届かない思い
遠くから、由奈が慌てた様子で走ってくるのが見えた。
その姿を見た瞬間、胸がざわつく。
……隠し通さなくちゃ。
「あのさ、気になったんだけど、美姫と蓮って仲良いの?」
由奈が息を切らしながら言った。
そんなにまでして聞くことなのかな?
一瞬、言葉が出なかった。
でも――
「うん、そうだよ」
だって、私たちは付き合ってるんだから。
その言葉を口にしようとした瞬間、
「だって俺たち、付き合ってるからな」
蓮が横から言った。
一瞬、呼吸が止まりそうになる。
でも、ここで否定するわけにはいかない。
「うん……付き合うことになったんだ」
うまく笑えていたと思う。
明るく言えたと思う。
でも――
そんな自分の表情に、声に、吐き気がした。
「そう……なんだ。おめでとう」
「うん、ありがとう」
「じゃあ、邪魔しちゃ悪いし、私もう行くね」
そう言って、由奈は教室の方へ歩いていった。
これでいい。
私は、嘘を突き通すと決めたはずなのに。
……本当に、これでいいのかな。
⸻
そうして、日曜日になった。
待ち合わせ場所に、蓮はまだ来ていない。
朔夜のことになると、つい張り切りすぎちゃうな。
そんなことを考えていると、蓮が手を振りながらやってきた。
「あれっ、早いな。集合時間もう過ぎてたか? ごめん」
「ううん、私が早く着いただけだから気にしないで」
「そうだな。じゃあ行くか」
そうして、私たちは歩きだした。
「なぁ」
蓮が話しかけてくる。
「どうしたの?」
「朔夜ってさ、どんなのが好きとかあんの?」
プレゼント選びなら、相手が欲しいものを考えるのは当然だ。
でも、なにかおかしい気がする。
「朔夜と仲良いのに、なにが好きとか知らないの?」
蓮は一瞬、悔しそうな顔をして言った。
「いや、あいつな。なにが好きとかそういうこと全然言わねぇんだわ」
その言葉を聞くと、朔夜らしいなって思えて、笑みが溢れる。
「やっぱりお前、朔夜の話すると嬉しそうだよな」
「えっ、そんなことないって」
「お前、鏡でも見たらいいぞ。とんでもなくにやついて、幸せそうな雰囲気出てるぞ」
恥ずかしくなって、視線を逸らす。
「そんなことはどうでもいいの。それより、朔夜の好きなものだよね」
少し考えてから言う。
「朔夜って、意外と可愛いものとかが好きなんだよね」
「は? あいつ意外すぎるだろ」
「でも、昔はすっごく可愛かったんだよ」
「へぇ」
並んで歩きながら、考える。
これが朔夜だったら、どんなに幸せだろう。
やっぱり私は――
朔夜が好き。
プレゼントを渡したら、距離は近づくかな。
それとも、もう終わりなのかな。
そんなことを考えていた、そのとき。
ふと、目に入った。
二人組。
「えっ……」
思わず声が出た。
胸が苦しい。
なんで。
なんで。
そこにいたのは――
楽しそうに笑っている由奈と、
並んで歩いている朔夜だった。




