021、買い物
市場の真ん中ら辺に来た頃、Dataの『やってみよう!』が明滅し出した。
vol.2『つくってみよう!』と、vol.3『手に入れてみよう!』に更新があるようだ。
vol.2『つくってみよう!』
□パン種[材料][動画]
□米類を使った離乳食[献立一覧]
□麦類を使った離乳食[献立一覧]
□豆類を使った離乳食[献立一覧]
□芋類を使った離乳食[献立一覧]
□果物を使った離乳食[献立一覧]
□野菜を使った離乳食[献立一覧]
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お料理レシピ解禁である。
先ずは酵母を作るところから始めるらしい。
「…………」
そりゃそうだよ。生まれてこの方、ドライイーストなんて見たことないし。酵母菌はきっと各ご家庭で育てるものなのだろう。
[献立一覧]に触れたら何種類もの離乳食レシピが出てきた。
例えば、お米だと重湯やお粥さん。麦だとパン粥、麦芽糖、麦茶など。
それぞれに動画があったので観てみたら、パンダ神たちがお尻フリフリしながら料理していた。
ザ・プリティ尻クッキング。
見終わっても料理はできない。材料を手に入れていないからだね。
vol.3『手に入れてみよう!』
□飲料水[一覧]
□乳飲料[一覧]
□米類[一覧]
□麦類[一覧]
□豆類[一覧]
□芋類[一覧]
□果物[一覧]
□野菜[一覧]
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飲料水と乳飲料には、既にチェックマークが入っていた。
どういうことかと[一覧]をタップ。
□飲料水[一覧]
┗魔法水、井戸水、湧水
□乳飲料[一覧]
┗母乳、動物の乳、魔物の乳
魔法水と母乳だけ色が違うな。既に手に入れているからだと思う。
母乳は確かに【育児収納】に入っている。
魔法水は……。
どうやら、我が家で使っているのは魔法水だったようだ。初めて知る事実。
日々の生活で使う水は、父が水瓶に満たしておいてくれる。貧民街に上水道は通ってないし、共同井戸から汲んできてくれているのだと思っていたが、魔法で出していたらしい。
そういうとこ無駄にデキるのな、父……。
そしてその水は、必要な分だけ【育児収納】にも取り置きしてある。これで手に入れた判定になったっぽい。
米と麦も見てみる。
□米類[一覧]
┗粟米、黍米、黒米、赤米
□麦類[一覧]
┗小麦、大麦、黒麦、燕麦
食材名をタップすれば、勝手に【飲食探知】スタート。無論、【悪意感知】と【世界地図】も連動だ。
「こいつぁ便利だぜええ」
地面に広がる【世界地図】。視界の端に小さくもできるけど、敢えての等身大で金色に光る道を歩く。金色の道は私にしか見えていないようなので、気にせずウォーキング。
穀物屋に辿り着いた。大柄なおじさんが店番をしている。
ざっと見渡す限り、一覧にあったもの8種類全てが売っていた。
穀物は量り売りのようだ。大中小の袋のどれかに欲しい量を入れてもらう。
計量するのは大きな秤。片方にインゴットが積まれ、釣り合ったところで値段が決まる。
「これら8種類、大きい袋ひと袋づつ下さい。全部満タンで」
ハイオク満タン並に堂々と注文してみた。
「おう、毎度あり。お使いか? 屋敷はどこだ? どこに届けりゃいい?」
「いえ、自宅用です。自己消費します。今、持って帰ります」
「は? 大人をからかうんじゃねえ」
「大丈夫。イケます」
マザーバッグに突っ込むふりして【育児収納】へ。おじさんの目の前で8つの穀物袋が消えた。
「あざまーす」
目を剥くおじさんを他所に、ささっと御礼を言ってその場を離れてしまう。
お代ですか? もう支払ってありますよ。
