第1話 「崩れ始めた日常」
「拳で繋がる僕と姉」公開です!よろしくお願いします!
ちなみに、この小説は、5人ほどで合同で制作しています。
そのため、投稿が遅れる可能性が高いですがご了承ください。お願いしますm(__)m
――僕の姉は、僕の拳に宿ってしまったかもしれない。
「僕」こと浅田 真也は朝、時計の音で目を覚ますと、いつも通りの「日常」を開始する。朝食をとって、歯を磨き、軽く昨日の勉強の復習をする。そして、眠っている「姉」こと浅田結花を呼び覚ます。
この、「眠っている姉を呼び覚ます」という行為は、数年前、姉が起きれずに学校に行けなかった日以来、ほぼ毎日続いている。
姉の部屋に向かう。床のきしみ音が家中に響く……が、10年以上生活した現在は、さほど気にならない。姉の部屋に到着した。ドアノブに手を置く。
「姉さーん……」
反応はない。まぁいつも通りだが。
部屋の中は、漫画やらお菓子やらで散らかっている。
「汚っ。片付けろよ……」
ゴミを避けながら、奥のベッドへ足を運ぶ。昨日夜遅くまで起きていたせいか、荷が重い気がする。
姉のベッドのしきりを外す。姉の方に手を伸ばす。どこからか緊張感が伝わる。
――姉はいなかった。
「……?もう起きてるのか……?」
普段一人では必ず起きないため、少し戸惑う。
「珍しいな、姉さんが一人で起きるなんて」
僕は、姉の汚ならしい部屋を後にしたが、姉を探してみることにした。姉が他の部屋で、眠っていたりでもすれば、姉の機嫌を損ねてしまうだろう。実際僕は、そのことで、姉を怒らせてしまったことが何回かある。
幸い僕は今日学校が休みだった。鼻歌を歌いながら、軽い気持ちで、僕は姉の捜索を開始した。
「リビングには……いないか……」
一番可能性があったであろうリビングにも姉の姿はない。僕は、リビングを後にすると、その後も、浴室、書斎、トイレ、寝室、僕の部屋などを捜索したが、どこにも姉の姿はない。
「おっかしいなぁ……どこにいるんだろ……」
残る部屋は、両親の仕事部屋のみ。しかし、そこには、両親以外は誰も入ってはいけないきまりだ。姉が中にいるわけがない……と思いつつ、僕の手は、ドアノブに向かっていた。
ちなみに両親が家にいる時間はごくわずかだ。僕が起きた時には、既に二人はいない。何の仕事に就いているのかは教えてくれないが、家族4人が何の問題もなく生活できるというところを見ると、結構いい職に就いているのではないかと、勝手に想像している。
「……?開かない…」
仕事部屋は、鍵がかけられているのか、開けることができない。
「となると、姉さんはどこにいるんだ……?」
僕は、姉がどこにもいないということに気づいた僕は、姉が外出してないか確認するため、玄関に向かう。
「気まぐれな姉さんのことだ……どうせ、コンビニにでも行ってるんだろ」
言葉とは裏腹に僕の足は加速する。
床のきしみ音が、家中に響くが、僕の耳にはとどかない。
「マジか……」
きれいに並べられた靴の中には姉の新品の靴の姿があった。鍵もきちんと閉まっている。
「姉さんはどこにいるんだよ……」
その後も、僕は姉を探し続けるが、見つかる気配はない。いつか帰ってくるだろうと思い、そっとしておくことにしたが、姉の事が頭から離れない。何もしないでモヤモヤしながら、時間だけが過ぎていく。僕にはこの何もできない時間がとても苦痛だった。
「やることないし……もういっそのこと寝ちゃおっかな」
やることが何もなくなった僕は、寝室に向かうことにした。
姉の部屋の前を通り過ぎる。頭に姉の姿がよぎる。廊下の時計に目につく。気づけば時刻は、午後1時をまわっていた。
「いったいぜんたいなんなんだよ……僕は嫌な夢でも見ているのか……?」
そう心の中で言い放つと、僕は深い眠りについた――
時刻は午後5時をまわった。空はもう赤く染まっている。
「――や!しんや!」
これは……姉さんの声?
