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決意の夜

家に帰り、私はさっきの会話を何度も思い返していた。


――嫌うわけねえだろ。


朔夜の言葉が、頭の中で繰り返される。


さっきとは違う意味で、体がふわふわしているみたいだった。


もしかして朔夜、私のことを――


……いや、考えるのはやめよう。


期待して、裏切られるのが怖いから。


もし朔夜に拒まれたら、きっと私の心には一生消えない傷が残る。


そんなとき、ふと蓮の言葉がよぎった。


――信じた先にしか見えないものがある。


信じた先にしか、見えないもの……。


「お前も絶対来いよ」


あのときの朔夜の声。


景色も、空気も、匂いも――全部、忘れられない。


私、期待してもいいのかな。


わからない。


でも、確かなことは一つだけある。


私は――朔夜のことが好きだ。


今も、昔も、これからもずっと。


もう、隠しきれないほどに。


隠しているつもりでも、きっと全部顔に出てしまっている。


蓮ったら、あんな嘘ばらしちゃって……。


私の気持ち、ばれちゃうじゃん。


でも――


朔夜、顔真っ赤だったな。


どうしたんだろう。


体調でも悪かったのかな。


それとも――


……照れてた?


「……まさかね」


思わず、小さく笑みがこぼれる。


そして私は、決めた。


花火大会の日。


そのとき私は――


朔夜に、思いを伝える。


もう隠さない。


隠し通さない。


まっすぐに。


この胸の中にある、本当の気持ちを。


たとえ、どんな答えになったとしても。


――逃げない。


そうして私は、目を閉じた。


不安と、期待を胸に抱いたまま。


どうか神様。


これからも――


朔夜と、一緒にいられますように。


目が覚めた瞬間、胸がざわついていた。


今日は――花火大会の日だ。


カーテンの隙間から差し込む朝の光が、やけに眩しく感じる。


「……今日、なんだ」


小さく呟いてみると、急に現実味が帯びてきた。伝えるって決めたのに、いざその日になると怖さの方が大きくなる。もし断られたら――その先のことを考えると、足がすくむ。


でも、昨日決めた。


逃げないって。


ベッドから起き上がり、ぼんやりとスマホを開くと、由奈からのメッセージが届いていた。開く前から嫌な予感がした。


『ごめん、ちょっと体調崩しちゃって花火いけなくなっちゃった』


胸がきゅっとする。4人で遊びに行けると思ったのにな。


『残念だけど仕方ないか。お大事に』


そう返してスマホを置く。


――服を選ばなきゃ。


クローゼットを開けて何度も迷う。これが似合うかな、これは派手すぎるかな。朔夜がどんなのを好きかなんて、今更考える。時間だけが過ぎていく。


結局、花柄の浴衣を選んだ。お祭りだし、これなら喜んでくれるかもしれない。鏡を見て、深呼吸を一つ――小さな笑いがこぼれる。


夕方になり、外はすっかりお祭りムードだ。浴衣姿の人たち、屋台、遠くから聞こえる楽しげな声。全部が今日を特別にしている。


私は何度も言葉を練習した。短くても真っ直ぐに伝えたい。「好き」――その一言を、ちゃんと言えるかどうか。ただそれだけを考えて、足を進める。


やがて、決戦の場所――待ち合わせている公園が見えてきた。人混みの流れに合わせて歩を進める。心臓の音が耳にうるさく感じる。


入口のところに、朔夜の姿を見つけた。来てくれている。安堵が胸を満たす一瞬があった。


私は声を張って言った。


「朔夜、お待たせ!」


できるだけ明るく。できるだけ普段どおりに。


その瞬間、朔夜は――なぜか、すっと顔をそらした。


「……え?」


胸の中で何かがひび割れるように小さく鳴った。朔夜の顔が見たくて来たのに、目が合わなかった。顔をそらす理由がわからない。佇む私の周りの空気が、急に冷たくなった。

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