第7話
「……ところで、こはるんのとこにも使用人さん来ました?」
「来た来た。メイドさん」
「……そ、そっすか」
そっかぁ……。お互い異性の使用人をつけたわけじゃないのか。てっきりイケメンの執事とかかと思ったのにな。
正直女の人だと緊張するんで、出来れば男が良いんだけど。
「どしたの? 浮かない顔してるよ」
「あの、えっと……。緊張、するから、異性じゃない方が良くて……。こ、こはるんの所はどうかな、と」
「あー、奏くんのところもメイドさんだったんだ」
男なら喜ぶとおれも思っていたよ。だけども実際、こうして本当に使用人として来たらさ、普段女の子と関わりのないコミュ障には割としんどかったっていう。同性が良いです。はい。
「なるほどねぇ。確かに私ももし男の人だったら嫌かも。というかそもそも、私達って使用人そのものにちょっと抵抗あるじゃんね?」
「そう! それ!」
やはりこはるんはわかってくれてる! そう、そもそもの話で、知らない人にお世話になるのはなれてなくて緊張するんだ!
「そんな偉い人間じゃないのでね……」
「まあそうねー。私も仕事柄、気を遣ってもらったりはするけれども、こう、なんというか。お嬢様? お客様? 扱いはちょっとむず痒いというかね」
「そうそうそう。……勇気が出たら、言ってみようと思います。男の人に出来ないかって」
そう言えばこはるんは頑張ってね、と声をかけてくれた。優しい。
こんな感じで話をした、夜。使用人のベッタさんに言おう言おうとしているうちに気づけばこの様である。今日は訓練所の場所とか、色々と案内をしてもらっていた。まぁ「そ、そうなんですね」「な、なるほど」の返ししか出来ず、目も合わせられず。未だベッタさんの顔をきちんと認識できてないおれなんてそんな程度なのである。
しかも眼鏡がないから遠目の物はさっぱりわからないし。
「……カナデ様?」
「は、はい! なんすか?」
そんな自己嫌悪に陥っていたら、いきなり呼ばれておれは肩を跳ねさせる。
「いえ、何やら考え込んでいる様子でしたので……」
「あ、や、あの」
何かわからない事がありましたか? と聞くベッタさんに、おれは申し訳なさを感じつつ、今しかないと意を決した。
「あの、ですね。申し訳、ないんすけど。その、お手伝いさん、を、他の人………と、いうか、男の人に、かっ、代えてもらえないか、と」
思って……という言葉は消え入りそうなくらい小さくなった。
「……差し支えなければ、理由をお聞きしてもよろしいでしょうか」
「エッ!? や、あの」
そう言われ、おれはキョロキョロと視線を泳がせる。刺さるような視線を感じつつ、おれは何とか言葉を絞り出そうとするもそれは叶わず。
いや無理だろ。代えてほしいと申し出ただけで快挙だ。貴女が苦手で……とか言えるわけがない。
えっと、その、とか意味のない言葉をぼろぼろ零すしかないおれに、ベッタさんは完全には納得していない様子だったが、諦めたのか「承知しました」と承諾してくれた。
大分心がすり減ったけど、何とかなったな。良かった良かった。