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元盲目の少年、異世界で『観測者』になる。 ~灰色だった世界が美しすぎるので、最強の眼で観光してたら伝説になっていた~  作者: ベキー
第2章_水上都市の透明な悪魔

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【第10話:進化する瞳と、水面斬り】

最深部の地底湖。

 そこには、トニオたちを捕らえた全長20メートルの巨大なボス――透水竜クイーンが待ち受けていた。


「キシャアアアアッ!!」


 ボスが咆哮すると、水飛沫が鏡となり、百体もの竜の幻影が作り出された。

 視界を埋め尽くす透明な殺意。どれが本物かわからない。

「数が多すぎる! これでは攻撃できん!」

 ガレットが絶望の声を上げる。


 だが、俺は違和感を覚えていた。

 「遅い」のだ。

 昨夜見た『星降る夜』。あの数百万の光点の複雑な揺らぎを、一晩中見続けていた俺の脳にとって、たかだか百体の分身など、止まっているも同然だった。


(……そうか。あの絶景が、俺の眼を成長させたのか)


 脳内で新たな回路が繋がる音がした。

 ――眼球能力進化:『多重並列処理マルチ・プロセス


「ガレット隊長、動くなよ」


 俺は群れの中に飛び込んだ。

 ヒュン、ヒュン――。

 正面を斬り、背後を弾き、足元を蹴る。まるで千の手を持つ阿修羅のように、全方位からの攻撃を同時に処理し、最小限の動きで捌いていく。


「な、なんだあの動きは……!?」


 俺は幻影の海を泳ぎきり、本体へと肉薄した。

 乱反射の中に紛れた、わずかな「質量」のある歪み。そこが赤く光って見える。


「そこだ」

 ――剣技・『瞬刻・連』


 すれ違いざまの神速三連撃。

 一撃で障壁を砕き、二撃で肉を断ち、三撃で核を貫く。

 時間が動き出し、百体の幻影が弾け飛んだ。


 子供たちが救出され、リリアとトニオが抱き合う。

 地下水道を出ると、再び『星降る夜』が街を青く染めていた。

 俺は橋の欄干に座り、進化した眼でその光を貪った。


(……次は、どんな景色が待っているんだろうな)


 翌朝、俺は誰にも告げずに街を出た。

 リリアへの書き置きには、こう添えて。


『最高の夜景だった。おかげで、いい目の保養レベルアップになったよ』


 意味深な言葉を残し、独眼の旅人は次なる街――芸術の都へと歩き出した。

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