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004、弟の名は

 現時点での魔法ポイント:5


【安全安眠】20までは長い。

 それでも、この調子で色々と作っていけば、ポイントは低いのに有用そうな魔法を揃えれそう。


 そう、【清拭除菌】5とかね。


 やはり衛生面、気になるのよ。

 昨夜の弟のぐずりも、カビ臭く埃っぽい我が家のヤベエ環境が原因な気がするのだ。不快だよね。わかる。


 というわけで、【清拭除菌】5を取得。

 魔法ポイントは全て無くなってしまったが、後悔はしない。


「【清拭除菌】」


 先ずは、お試し。自分に向かって魔法をかけてみる。


 わわわっ、濡れたタオルで体を拭いた後のようにスッキリしたぞ。髪の汚れも落ちたようで、ベタベタ感が無くなった。

 私の髪、およそ五歳児とは思えないゴワゴワ剛毛だったからね。

 今はサラサラ。直毛の黒髪を手櫛で梳いたら、シルクのような肌触り。なにこれ、すごぉい。


 そして1ポイントゲット。

 vol.1『魔法を使ってみよう!』で、どんな魔法でも発動時に1ポイント入るのだ。


 よし、弟にも【清拭除菌】だ。

 そ~ら、清潔になってしまえ~~。


「お、弟よ。じっと私を見てるね。気持ち良かった? スッキリしたでしょ。これからは汚れる度に魔法をかけてあげるからな」


 ついでに、その辺の物にも【清拭除菌】しまくった。

 布オムツ、よだれふき、ベッドも毛布も、我が家唯一の箪笥にも、家中の物品に魔法をかけまくった。


 すると、なんということでしょう。

 あっという間に20ポイント貯まりました。先は長いと思っていたけど、意外とすんなりいけた~うふふふ、やったあ~ああぁ……あれ? 目が回るよ。これは、ナニ? どした私?


 目の前が暗転した。


 次に目を覚ましたのは、夜。

 暗い部屋の中、暗い天井を見つめる。


「知ってる天井だ……」


 ええ、我が家の納戸。今世、私の部屋。

 いつもよりカビ臭くなくて、あ、これは昼間に調子こいて魔法かけまくったからだと気づく。


 で、思い至ったのは……。


「魔力切れ」


 な、気がする。


 あれから、どれくらい寝たのか知らないけれど、魔力が底をついたら倒れるのね。よし、学んだ。私は学ぶ女。


 起きたってことは、少しは回復したということだと思う。

 自分の魔力量は【Data】に載ってなかったなあ。

 この世界の人は、どうやって魔力量を測るのだろう?


「ぷひぇーん」


「ふぁ!? 弟ーおぉぉ!」


 泣いている。弟が。私の可愛い弟が……!

 急いで納戸開けて弟の声がする方へ。


「チッ、泣くな。うっせえな。酒が不味くなるじゃねえか」


 ぎゃー! アル中親父がいやがる! 教育に悪い!

 酒呑みは不機嫌だ。いつ弟に暴力を振るうか分かりゃしない。今のところDVには至ってないが、時間の問題だと思う。


 机に転がされ、泣いている弟を抱き上げる。【身体強化】は普通にできた。これくらいなら、魔力は戻っているらしい。

 おかげで21ポイントになった。


「よしよし、弟、おしめか? あ、マンマだ。お腹すいたよな。ごめんよ、姉ちゃん寝てた」


【育児収納】から母乳と布切れを出し、慌てて弟にご飯をあげる。

 さり気に1ポイント追加。【育児収納】は出すだけで1、入れても1だ。


 弟、勢いよく、母乳を含んだ布切れに吸い付いた。

 良かった。元気だ。これだけウマウマしてくれれば、安心だ。


 暫く、弟に乳をやりながら、「やってみよう!」を眺めていた。


 vol.2『つくってみよう!』のベビースリング作りしようかな。


 □ベビースリング[材料][動画]


 材料は、簡易おんぶ紐・大きな布・裁縫道具か。

 簡易おんぶ紐はもう作ったのあるから、探すのは大きな布と裁縫道具。

 家の中にありそうじゃない?

 そう思ったら金色矢印が出た。宙にぷかぷか浮いている。


「おい、お前ぇ、寝てなくて大丈夫なんか?」


「はえ?」


 ん? 急に父に話しかけられたぞ。金色矢印は眩しくないのだろうか?

