表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元盲目の少年、異世界で『観測者』になる。 ~灰色だった世界が美しすぎるので、最強の眼で観光してたら伝説になっていた~  作者: ベキー
第2章_水上都市の透明な悪魔

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/22

【第6話:水の都アクアリスと、ゴンドラ漕ぎの少女】

迷わずの森を抜け、乗り合い馬車に揺られること数日。

 俺、セツナはついに目的の地へと辿り着いた。

 大陸西部に位置する『水の都アクアリス』。街全体が湖の上にあり、無数の運河が走る美しい都市だ。


「……すごいな」


 大水門をくぐった瞬間、視界いっぱいに広がった光景に、俺は息を呑んだ。

 太陽を反射して輝く水面。白亜の建物。行き交う色とりどりの小舟ゴンドラ

 前世の灰色の記憶とは対極にある、圧倒的な「青」と「光」の世界。

 右目の『封魔のレンズ』越しでも、その感動は色褪せない。


(来てよかった……)


 師匠の『目立つな』という言いつけを守り、俺はフードを目深に被って船着き場を歩いた。

 今回の目的は観光だ。年に一度、運河が星空のように発光する奇跡『星降る夜』を見に来たのだ。


「きゃっ!?」


 悲鳴が聞こえた。

 見ると、ゴンドラ乗りの少女が、柄の悪い男たちに囲まれている。ショバ代を払えと難癖をつけられているようだ。

 関われば目立つ。無視すべきだ。

 だが、俺の眼は余計なものを見てしまった。少女の手足にある、努力の証である無数のマメと古傷を。


(……努力している奴が報われないのは、嫌いなんだよな)


 俺は足元の小石を拾い、指先で弾いた。

 風切り音すらしない指弾が、男の膝裏の腱を正確に掠める。

 男は盛大に体勢を崩し、そのまま運河へダイブした。


「ぶはっ!? 足を滑らせたのか!?」


 騒ぎの隙に、俺は少女に声をかけた。

「観光に来たんだが、君の船、空いてるか?」

「え……あ、はい!」


 少女――リリアのゴンドラに乗り込み、俺たちはその場を離れた。

 リリアの操船は悪くなかったが、複雑な水流に時折船が揺れた。


「右に寄せて。そこ、逆流が来てる」

「え?」


 俺が水の色温度や流れの歪みを見て指示を出すと、船は氷の上を滑るようにスムーズに進み始めた。

「すごい! どうしてわかるんですか!? まるで水の精霊みたい……」

「勘だよ」


 その後、市場で「一番脂の乗った魚」を透視して当てたり、橋の上で行われていた賭け事で、イカサマ師が掌にボールを隠しているのを見破って成敗したりした。

 リリアは目をキラキラさせて俺を見てくる。

 少し目立ちすぎただろうか。


 だが、そんな穏やかな観光は、中央広場に漂う不穏な空気によって遮られた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