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元盲目の少年、異世界で『観測者』になる。 ~灰色だった世界が美しすぎるので、最強の眼で観光してたら伝説になっていた~  作者: ベキー
第1章 紅蓮の瞳と見えない師匠

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【第4話:見えない魔女と、心眼の修行】

目が覚めると、森の中の小屋にいた。

 助けてくれたのは、やはり「目の見えない」女性だった。


「あんたは一体?」

「この森の管理人さ。……お前、いい眼を持ってるのに、使い方が全くなってないね」


 彼女は包帯をしたまま、迷いなくスープを作り、俺の横に置いた。

 俺は床に頭を擦り付けた。


「頼む。俺に修行をつけてくれ! 俺はもっと世界を見たいんだ。あんたのその『見ないで見える』技術を教えてくれ!」

「……誰がババアだい」

「えっ、言ってないぞ!?」

「顔に書いてあるよ。ま、いいさ。……地獄を見るよ、ガキ」


 修行は理不尽だった。

 「視覚を捨てな」と渡されたのは、分厚い黒布の目隠し。

 視界が完全に閉ざされた瞬間、俺の胸を去来したのは奇妙な「懐かしさ」だった。

 色がわからず、輪郭も常にぼやけていた前世の記憶。あの心細い世界。


(……嫌だ。こんな真っ暗な世界で生きてたまるか)


 俺は焦った。だが、師匠ババアは容赦なかった。

 「気配だよ。音、風、殺気……世界は光以外でも『形』を成している」

 来る日も来る日も、木の実を投げつけられ、棒で殴られた。

 だが、一ヶ月も過ぎると、俺の中に「音と気配による立体的な空間把握」が芽生え始めた。


 そして、ある日の組手。

 俺は勝ちたい一心で、禁じられていた目隠しを自ら引き千切り、右目をカッと見開いた。

 今の感知能力に、あの「最強の眼」を足せば勝てると思ったのだ。


 ――キャパシティ・オーバー。


「ぐ、ああああッ!!?」


 右目が焼けるように熱い。視界が真っ赤に染まり、空間そのものがねじ切れるように発火した。

 制御不能の魔力が逆流し、俺の脳を焼き尽くそうとする。


「馬鹿野郎ッ!!」


 師匠が燃え盛る暴走魔力の中に飛び込み、俺を抱きしめた。

 彼女の手から冷却魔法が流し込まれる。


 目が覚めると、右目には重たい眼帯が巻かれていた。

 師匠の包帯の一部が焦げているのが見えた。俺を助けた時の傷だ。


「お前のその右目は『災厄』だ。強力すぎるがゆえに、身を滅ぼす。……心が眼に追いつくまでは封印しておきな」

「……ごめんなさい」


 俺の謝罪に、師匠は乱暴に俺の頭を撫でた。

 その手は、ゴツゴツしていたが、温かかった。

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