「んっ」
姉らしき人物の声で、僕は目を覚ました。
「姉さん……?」
辺りを見回したが、姉の姿はない。
「真也!ここだよ!」
「……え」
姉の声が……僕の左拳から聞こえてきた。
「姉さん!?」
僕は困惑して、自分の拳を見つめた。姉が言葉を発するたびに、僕の拳が、青白く光っているのが分かった。
「私、起きてからずっと真也の拳?の中に閉じ込められてるというか、宿ってるというか……まぁとにかく大変なの!なんか知ってる!?」
姉が焦った様子で、僕に問い掛ける。しかし、僕はまだ状況を呑み込めていない。何が何だか分からなくなって、僕は途方に暮れた。
「えと……つまり……」
「姉さんは、今、僕の拳の中にいるってこと?」
「多分……そういうことになるね……」
突如告げられた姉の言葉に僕は動揺を隠せない。顔は見えないが、姉の声も震えている。
「…………」
僕は、これからどう生きていけばいいか、姉はどうしてこのようになってしまったのか、何をすれば、普段通りの日常に戻ることができるのか。
僕の頭は不安でいっぱいになった。
「あのさ……1個いいかな?」
姉がおどおどしながら言う。
「ん……何?」
僕が聞き返す。さっきまでと比べ、僕は少し落ち着きを取り戻している。
「えと……こんなときに言うのもアレだけど」
「――お腹すいた」
僕は、気まぐれな姉のせいで、家を出ることになった。
そもそも姉はどのように栄養を摂取するのか、そのような概念はあるのか、何もかもが分からない。それでも僕は、姉の力になりたい一心で、コンビニに向かう。
「コンビニ行くの久しぶりだな……」
「悪いね……歩かせちゃって」
姉が申し訳なさそうに言う。しかし、僕は、自らの拳から、姉の声が聞こえてくることに、いまだに違和感を覚えていた。
「いやいや、普段いろいろとお世話になってるし、全然大丈夫だよ、姉さん」
僕は優しく返す。姉さんはいつも僕のことを気にかけてくれている。ここで僕が、優しく接さないわけにはいかない。
「……おっと」
雲が黒に染まる。地面に水滴がこぼれる。――雨が降ってきた。
「やっべ……傘持ってない」
僕は焦って、コンビニに向かって走り出す。幸い僕は、もうコンビニの近くまで来ていた。
「ギリギリセーフ!」
姉が陽気な声で言う。僕は姉は走らなくていいから楽でいいなぁ...と思った。
「ちょ、姉さん……一般客がいるからちょっと静かに」
「ん、分かった」
姉が小声で返すが、その声は、僕の耳にはとどかなかった。
「いらっしゃいませー」
僕は軽く頭を下げる。
「何買えばいいんだろ……菓子パンでいい?」
「うん」
僕はパンをいくつかと、自分用のおにぎりを手に取り、レジに並ぶ。ちなみに菓子パンは姉の大好物だ。朝はだいたい菓子パンを食べている。今となってはその菓子パンも、もう食べられなくなってしまったのかもしれないが。
「合計620円になりまーす」
僕は店員に小銭を渡して、商品を受け取る。姉を傷つけたくなかったので右手を使ったが、あまり意味はなさそうだ。
「ありがとうございました」
そう感謝を伝えると、僕は、拳になった姉とともにコンビニを出た。
「っと...そういえば雨降ってたんだ……」
「どうするー?傘でも買う?」
「そんなお金ないよ……。走って戻るか……。」
僕は雨に濡れながら、菓子パンとおにぎりを抱えて自宅へと戻った。
「…………」
自宅に戻ってから約10分、リビングで、僕と姉は頭を抱えていた。
「これどうやったら姉さん食べれるんだよ……」
姉が宿った拳で、パンを握ってみたり、かざしてみたりした。しかし、場は静まり返ったままだ。
「うーん……とりあえず僕が先に食べていい?」
姉が少し不満そうに、了承する。
「ありがと。いただきます」
おにぎりを口へと運ぶ。
「?」
なんか……いつもよりも食べてる気がしないというか、味がしないというか。
「真也……なんか私おにぎりの味するんだけど」
なるほど……どうやら僕が何かを食べると、姉にも分割されて送られるらしい。案外楽な方法だったので、僕は心の中でホッとする。
「じゃ、真也私のパン食べて~」
僕は姉に従い、パンに手を伸ばす。
「美味しー!」
姉が拳になったのにも関わらず陽気にパンを食べている。
その後もテレビを見たり、お風呂に入ったりして時間をつぶしたが、僕は姉のことが気がかりで集中できない。
「姉さん、勉強教えてよ」
「私が教えられるわけないでしょ」
そんな何気ない会話をしていたときだった。
「ガチャッ」
玄関のドアが開く音が聞こえた。咄嗟に僕は身構える。
――そう、両親が帰ってきたのだ。
はじめての小説執筆で、至らない点が多々あるかと思いますが、読んでくれると嬉しいです!
これからも、「拳で繋がる僕と姉」をよろしくお願いいたします!