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名は体を表す

掲載日:2026/05/28

短編です

 俺には才能がある。ハッキングの才能が。

 職場で会社の帳簿のデータに侵入して横領していたのがバレてクビになったけど、俺にはその手の才能があるんだから、これからの人生どうにでもなる。

 最近はSNSのアカウントを乗っ取るのが趣味だ。

 セキュリティがガバガバなガキや老人を狙ってパスワードとIDを探し出す。え?どうやってそれを見つけてるかって?それは企業秘密だ。せいぜい俺のように頭が良くなってから出直しな。

 さて、最近の俺は手に入れたアカウントの過去のつぶやきをチェックして、しばらくはそいつと同じ運営方法を続ける。さすがに絵を描いたりはできないから、日常呟き系を中心に乗っ取る。フォロワーたちにばれない程度に運営を続けて、友好関係を探る。

 普通に「今日の夕飯はこれ」とか、そんな何でもないアホみたいな内容を呟いて、コメントや反応してきたやつらの中から、攻撃できそうなやつをみつけて誹謗中傷コメントを書き込む。

 友人だと思い込んでいた奴から急に誹謗中傷コメがついたら誰だって驚くだろう。そうやって過剰反応してくる奴としばしレスバを楽しんで、飽きたらアカウントを捨てる。これが結構楽しいんだ。

 俺くらい頭の回転が早いと、相手は稚拙なレスしか返せない。その返事に高度なレスを返してやって、俺の勝利が確定する瞬間がたまらない。

 これだからアカウント乗っ取りはやめられないんだ。

 ある日、“マッスル横尾“というアカウントを乗っ取った時、”ふわ雪いちご“というアカウントの奴と仲良くしていることを知った。

 メッセージの中では、甘いものの話や、仕事の愚痴、ちょっとした恋愛相談のようなものまでしていた。こいつらもしかして、ネット恋愛みたいなことでもしてんのか?アホらしい。俺がこの二人の仲を引き裂いてやろう!

 そう思って連絡を取り続けていると、ふわ雪いちごが、普通に良い奴だった。俺がちょっと挑発的なことを言っても、笑ってスルー。コメント相手がマッスル横尾だと信じて疑っていないのか、[お仕事今日も大変なんですね。お疲れ様です]なんてねぎらいの言葉までくれる。

 なんだよ、レスバしたかったのに。でも、まぁ、たまにはこういう普通のやり取りもいいか。

 そんな風に考えていると、ふわ雪いちごから、[今度会いませんか]と誘いが来た。え、べ、別にいいけど?結構ぐいぐい来るじゃん、いちごちゃん。

 仕方ないから、俺はちょっといい服を引っ張り出して約束の場所に出向いた。いやほら、へんなTシャツとかじゃ、相手に失礼じゃん?ま、俺が持ってるの安物の?オフィスカジュアル的な服しかないから、まぁ、どれ着てもいいんだけど。

 駅について、メッセージで[ついたよ~][今行きますね~]みたいなやり取りをする。え、やば、これってもしかしてデートとかになっちゃう系?やばいなぁ、俺、そう言うつもりじゃなかったのに~。

「マッスルさんですか?」

 いちごちゃんと思しきか細い声に振り向くと、そこには、Tシャツぴちぴちのムキムキマッチョが立っていた。

「え?」

「あぁ、あなたが俺のアカウント勝手に使ってた人か」

 野太い声のマッチョは自分を“マッスル横尾”だと名乗った。本物のマッスル横尾の後ろから、さっきのか細い声とともに、白黒のゴスロリファッションに身を包んだピアスバチバチの女性が現れた。

「こんにちわぁ~ふわ雪いちごでぇす」

「え?」

 混乱する俺をよそに、二人は俺の腕をしっかりと捕まえると、タクシーの運転手に「警察署まで」と言った。



——だ、騙されたぁ(泣)——

マッスルさん、現役の消防官なんだって(^^)

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