぶり、
「どういたしまして…。」
ぎゅっと強くアキを抱きしめ返した。
しばらく、こうしていたい…そう思う…。
これは物語ですが、アキがとった行動として中絶という内容になってます。私も未婚の身で妊娠し、すごく悩んだ覚えがあります。けして軽い気持ちで書いてるわけではありません。意味不明の文でごめんなさい。
希凛希