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2人の運命の証明  作者: たかたか
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第9章

               青空のデッドヒート(体育祭編)



「おい、湊! お前、そのもやしみたいな体でリレーのアンカーとか大丈夫かよ?」体育祭当日。グラウンドには爆音で応援歌が流れ、砂埃と熱気が入り混じっていた。蓮が、自分のクラスのハチマキをキリッと締めながら、僕の肩をバシバシと叩く。「……不可抗力だよ。代走を頼まれたんだから、断れないだろ」「ま、お前は勉強ばっかだけど、実は運動神経自体は悪くないしな。でも、相手は陸上部のエースだぜ?」「わかってる。計算上、普通に走れば勝機は薄い」僕が溜息をついていると、背後から「気合入れなさいよ!」という凛とした声が響いた。振り返ると、そこには体操着姿の美月がいた。長い髪を高い位置でポニーテールにまとめ、ハチマキを凛々しく巻いた彼女は、クラス中の男子の視線を釘付けにしていた。「湊、もし負けたら一週間、私のカバン持ち。勝ったら……そうね、なんでも一つ、願いを聞いてあげるわ」「……なんでも?」「ええ。勉強を教えてもらうでも、どこかに連れて行けでも、なんでもよ」美月はいたずらっぽく笑い、僕の胸元に指先を突き立てた。「その代わり、死ぬ気で走りなさい。私の『婚約者(仮)』が不甲斐ない姿を見せるのは、私のプライドが許さないから」「……その条件、乗った」僕の思考回路が、一瞬で「勝利」へ向けてフル回転を始めた。女子100メートル走では、美月が圧倒的な速さを見せた。「美月、速すぎ……! あんなに体力あったんだな」隣で見ていた陽葵が目を丸くする。美月はゴールを駆け抜けると、観客席の僕に向かって不敵にピースサインをしてみせた。その頬が少し紅潮し、呼吸がわずかに荒いのが気になったけれど、彼女の笑顔があまりに眩しくて、僕はそれを「全力疾走のせいだ」と自分に言い聞かせた。そして、いよいよクラス対抗リレー。バトンが繋がっていく。僕のクラスは三位。前の走者と五メートル以上の差。「湊ーー!! 行けーー!!」美月の絶叫が、耳に届いた。バトンを受け取った瞬間、僕は地面を蹴った。物理学的な重心移動、効率的な腕の振り。そんな理屈はすべて後回しだ。ただ、「願いを叶えてもらう」という非論理的な欲望が、僕の脚を前に突き動かした。コーナーで一人抜き、直線で二人目と並ぶ。肺が焼ける。心臓がうるさいほどに脈打つ。ゴールテープを切った瞬間、僕は頭から砂に突っ込んだ。「……一位だ! 湊、お前マジかよ!」蓮が駆け寄ってくる。視界の端で、美月がフェンスを乗り越える勢いでこちらに走ってくるのが見えた。「湊! 湊、大丈夫!?」砂まみれの僕の顔を、彼女がタオルで丁寧に拭く。「……美月。一位だ。約束、忘れるなよ」「バカ……こんな時までそんなこと。……わかったわよ。願い事、考えておきなさいよね」二人で土まみれになりながら笑い合う。それが、僕たちの青春が最高潮に達した瞬間だった。

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