米類は大袋満杯で小金貨一枚くらい。麦は米の半額ってことで、合計小金貨6枚を置いてきた。おじさんもそれでいいと言ってたし。
おじさん、かなりのどんぶり勘定だよね。
ちなみに米も麦も籾のままだ。
タッタカターと軽快に走りつつ、次は当初の目的である野菜サーチ。
唐突に響くブッブー音。【悪意感知】が作動したようだ。
「こ、これは……」
なんということでしょう。見るからに萎びた葉物野菜と、腐りかけの緑黄色野菜たちが……。
こんなものを売りつけようと売り場に並べる行為を悪意と捉えたのだろう。
この露店では買わないぞ。
別の店舗へ行き、蕪や大根などの根菜類と、馬鈴薯などの芋類を中心に買う。
どれも個別売りだ。自分で、中まで虫が食っているやつを見分けなければならない。
前世では、仕事帰りに百貨店のスーパーに寄り、パック詰めのものを買っていた。あれは、お店の目利きを信用する買い方だったのだと今更ながらに気づく。
今世では、【悪意感知】がある。
手に取り、ブッブーではなくピンポーンと正解音が鳴ったやつを買えばいい。便利だあね。
根菜類と芋類は中袋一袋に目いっぱい買い込む。
たくさん買えば、こうやって袋はオマケで付けてくれるのだ。
緑黄色野菜は、やはり今の時間帯ではろくな物がないらしい。朝市に行った方が新鮮で良いものが手に入るっぽい。
さっきそこの芋屋のおばちゃんに聞いた。
芋屋では芋煮も売っていたので、持っていた鍋いっぱいに入れてもらって銀貨5枚を支払う。
銀貨は先程の買い物のお釣りで手に入れたもの。
銀貨一枚は日本円にして約千円、銀貨5枚で約五千円。
それより鍋をどうしたって? はっはっは、これは昨夜の帰り道で拾ったやつだよ。
廃材置き場に寄ってみたのだけどね。ゴミの宝庫だったよ。
全部いただいた。
嘘じゃない。比喩でもない。廃材が山と積んであったのだ。要らないから積んであるのだ。全て貰って何が悪い。
ゴミ山の全てを【育児収納】に入れた。
その中にあった鍋。超絶汚い。【清拭除菌】しまくり。底はもう薄く剥げてもいるが、芋煮を入れるだけなら大丈夫だ。問題ない。
ほら見て、美味しそうな芋煮が泳いでいる。いい匂い。
ゴミ山の中には適当な木板もあったので、これを蓋代わりにして、芋煮を【育児収納】へと突っ込む。
食べ物を廃材に混ぜるなんて汚くないかって? 問題ない。廃材とは別フォルダに入れたから。
なんと、【育児収納】の中は仕切りでもあるのか、それとも空間が離れているのかは知らないが、Dataからフォルダ分け画面が視覚化され、【育児収納】の中を自分で整理整頓できるのだ。
自動仕分けより手動に拘るところが、好感が持てるね。勝手に仕分けられちゃうと忘れてしまうこともあるからさ。
『そう思うなら、我を呼べー!』
何やら聞こえたが無視したら、『ぐわー! 闇のぉぉっ』と泣きながら遠ざかって行った。
きっと闇精霊にヨシヨシしてもらうのだろう。ほんと仲良しだな。
精霊王たちの愉快な会話
?『ぐわー! どうして我は呼ばれんのだー! エアリーが我のこと無視するのだー! 闇の、闇の、お前はエアリーに認知されたのだろう? うらやまけしからん!』
闇『けひひ。気づいてはもらえたけどぉ、召喚には至ってないしぃ』
風『ぷきゃきゃ~。精霊帝であるチミが召喚されれば~、みんなで遊びに行けるのにね~え』
火『精霊帝は鍛え方が足りんのだ。共に筋トレしようじゃあないか!』
?『え、我は、しんどいの嫌だし。筋肉よりレトロゲームしたいし』
水『わかります。この、流れるように画面が進み、追い立てられるかのようにアイテムを取りジャンプする……ゾクゾクします』
地『水がプレイしておるそれ、第三世代GBぞ』
光『嗚呼、土管に吸い込まれました……心が、痛い……』
闇『光ぃ、メンタル激弱ぁ』
別によしよしはされんのでした。




