002、乳搾り
困った私は、もう一度アレを出すことにした。
隠れステータスとかあったらいいなとか、それでこの状況を打破できるものが見れないかなという期待を込めて……。
「【Data】」
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《Data》
名前:エアリー
種族:人間
性別:女性
年齢:五歳
称号:【異界より招かれし転生者】
→Dataを閲覧せし者に贈られる称号。転生した世界の多数派言語の読み書きを取得している。
固有魔法:【子育て魔法】
→常時発動魔法。子育てに必要な魔法を取得し、魔法コントロールに長け、早期習熟する。
魔法ポイント:5
→やってみよう!をこなすと貰えるポイント。ポイントを消費して魔法を取得できる。
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やった! 最初より詳しく出た。
子育て魔法が使えるらしい。成長率の高いパッシブスキルって感じ。
魔法ポイントが5って年齢と同じ数字だ。もしかしてこれまでにも年に1ポイント、貰えていたということかもしれない。
ポイント消費することで魔法を…………。
──────これだ!!!!
魔法を使えるようになれば、きっとこの場も切り抜けられる。
どうすれば魔法取得できるのやら……と、魔法ポイントの文字を見詰めていたら、魔法一覧が追加された。
おお! さすが異世界転生、わけわからん!
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【接触転移】100
→我が子を抱っこかおんぶをしていれば、どこにでも転移できる。【世界地図】30と連動可。
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【育児収納】20
→子育てに必要な物品を際限なく収納可。離乳食も温かいまま。ミルクの作り置きに最適。
【安全安眠】20
→周囲に絶対安全フィールドを展開し、疳の虫を鎮め、こどもに幸せな夢を授けます。様々な力の回復増、防音効果もありますよ。
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【気配察知】10
→生き物の気配が読めるようになるよ。これで子供の悪戯も見逃さないよ!【世界地図】30と連動可。
【悪意感知】10
→他人の負の感情を読めるようになるぅ。悪いごはいねえがあぁ。けひひ。【世界地図】30と連動可。
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【清拭除菌】5
→こどもってすぐ汚しますよね。そんな時、この魔法一発で、ささっと清め拭き、さらに除菌もします。清潔なのは良いことです。
【身体強化】5
→子育てに必要な体力を強化。これでお前もムキムキママだ。敵は討つべし。打つべし。撃つべし。
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【母子手帳】1
→父母と子供の記録ノート☆日々の健康状態を余すことなくメディカルチェック☆
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こ、これらが魔法……?!
一部分、目に付いたのだけ読んでみたけど、説明書きがそれぞれ個性的だな…………。
敢えて、つっこまないぞっと。
魔法名の横の数字は消費魔法ポイントだろう。
どれも使えたら便利で、全部取得したい。しかし残念ながらポイントが足りない。うーん。
ポイントを貯める手段はあるようだけども……。
取り敢えず今、必要なのは……。
「【身体強化】」
チカラが身体中に漲る。
手を、グーパーしてみる。
感覚でわかる。このままこのチカラを思いっきり使ったら、熟した果実を潰すようにグシャッとしてしまうだろう。
何をとは言わない。
両親はまだ戸口で罵り合っている。本当に元気な人たちだ。
そんな人たちなら、使い慣れないチカラでも、安心して使えるというもの。
母親の足首を掴み、引き摺り倒す。
「ギャアアッ!」
色気のない悲鳴だなあ。
五歳児の身長なので、足首を持って倒した方が効率良かったからそうしたのだが、下半身オッパッピーになってしまった母親の、産みたてグロテスクな門を目撃してしまった。
……私、ぜったい産婦人科には勤めれないわ。
お医者さんには頭が下がる思いです。尊。
そしてこんなになってまで産んでくれるお母さんにも感謝です。が、
「放しなさい! 何すんの、このクソガキが……! 私に触るんじゃないわよ!」
この母親には感謝できない。
可愛い弟を産んでくれたことだけを感謝しよう。
弟は可愛い。とてつもなく可愛い。
エルフの子だからなのか、産まれたてなのに造形が整っていて人間とは違うのだよ人間とはとドヤ顔で言ってきそうな顔である。どんな顔やねん。
おっと、セルフつっこみ、お恥ずかしい。
恥ずかしさを誤魔化すためではないが、引き摺り倒した母親の上半身もひん剥いて、乳を掴む。
がしっっっっと。
そして、ぎゅっ、ぎゅっと、揉む。
「イタッ! 痛い痛い!!」
うるさいなあ。手足を振り回してきて邪魔なので、両肩の骨と膝の関節を外した。
グイッと引っ張っただけだが。
それだけなのに「ギアアアア」って叫ぶから、「ご近所迷惑だから静かにね」と、猿轡を噛ませた。ちょうどそこに産む時に使った玉口枷があったので。
イキんで舌を噛まないよう、口の保護をするための道具らしい。へえー、そんなのあるんだ。
ボールギャグみたいな見た目だね。
感心しつつも、これで煩くなくなったし暴れなくなったので、乳を揉む。
すると間もなく、乳首から初乳が零れ落ちたのだった。
おくるみに包まれた弟を優しく抱っこ。
「おい、そこのダメ男、父親よ。可愛い弟におっぱい飲ませたいから、BBAの体を起こして……そうそう、そのまま縦にして。支えてろよ。そいつの骨外したから、ふにゃふにゃだから支えないと乳も飲ませれない」
若干ボケーとしている父親を使い、初乳をあげやすい位置に母親の体をスタンバイさせる。
腕の中の弟をおっぱいに近づけさせれば、本能なのか口をちゅぱちゅぱさせ、乳首にチューっと吸い付いた。
「よーしよし、上手に飲むね君は。吸引力もよし。産まれながらのテクニシャンだ。遠慮なく飲むんだぞ。足りなくなっても私がこいつの乳搾りまくってやるから、気にせず飲みまくるがいい」
「搾るって……」
父、なんか青ざめているけど、私に視線を合わせてきたから応えてあげよう。
「んーああ、そうね、最初は出にくかったりするから、乳揉んで搾るの。やらなくても出る人は良いけどね。こいつみたいに赤ちゃんにあげないでサボってると、乳腺が詰まるから。腫れて痛い思いするのはこいつだけどね。可愛い弟のためにも搾って出した方がいい」
この母、これまでの育児で、まともに乳をあげたのは最初に産まれた兄だけらしい。
次の姉は放置。浮気相手のところに入り浸り、家にすら帰らず。
その次の私も放置。父に似ていて可愛くないという理由で育児放棄したのだとか。
クソ母ですな。
そして今回、可愛い弟の泣き声を聞いても母乳を垂れ流さなかった母親のおっぱいは、私が揉むことにした。
そうです。私が妖怪乳搾りおばさんです。
弟はひとしきり飲んで、背中トントンしたら、けぷっと息を吐いた。
ゲップまで可愛いとは……メロメロだ。
母親は気づいたら意識を失っていたので、分娩台の代わりにしていた産後でぐちゃぐちゃになってしまったベッドにぶん投げ。弟が、お腹すいたと泣いたら乳を吸わせるだけの、できたて母乳搾り出しBBAと成り果てたのだった。
こうして、私の子育ては始まった。
五歳児に子育ては無理じゃないかって?
弟が可愛いから問題ない。前世の子育て記憶もあるし。
だいたい、弟は耳がとんがったエルフ様なのだぞ。絶対イケメンに成長する。
この世界でも例に漏れず、エルフは男女ともに美しいと評判だ。英知に優れ、魔法に長け、麗しの美貌を持つ。と、長所が三拍子揃ったらば、それはエルフ様のことよ。
弟の将来が楽しみ!