第1章
初めてなので文章がおかしいかもしれませんがどうか暖かい目で見てください
学年一位の平穏と、氷の転校生
「……よお、聖花高校の生ける計算機。今日も朝から数式とランデブーか?」
九月の月曜日。まだ夏休み気分の抜けない教室で、一番に僕の席へやってきたのは親友の**蓮**だった。彼は校則ギリギリの茶髪をかき上げながら、僕の机に広げられた参考書を覗き込んで、わざとらしく顔をしかめる。
「おはよう、蓮。ランデブーじゃなくて復習だよ。二学期は模試も多いし、気を抜くとすぐに順位が下がるからね」
「出たよ。お前のその、一位以外はゴミだと思ってそうなストイックさ。少しは陽葵を見習えよ。あいつ、夏休み最終日まで宿題の手をつけずに、昨日の夜泣きながら電話してきたぞ」
「ちょっと、勝手に人のプライバシーを売らないでくれる?」
背後から鋭い声が飛んできた。振り返ると、ポニーテールを揺らした**陽葵**が、般若のような顔で立っていた。僕と彼女、そして蓮は中学からの腐れ縁だ。
「湊、あんたもよ。蓮がバカなのは今に始まったことじゃないけど、あんたはあんたで、たまには息抜きしなさいよね。高校生が休み時間に重積分解いてて楽しい?」
「楽しいというか、これが僕の日常だからね。一位を維持するのは、僕にとってのアイデンティティみたいなものなんだ」
そんな、いつも通りの、平和で退屈な日常。
それが、ホームルームのチャイムと共に現れた「彼女」によって、跡形もなく崩れ去ることになる。
「今日からこのクラスに編入することになった、水瀬美月さんだ」
担任の声に導かれるように入ってきた少女を見て、教室中の空気が一変した。
窓から差し込む朝日に照らされた彼女は、現実味がないほど美しかった。腰まで届く夜の色の髪、意志の強さを感じさせる切れ長の瞳。
僕は、その名前に一瞬だけ思考が止まった。
(……水瀬、美月……?)
どこかで聞いたことがある。それも、ずっと遠い昔に。
だが、記憶の糸を辿ろうとする僕の思考を、彼女の視線が遮断した。
美月は教室を見渡し、僕と目が合った瞬間、その瞳に「明確な嫌悪」を宿した。
それは、道端の石ころを見るような冷たさではなく、裏切り者を見つけた時の、激しい怒りと悲しみが混ざったような色だった。
彼女は僕の隣の空席に案内されると、挨拶もせず、ガタンと音を立てて椅子を引いた。
「……よろしく、水瀬さん。僕は水瀬湊。偶然だね、苗字が同じだ。何かわからないことがあったら聞いて――」
「死んでも聞かないから。話しかけないで」
……。
教室が、静まり返った。
あの蓮ですら、「うわ、まじかよ」という顔で固まっている。
陽葵は、僕と美月の顔を交互に見て、何かを探るような目をしている。
僕は、生まれて初めて、論理的に説明できない「拒絶」に直面し、ただペンを握りしめることしかできなかった。




