第13章
沈みゆく太陽
楽しい日々は、砂時計の砂が落ちるように、無慈悲に過ぎ去っていった。帰国後、季節が春を迎える頃、美月の容体は急激に悪化していった。あんなに透き通るようだった肌は土色になり、頬は削げ、手足は枯れ木のように痩せ細っていった。彼女は一日の大半を眠って過ごすようになり、時折目を覚ましても、僕の顔を認識するのに時間がかかるようになった。「……湊。……私、もうすぐ、あっちのひまわり畑に、行くね」「何を言ってるんだ。まだ、数学の宿題が残ってるだろ」僕は必死に声を震わせないようにした。そして、六ヶ月目の最後の日。美月は驚くほど穏やかな表情で、僕の顔を見つめた。「湊……。……幸せ、だったよ。……私の、大好きな、旦那さん……」それが、彼女の最期の言葉だった。美月の心臓が、その機能を完全に停止した。僕は、冷たくなっていく彼女の体を抱きしめ、枯れるまで泣き続けた。学年一位の秀才が、一度も解けなかった「死」という難問に、完敗した瞬間だった。
氷の眠り、新たな証明の始まり
ところが、物語はそこでは終わらなかった。美月が搬送された大学病院。そこで、僕は驚くべき提案を受けることになる。「湊くん。……彼女の遺体を、冷凍保存しないか」それは、現代の医学では助けられない患者を、未来の技術に託すための「賭け」だった。「いつか、人工心臓が完成し、医療が今の限界を超えた時……彼女を蘇生させることができるかもしれない」絶望の淵にいた僕にとって、その言葉は唯一の光だった。僕は躊躇なく同意した。美月の体は、特殊な溶液に満たされたカプセルの中で、静かに、永遠のような眠りについた。「待ってて、美月。……今度は僕が、未来から君を迎えに行く」




