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幼馴染みと僕

太陽も沈みかけて、ここ、木原商店街にも眩しいほどの西陽が差していた。


「みっきー!」


と、呼ばれた少女…のような外見をしたロングヘアーの少年、六条(ろくじょう) 光希(みつき)はうんざりした顔をして声の主の方を向いた。

いや、顔だけではなくため息も含めてだ。


「ヒメ、せめてこういうところでは大声は出さないでね…お願いだから」


ヒメ、と呼ばれた少女…今度は正真正銘の少女の白菊(しらぎく) 姫菜(ひめな)は光希の話を完全に無視をし、話を続けた。


「ひどいよみっきー!

恋人のことを待ってるとか言うのはないの?」

「あのね、ヒメを置いていった僕と、中3にもなって夢の国の住人の名前で呼ばれる僕の恥ずかしさのどっちがひどいと思う?」


「あたしを置いていった方の罪悪感でしょ?」


姫菜はまばたきもせず、即座に答えた。

光希は腰辺りまで伸びた髪の毛を揺らしながらさらにため息をついた。


「そのプラス思考がうらやましいよ。

それより、今日の数学テストはどうだったの?」


いかにも、テスト終了後の母親のような聞き方だ。

姫菜はというと、あわわわ…と言いながら冷や汗を流し続けている。

この様子だとダメだったらしい。

ちなみに僕は100点満点中96点だった。

この成績なら母親にどやされることもないだろう。


「だってさ、」


絞り出すかのように声を張り上げた。


「あそこまでみっきーが言ってるところが出ると思わなかったんだもん!」


どうやら光希への信頼はそれほど高くはないようだ。


実は姫菜の点数はわかっていた。

37点…赤点すれすれといったところだ。

光希のなかのSな部分がちょっとだけ働いてしまった。


「ヒメ、大丈夫?そうとう顔色悪いけど…

そんなに悪かったのかい?」


と、聞いたとたん姫菜は大粒の涙をこぼし始めた。


しまった、

と光希が思ったときにはもう手遅れだった。


「…わたしはみっきーみたいに…頭よくないもん…

そうやって……わたしには…自慢ばっかり…っ」


姫菜の声にだいぶ嗚咽も混じってきた。

このままではらちがあかなそうだった


その時、まさにタイミングを見計らってか焼き芋屋の屋台が宣伝をしながらこちらに歩いてきた。


「ひ、ヒメ、焼き芋買ってあげるからさ…その、ね?」


「……特大ね」


拗ねた口調だったが、すでに意識はテストから焼き芋へと移り変わっていた。


渋々ながら泣かせてしまった姫菜を(もう泣き止んでしまったが)、泣き止ませるために焼き芋屋へと一直線に走っていった。


「いらっしゃい!!」という店主の威勢のいい声に気圧されながらも、

「焼き芋…特大なのと小さめのやつを1つずつください」

と、軽く絞り出すように注文した。


「はいよ、お嬢ちゃん

熱いから火傷には気を付けるんだよ?」

店主にとってはよかれと思ったセリフだが、この台詞は光希の心に深く突き刺さった。


──僕はそんなに女に見えるのか?───

──ちくしょう…ちくしょう!!──

と、怒りで髪の毛が黄色く、さらにとてつもないオーラ…が出るわけもなく、露骨に怒ったような顔をして焼き芋を受け取り、姫菜のところへと走っていった。

……僕は男だ!と言い残しながら。

焼き芋屋の店主は「ふむ…見た目に頼ってしまってはいけないのか」などと、色々呟いていた。


冷めないうちに…と思っているうちに姫菜のところへとたどり着いた。

「買ってきたよ、ヒメ」


姫菜は焼き芋を見たとたんに目を輝かせて光希から半ば強引に奪い取って思いっきり一口……

「あっつーーーーい!!!」

バカだった。


光希はなにも言わずに適当な冷たい飲み物を買いに行った。

……自動販売機なんて邪道だ!

と言っていたのは昔の事で、今はもう自動販売機以外なんて邪道だ!とまで言われるようになりつつあるのかもしれない。


と、そんなことを思っている間に自動販売機を見つけた。

適当に買って姫菜に渡した。


プシュッ

あ、姫菜は炭酸飲めないんだった…と思ったときにはすでに遅く、グイッと思いっきり…


「うひゃあ!?し、染みるっ!!痛いっ!傷口に炭酸って絶対無理っ!」


手遅れだった。(二回目)

とりあえずなんとかに塗る薬はないとは言ったものだが、染み込ませる薬はあったみたいだった。



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