 父は酒に夢中だったから油断していた。大分おかしな生返事をしてしまったよ。


「倒れてただろうが。どこか悪いんじゃねえのか?」


 なんと、魔力切れで倒れた私を発見、納戸ベッドまで運んでくれたのは、父だった。


「大丈夫。たぶん、魔力切れだからさ」


「は? 魔力? 魔法でも使ったってか?」


「そうそう」


 適当に返事しといた。アル中親父にはこれで十分。

 父親の目の前で、【育児収納】使いまくっているのに気づいてないし。どうせ私の話なんか、まともに聞いてないのだ。


 弟の授乳が終わったので、ゲップトントン。

 けぷっと小さな空気を漏らした弟。はぅん、マジ可愛い。


 ゲップしてもまだ乳が欲しそうだったので、再度の授乳タイム。

 欲しい時、どんどんあげるのが私流の育児だ。


「そうだ。弟の名前、まだ?」


 気になってたのだ。命名してあげて、父よ。

 この国は戸籍制度じゃないみたいで、役所に名前届けには行かなくていいらしいが、格好がつかないじゃないか。

 はよ、名前。


「ケッ、誰がンなもん、つけるかよ」


 あーもう、またこれだ。このところの堂々巡り。

 自分の種じゃない子には名前つけないのは、兄も姉もそうだったらしく、期待はしてない。でも、名無しなんて可哀想でしょ、弟が。


「もう、それじゃあ私がつけるよ。後で文句言うんじゃねえぞ」


 ドスの効いた声で忠告したら、父親の顔が引き攣った。酒で赤らんでた顔が一気に冷めたような顔に。


 ……何だろう、母親の乳搾り体験してから、父親のこういう変な顔を、よく見るようになったな。


「実は名前、ずっと考えてたんだ。弟はとっても可愛いから、幸せになって欲しい。その為には、金運・幸運に恵まれないとね──────ユリシス」


 ユリシスは私の好きな蝶の名前。

 和名はオオルリアゲハ。金運と幸運、そして幸福の象徴。オオルリのその名の通り、綺麗な瑠璃色の翅をもつ蝶々なのだ。

 弟の瞳や髪の色がキラッキラの青系統の色で、そこから着想を得たともいう。


「ユリシス」


 もう一度、そう呼んだら、弟がニッコリ笑った気がした。

 新生児微笑、テラ尊い。


 私の腕の中で寝入ってしまった弟ことユリシスを腕の中に抱いたまま、ゆっくりと立ち上がり、金色矢印を追いかけることにした。


 矢印の指し示す方、それは母親が使っていたベッド……の下、ん? エロ本か?

 いや違ってた。裁縫箱だ。

 なぜかベッドの下に裁縫箱を仕舞っておく母親。埃被ってんぞ母親、カスリーナめ。


 片手で蓋を開けて中を覗けば、針・糸・端切れに糸切り鋏と、それなりに一揃えあるっぽい。


 刺繍に使う用品も収納されていた。

 母親が刺繍している姿なんか見たこともない。嫁入り道具で持ってきただけな感じかなあ。


 丸型の刺繍枠の下には畳まれた布。木綿だ。広げれば大きく、丈夫そうである。


 金色矢印は消えたので、これで材料は揃ったみたい。

 vol.3『手に入れよう!』も、裁縫道具と大きな布の□にチェックが入っていた。

 これでダブルポイントでプラス4。ひゃほう。順調順調。


 最後に動画を観て、観終わったら1ポイント入り、ベビースリングができあがり、材料に使ったおんぶ紐が消えた。

 はい、不思議。


 只今の魔法ポイント:27


 よっしゃ。【安全安眠】20ください。取得したら早速、使う。

 絶対安全フィールドは周囲360度ドーム型に展開。私と弟ユリシスが眠るベッドを囲う大きさに調整可。

 まだ大きくできる気がするけど、家の中で寝るのだから、これでいいのだ。


 フィールド展開したら、小虫が飛ぶ羽音が聞こえなくなった。虫除け効果もあるとか素晴らしい!


 これで今夜は快適に眠れる。

 良い夢、見れますように。


 隣で眠るユリシスの微笑みを眺めながら、おやすみ。

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